10 人間の友達
「う~ん、やっぱり、まだサーシャちゃんには魔法は難しいかもね」
「そうなんだ……」
サーシャは俯いてしまった。
そもそも、龍族である雌の龍やヴィーヴルと、人間であるサーシャでは条件が違い過ぎている。
人間が魔法を発動させるためには魔法陣が必要となり、龍族の様に体内で変換して発動させられるようなものではない。
そしてサーシャは、魔法陣を自由に構築するのには幼過ぎた。
だからこそ、さっきの言葉にも『まだ』と付け加えた。
「じゃあ、ヴィーヴルちゃんといっしょにできないの?」
「そうね……そうだ、サーシャちゃんは文字を読めるのかしら?」
「すこしだけ、よめるよ」
「そう、じゃあ、ヴィーヴルと一緒に文字の勉強をしましょうか。
ヴィーヴルはまだ文字を読めないから、一緒に教えてあげられるわ」
「いっしょならやる~」
「何か文字の書いてあるものがあれば良いんだけど……サーシャちゃん、何かあるかな?」
「おうちのなかに、えほんがあるよ」
「じゃあ、そのえほんを持ってきてもらえるかな?」
「わかった~、ちょっとまっててね」
サーシャが絵本を取りに、家の中へと駆けて行った。
「ヴィーヴル、貴女が文字を必要とする機会は訪れないかも知れません。
ただ、知識も魔法と同じように立派な武器となり得ます。
頑張って覚えましょうね」
「はい、お母さん」
サーシャが、両手に抱えきれない程の絵本を持ってきた。
「随分と沢山あるのね」
「おとうさんがね、街へ行った時におみやげでかってきてくれるの」
「そうなのね。
じゃあ、どれから始めましょうか?」
「それじゃあね……これ」
「分かったわ。
じゃあ、サーシャちゃんとヴィーヴルも此方へ座りなさい。
一緒に読んでいきましょう」
ヴィーヴルとサーシャは、雌の龍の両脇に座り、絵本を見始めた。
「私が指を指しながら文字を読んでいくから、同じように言っていくのよ」
「「わかった~」」
雌の龍の後に続けて、ヴィーヴルとサーシャが絵本を読み上げていく。
そうして、ヴィーヴルも文字を覚え、単語を覚えていく。
初めてできた人間の友達と共に……
ヴィーヴルは、その日読んだ絵本を、再び家に帰った後も読むためにサーシャから借りた。
「魔法の練習も兼ねて、火魔法を灯しながら絵本を読んでごらんなさい。
火魔法で絵本を燃やしてしまわない様に、注意するのよ」
「はい、お母さん」
その晩、ヴィーヴルは不眠不休で絵本を読み続けた。
文字を覚えるという目的もあったが、絵本に描かれた物語にも心奪われていた。




