表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/49

自称魔王様はひとり地獄で微笑む(2)

「気分はどなぃ?」


 ピンクの女が色目を使うようしていうと、キョー助は「あ、ありがとう」と少し腰を引かせて答えた。ピンクの女はキョー助をおろし、その頬に手を回す。女の手は彼女の唇と同じぐらい熱く、キョー助は更に腰を引かせた。


 ピンクの女はキョー助の顔をまじまじとみて「やっぱり、おかしいなぁ……」とぼやいた。長い指をキョー助の頬から顎にしなやかに伝わせて、ついとキョー助の顔を持ち上げる。


「あんたぁ、ほんまにに生きとるんか?」


「いままでに2回死んでるけど……」


「2回ぃ?嘘はあかんぇ」


 ピンクの女が赤い瞳が鋭く光りキョー助は慌てた。


「嘘じゃない。車に潰されて一回、首を切り落とされてもう一回。俺は2回死んでいるんだ」


 こんなこと現実世界でも異世界でも信じてもらえないだろう。だがピンクの女はキョー助の予想の埒外ことを口にした。


「いいや、あんたはもっと死んでいるはずや。それも10回や20回やぁない」


「は……?」


 キョー助の目が焦点を結ぶのを止め、心が宙に放り出されたようになった。ピンクの女は「ふぅん」と興味深そうにキョー助の呆け面を観察している。


「まぁええわ。それよりもさっきの約束は覚えとる?」


 ピンクの女に言われて、キョー助の意識が焦点を結び直した。


「ああ、好きにしてくれ」


 キョー助の返事にピンクの女が嬉しそうに頷く。泉が「いいんですか?」とキョー助のズボンを引っ張った。


「死ぬところを助けてくれたんだ。なんだってするさ」


「春日さんはどうするんですか?」


「それもなんとかする」


「一回死んで、また生き返ればあの女の言うことなんて……」


 突然、キョー助は泉の首を鷲づかみにし、腕に血管を浮かび上がらせて締め上げた。「な、なに……を……」と声を潰す泉に、キョー助は泉の首の骨をメキメキと鳴らし低い声で言った。


「お前も一回死んでみればわかるさ」


 キョー助は泉を放してやる。泉がゲホゲホと咳込み首をさするのを見て、自分の首に手を当てた。春日につけられた傷はきれいに消えている。キョー助から知らず小さな舌打ち漏れた。


「俺はキョー助。あんたの名前は?」


 キョー助が尋ねると、ピンクの女はニッと笑う。


「うちは魔王様や。あんたにはそれで十分や」


「はい?」


 思わずキョー助はピンクの女をつま先から頭の先まで何度も見返した。女はフリルでフリフリのピンクのワンピースを着て、赤いパンプスを履き、ハートのポーチを下げ、金髪縦ロールに赤い瞳をした中学生ぐらいの少女だ。それが魔王を名乗ったのだから仕方がない。


 だが魔王は無礼な視線に赤い瞳を細めると、ポーチから爆弾を取り出し、キョー助の顔を掴んで無理やり喉の奥に押し込み飲み込ませてしまった。


「うちはあんたの1万倍は強い。言葉遣いとか細かいことは気にせぇへんけども、まぁ、せいぜい忘れへんことやねぇ」


 キョー助はゲホゲホとむせながら地面から魔王を見上げる。


「これ、どうしたら取ってくれるんだ?」


「赤城はんにちょっかい出すのを手伝ってくれたら。あんたも赤城はんともめとったやろ?赤城はんの敵はうちの味方やぁ」


「じゃあ、……なにをしたら爆発するんだ?」


 自分の腹を指すキョー助に、魔王は暗がりの毒花のような赤い唇に指をあてた。


「うち以外の女にうつつを抜かしたとき、かなぁ?」


 そう言って自称魔王様はころころと笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ