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GIFTED~世界からの贈り物~  作者: ABELL
第1章 嫉妬に狂った幸せ
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プロローグ

(感覚が薄れていく、何があったんだ?)


 異常は急に起った。ショウはまともに呼吸ができず気付いたら空気が抜けた風船のように床に倒れていた。

 彼は感覚が薄れていくことを【苦しみ】だとすぐに悟った。何故だろうか、ショウは心構えができていたとでもいうのだろうか。ショウは違和感の原因である【首】を触れた。すると、掌にぬるっとした感触があった。違和感を感じておそるおそる掌を確認した。掌には赤黒い液体が付着していて、掌を見て視界はぼやけてきて全身から熱が抜けていっているのを感じた。


「な、なんだよこれ?? ち、血? ぐぅ……かあぁぁぁあああ!?!?!?」


 ショウの首筋は前触れもなく鋭利な何かで一筋に切られており、非現実に動揺を隠すことができずかすれた声で叫んだ。


「(君が……悪いんだよ……)」


 黒い服を着た者が小さく呟いた。

ショウは自分から鉄っぽい臭いがしていてあまりにも悪臭なので口から血塊が出した。


「お゛ま゛え゛……は?!!」

 

 ショウの完全に使い物にならなくなっている喉を無理やり力ませ尋ねた。


「君には分かりようもないさ……」


 黒い服の者は悲しそうな声で応えた。

 望む回答ももらえず、次第に意識は朝日のように段々白く明るくなっていった。


「――翔!! 翔!!! はやく起きないと学校遅刻してしまうよ!!」

「ばぁちゃん……」

「あんた今日もうなされていたよ、大丈夫かい」

「おはよ…… ばあちゃん……」


 翔の祖母である千代が心配している翔がうなされていた原因は、あの現実のような苦痛を味わう夢。ここ2週間翔が毎日うなされる原因になっている悪夢だ。

 あの時に心構えを持っていたのは、同じとき同じタイミングで気付いたら床に倒れ伏し、感覚が薄れていき、結果、何も回答を得ず夢から覚めてしまうからである。


「喋れるってことは大丈夫、はよ支度せんと学校に遅刻してしまうよ!!」


そう言うと、千代は冷える体を温めるために被っている毛布を引き剝がした。


「うわっ!! さっぶ!!」


 あまりにも寒すぎるため翔は飛び起きた。テーブルに置いてあるペットボトルのお茶がキンキンに冷えるほど部屋の温度が低くなっていた。ここ最近は氷点下を超える日が続いているようだ。


「ほら! 歯磨きいってき!」


千代は寒さで縮こまっている翔の背中を叩き渇を入れた。


「――続いて、次のニュースです。昨晩、日本上空にて宇宙中央開発機構(SEDO)の人工衛星いざなみ5号が墜落していく様子が確認されたようです。宇宙中央開発機構の桜井茂氏は人口衛星の回収と被害状況の確認を急ぐそうです」


 翔はテーブルの上に置いてある千代が作ってくれた朝食を食べながらいつものニュース番組を眺めていた。


「(あの夢は一体なんだ? 夢にしてはあまりにも現実味があって気味が悪い)ごちそうさまでした、ばあちゃん今日もおいしかったよ」


そう呟くとテーブルの横に置いていたリュックサックを背負い、足早に玄関の方へと向かった。すると、奥の方から千代が呼び止めた。


「翔! 忘れ物だよ、今日は一日中手が凍るほど寒いからコートと手袋持ってき」


そう言うと千代が部屋から持ってきた父のおさがりの黒色のコートと白のお手製の手袋を翔に渡した。


「あいつのじゃん、まぁばあちゃん、ありがと」

「あいつっていうんじゃないよ、ほら、遅くならないようにしてけさいん、最近の世の中物騒だから」

「わかってるよ、ばあちゃんも業者の人来てもまともに取り合うなよ」

「余計なお世話だよ」


 翔は引き戸を閉め、渡されたコートを着て庭に置いてある自転車に乗り学校に向かった。


―――放課後―――


 翔は机に頬杖をつきながら校庭で練習をしている陸上部をぼーっと眺めていた。翔は元陸上部特待生だった。

 1年生の時に、大型トラックにぶつかりそうになっていた少女を庇い助けた。そのお陰で少女は無事であり、人が撥ねられるほど大きな事故にはならなっかた。だが、トラックのタイヤが翔の足を轢き、二ヵ月間ギブス生活を送った。

 事故から二ヵ月、翔は日常生活は不都合なく送れる状態ではあったが、陸上競技は行うことができなくなっていた。そんな不幸な事故から翔の学園生活に対する気持ちは落ちており、放課後になると練習をしている陸上部を二階の教室から眺めるのが日課になっていた。


「(あれから1年か、佐枝(さえぐさ)、あんなに陸上競技楽しそうにしてる。あの子を助けたのに俺はこのざまか……)なんか面白い事でも起こらないかな」


 と、昔のことを思い出していた翔の目の前、口をにやけさせ手でジェスチャーしながら1つのことを熱心に喋っているニット帽を被った青年が翔の肩をポンポンと叩いた。


「なぁ~翔聞いてるか?」

「あ、あぁ、聞いていたぞ、お前が同級生の野々原に告るって話だろ? もう何回も聞いて飽きたよ、この根性無し」


 自分の恋話で浮かれているのは翔の中学生の頃からの親友の北条綾(きたじょう あや)だ。綾は顔は悪くなく、運動もサッカー部の部長を務めるくらい良い。だが、暇があればいつも翔に自分の恋話をしだす。翔は綾の話をいつも「はいはい」と言い会話をいつも聞き流している。


「ひっでぇな翔は、お前絶対聞いてなかっただろ!」


綾に言われ翔は飽きれた顔で掌をパーにし指を一本一本折り曲げ始めた。


「デートも行って、手も繋いだ。毎日電話もして、お家で一緒にテスト勉強もした。告らない理由もない。お前さ告るって言ってからもう一週間も経ったんだぞ、あとは綾が喉から出かかっている『好き』を野々原に伝えればいいだろ」


翔は頬杖を外し机に顔をうずめた。野々原は翔が高1の頃、綾とクラスのどの子が一番可愛いか話していた際、翔が名前を出した子である。綾はその会話を2年生になっても覚えていた。


「いやさ~~お前、高一の時に野々原を可愛いって言っていただろ? 俺とお前の仲だし、お前が気になっていたら気まずいじゃん、だから慎重に行きたいんだよな」

「(俺はいいから気にしないで告白しろよ根性無し)」


翔が小声で煽ると綾が脇に手をまわし指を上下に動かしくすぐりだした。


「や、やめろよ!! おれこちょこちょ弱いんだって!!」

「この相談は俺とお前の今後の関係を考えてのことなんだって! このあほ!」

「いつまで引きずんだよ! 山江と付き合う前だって同じだったろ! その時は『俺は彼女のことを幸せにできるかわからない』ってすまし顔で言って悩んでいただろ! 根性無し! それにな可愛いって言っただけで、好きとも気になるとも言ってないからな!!」


翔は綾の手を無理矢理ほどいて崩れた学ランを直した。

「それにな、俺はそういうのに興味ない」

「ま、まじかよ……翔、お前、好きな人とかいないの?」

「は?別にいないって」


すると、綾は翔のことを馬鹿にするかのようににたぁっと笑顔になりながら言った。


「佑華はどうなんだよ! 幼馴染なんだから、恋心の一つや二つくらい湧かないのかよ!」

「湧かねぇよ! どんだけ長い付き合いか分かるだろ」


 佐倉佑華(さくら ゆうか)は翔が幼稚園の頃から仲の良い幼馴染。成績優秀。運動神経抜群。文武両道でしかも容姿端麗な子である。でも翔は幼い頃からの佑華を見ていたため、友人としては凄く良好な関係だが恋愛となると兄妹間が出て興味が湧かない。


「それにな、あんなゴリラは俺では付き合うこと、違うな、飼いならすことすら難しいよ!」


幼馴染なことを理由に言いたい放題していると、綾の顔が真っ青になっていることに気づいた。


「ん? どうした綾、そんな化け物を見たかのように……」

「誰がゴリラですって!」

(パコンッ)


後ろから声が聞こえた瞬間、翔の後頭部に強い衝撃があった。


「いってぇええ!」

「効いたかね、ユウカバスターの威力は!」


佑華が学校指定のスリッパで力いっぱいハエを潰す勢いで叩いた衝撃だった。

 綾は両手を振り慌てたそぶりを見せた。


「ゆうか、お、俺は何も言ってないからな!」

「あやくんそなたも同罪?」


佑香は腕を天井に届くほど高く上げ、さっきよりも勢い良く綾の頭へユウカバスターを振り下ろした。


「――二人がなんの話していたか分からないけど、誹謗中傷で訴えられたくなければ肉まん奢って」


 翔と綾は佑華に命令されて椅子の上で正座させられじーんと響く頭を抑えていた。

 三人はいつも翔と綾は馬鹿をやって、その後に佑華に怒られるのが日課だ。三人の関係はいいもので、中学の頃からこのメンバーで一緒にいることが多い。


「(やっぱゴリラだろ)」 「(おんなこえぇ)」

「なんか言った? もう一回食らいたい?」


佑華は(パシパシ)と手で打っていたスリッパを高く振り上げた。


「分かった!! 分かったからそれを履きなおして下さい!!」

「そ、そうですよ! 今日はこの翔くんがすべて奢りますので!!」

「よろしい、ならばナイチキとシェイクも付けてね!」


佑華は仁王立ちしながら満足気に腕を組み笑顔になった。


「はい! 彼にまかせてください!!」 「お、おまえな!!」

「じゃあ、早く帰る準備してナインナインに行くよ!」


 そう佑華が言うと翔と綾は颯爽と机に散らかっている筆箱や携帯を鞄に入れ、入り口で待っている佑華の方へ向かった。


―――コンビニ―――


 いつも帰り道、三人が寄るコンビニの駐輪所に荷物を置き、椅子のようなパイプに翔と佑華が座り、翔の右側の地べたに綾が胡座(あぐら)をかき座っていた。

 佑華はあれよあれよと翔に買わせた商品を口に頬張りながら綾に驚いた表情で質問をした。


「あや、まだ野々原ちゃんに告白してないの!?」


綾が告白していない事実に佑華はやれやれというそぶりをしながらため息をついた。


「そうなんだよ、こいつまたひよってるんだよ!」


そう翔が親指を綾の方へクイックイッと指すと、綾が少し涙目になりながら二人の方へ体を向け睨んだ。


「お前らには俺の慎重さと繊細さがわからないんだよ!」

「そんなもんわかってたまるもんか!」


翔と綾が言い争っていると、佑華が思い出したかのようにナイチキを口いっぱいに詰め込み携帯を操作しだした。


「なんだよ佑華、オフグラムにでも投稿するのか?」


綾が気にしていると、翔が生色顔で佑華に振り向いた。


「『あや、大泣きしてるnow』って投稿してやれ!」

「違うよ、これ見て」


綾はしたり顔で翔たちに携帯画面を見せた。画面には佑華と野々原とのLOIN会話であり、学校の女性だけで遊園地に行った時の会話内容が映っていた。


「んだよ! 遊園地に行った時の写真を見せるとか、ただの自慢かよ! 天に召されてろ!」

「違うよ! ここ」


佑華は画面のキーホルダーのところを拡大させた。


「綾がこのキャラが好きって言っていたから買ったんだって、本人は恥ずかしくて言わないでほしいって言っていたけど、あまりにも付き合うのが遅い二人を見ていてモヤモヤしてた、これ見てもまだ告白しないの?」


佑華に野々原について言われた綾は真剣そうな顔になり、佑華の両肩を掴んだ。佑華は少し顔を赤らめた。


「な、なに、そんな真剣そうな顔になって」


佑華は綾のとっさの行動におどおどし始めた。


「このあと時間ある?」

「あるけど、何?」


綾は顔を更に近づけた。


「作戦を一緒に考えてほしい」

「野々原ちゃんに告白する?」

「それ以外何があるんだよ」

「確かにないけど、この手離してくれる?」

「あ、ああ! ごめん!」


綾は慌てて両肩に置いていた手を退けた。


「イチャイチャしてるところ悪いけど、俺この後予定あるからパスねぇ」


翔はキャンディーを口に咥えて二人に手を振った。


「お前! ま、まさか女!?」


綾は慌てた顔で翔に近づいた。


「いるわけないだろ! 失礼な」

「んじゃなんだよ」

「いいだろ、別に! お前には関係ない」


翔は綾を押しのけ地面に置いてあった荷物を手に取り振り返った。


「あとは佑華、任せた!」

「う、うん」


翔は二人に手を振りその場を後にした。

 翔には本当はこの後の予定なんてない、ただ【怠い】、そう思いその場を離れ帰路に着いたのだ。

 彼の両親はまだ生まれて間もない翔を母方の実家に預け、『しばらく帰れないかもしれない』と言い残してこれっきり実家には帰ってこなかったらしい。つまり、翔は実質的な捨て子になってしまったのだ。だから翔は恋話や惚気話に対して『そんなの無駄な時間だろ』としか思えなくなっいるのである。決して友人の二人が嫌いとか、めんどくさい存在だとかは思っていない。そういう男女の関わることに対して嫌悪感があるだけなのだ。


―――いつもの帰り道―――


 近隣の農家のおじさんは車庫で冬に向け干物の準備をし、近所の奥様方は玄関前で噂話をしていた。何ら変わらない帰り道。いつもの光景だ。

 だが、翔はいつもとは違う臭いがするのに気が付いた。公園で遊んだ後の砂っぽい服のにおいがした。

 翔はその臭いにひかれ、その原因と思わしき場所へと向かった。


「(今日はなんか臭いな、いつもは田んぼの泥の臭いしかしないんだけどな)」


 右へまた右へといつもとは違う道に入った。臭いが強くなっている方向へ歩いていった。辿り着いた場所は草木が好き放題生え散らかした公園だった。錆びれた遊具が並んでいる。それが人が一切来ていないことを証明だ。。


「青葉公園……懐かしいな、小学生の時以来か」


 そこは翔が幼い頃によく近隣の子供たちとよく遊んでいた公園がだった。


「たしかここはもう誰も遊びに来てないよな」


 青葉公園は、都市開発により人口が集中している場所に比べることができないくらい大きい公園が建てられた影響で、青葉公園には人が遊びに来ることがなくなり次第には手入れすらもされなくなった。


「ん? おっ懐かしいな……」


 翔が気を取られたのは、幼い頃、佑華と木の枝などで作った秘密基地(仮)である。今では時間がたったせいで骨組みは荒れ果て原型がなく、砂埃も被っていた。


「こんなものが秘密基地か、あの頃は何も考えていなくて楽しかったのにな」


 思い出に浸っていると、久しぶりに公園に来た翔を出迎えるかのようにそよ風が吹き渡った。


「(ゴホッゴホッ) なんか煙っぽいな」


翔は口元を手で塞ぎ辺りを見回した。


「それにしてもさっきから砂臭いな、誰か砂場ではしゃいで遊んでいるのか」


 翔が公園に到着してからすでに砂埃が舞っており、臭いのもとはおそらくこの公園で間違いないらしい。一周見回した後、入り口と秘密基地の真逆にある砂場の方へ足を運んだ。


「どうしたんだこの状況は……」


 砂場の近くへ着くと明らかに大きいへこみができており、付近の地面には(ひび)が入り、砂場の枠は破損してあちらこちらへ転がっていた。その光景に翔は思わず口を塞いでいた手をぶらんと下ろした。


「真ん中にあるの、あれ、でっけぇ鉄の塊か」


 砂場の中心には『何かの機械』というには単純過ぎて、『生物』というにはあまりにも複雑な構造をしている鉄のような塊があった。公園で砂埃をたてたのはおそらくこの塊だ。


「何か分からないけど、ここは天下の゛平和ボケ大国ニッポン゛だ、危ないものではないだろ」


 翔は塊の近くへ一歩また一歩と足を進めた。その塊の形状は四角形で血管のような管が何方向かへと張り巡らし、管の中では一定の方向へ光が走っていてまた、(ジジジ)と音を鳴らしていた。塊の上部には蓋が取り付けていて、この不明物体に対して非常に興味を引かれた翔は蓋を外して中を覗いてみた。蓋の中に精密な機械のような外見の輪っかが入っていた。


「なんだ、この塊きったねぇし、なにこの……指輪?」


 翔は好奇心からか指輪のようなそれを薬指へ恐る恐るはめた。


 はめた瞬間、輪っかから真白な光がはなたれ視界が奪うばわれ、立てなくなるほどの頭痛が翔に襲い掛かった。


「うぐっ!!」


 翔は一瞬の出来事でぐっと目を閉じて(うずくま)った。しばらくすると少し頭痛が治まっていき、光のせいで奪われた視界が戻っていった。翔はぼんやりとしている意識の中、右耳の方から男性の「あぶねぇよ!」と叫ぶ声とダンッダンッと鳴り地響きに気づいた。

 まだぼんやりとしている視界を無理やり開き音の原因の方へ振り向いた。

 すると、大きい瞳をギョロッとさせ、触れると切れてしまいそうなほど鋭い羽根を持つ大きな鳥が翔を睨みつけていた。

初投稿です。暖かい目でのご拝読ありがとうございます。GIFTED、どうでしたか?

ぜひ、コメントよろしくお願いします!!

本作品はゆっくりペースで投稿していきたいと思っています。

今後ともよろしくお願いいたします。

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