十二支の真実 〜ネズミの冒険〜
勢いで書いた初投稿なのでたぶん読みにくいです。
大晦日の朝、森の動物達を集めて神様が言った。
「1月1日の午前0時までにこの神社に集まった動物達の中から、最初に来た動物から12番目の動物までを十二支とする!」
俺は神様に聞いた。
「ちょっと待ってください、それならここにいる者達がここでその時間まで待っていれば全員1着になってしまいます。12番目と言ってもすでに20名はいますよ」
「わかっておる。真面目なお前達はそんな不正染みた真似は喜ばんだろうしな。お前達には伝達役を頼みたい」
「それではスタートがバラバラになってしまいますよ?」
「足の速さも違うからな。それを踏まえて誰に伝達するかも決めておる」
「なるほど、わかりました」
「というわけで鼠、早速お主には虎と猫、それから龍に伝えてきてもらおう」
「ゑ!?」
変な声が出た。
龍なんて本当にいるのか?
というか本当にいるとして喰われないか心配だ。
「龍は魚しか食わんから川とか湖とかにおる筈だ。竜巻に巻き込まれやすい体質だからすぐ見つかるだろ」
喰われる心配はなさそうだが、竜巻に巻き込まれてる相手にどうやって伝えろと?
「では行くがよい。次は狐、お主は狼と狸、それから妖精に……」
良かった、いや良くはないが無茶振りは俺だけじゃないようだ。一安心、とはいかないがとっとと行ったほうがいいだろう。
まずは虎だな。
俺は虎の穴に向かった。
呼び鈴を押すと独特の台詞が聞こえてきた。
『お前は虎だ。虎になるのだ』
いや、あんた最初から虎だろ。
そうこうしてるうちに虎が出てきた。
「やあ、君か。久し振りだね。どうしたんだい?」
「神様から伝言があるんだ。何でも十二支っていうものを決めるらしくてね」
「へえ。そんなことより君のこと食べていいかい?」
「いいわけないだろ!?死ぬよ!」
「いや、性的な意味で」
「やだよ!てゆーか聞けよ!」
こいつはこういう奴だ。
「で、その十二支って何だい?」
「わからないけど、いきなり集められたと思ったら『1月1日の午前0時までに森の神社に集まった動物達の中から、順番に12番目の動物までを十二支とする!』って言い出したんだ。今日の今日なんてなかなか酷い話だと思うよ。12匹集まらなかったらどうするつもりなんだろうね。たぶん伝達役はみんな無茶振りされてるっぽいし」
「どんな?」
「急がなきゃならないのに君も質問ばっかりだね。例えば俺は龍に伝えるように言われてるんだ。狐は妖精だって」
「なんだ、龍が住んでる所なら知ってるよ。僕は彼とは『強敵』と書いて『とも』と読むような関係なんだ」
「な……なんだってー!!」
ラッキーだ。実在するとも思ってなかったからほとんど諦めてたのに。
「彼は東のほうにある『龍の池』に住んでるんだ。お『1月1日の午前0時までに森の神社に集まった動物達の中から、順番に12番目の動物までを十二支とする!』土産に岩魚とか持って行ったら喜ぶと思うよ」
「案外そのままの名前の所に住んでたんだな。てか俺が魚なんか運べると思うか?」
「言ってみただけだよ。じゃあ僕は先に行ってるね」
「俺も猫と龍に伝えたら急いで向かうよ。ありがとう」
そして俺は猫屋敷に向かった。
猫屋敷の呼び鈴を押すと、聞き慣れた音楽が流れた。
国によって違うタイトルだった筈だ。お米の国で『箸』と呼ばれている曲だ。日本では『猫ふんj
「やあ、鼠君。今日は何して遊ぶ?」
思考が途切れたが大した話じゃないからまあいい。
「今日は神様からの伝言があって来たんだ。急な話でちょっと遊ぶ暇は無いと思う」
「神様から?ああ、長い間使ってる物に宿るっていうあの?」
「付喪神?どうだろう。あんな妖怪崩れじゃない気がするけど、ともかく『1月1日の午前0時に森の神社に集まった動物達の中から、早い者順に12番目の動物までを十二支とする』って話だから君も急いだほうがいい。1月1日の午前0時回ってからじゃ話にならないみたいだからね。虎はもう向かってる」
「わかった。1月1日の午前0時だね。鼠君もこれから向かうんでしょ?一緒に行こうよ」
「悪いけど、俺はこれから龍にも伝えなきゃいけないんだ。たまたま虎が龍と知り合いだったから龍の場所はわかるし、俺しか通れないような近道もあるからたぶん間に合うとは思うけど、君はそこまで行ってたら間に合わない」
本当はそんな近道なんて無い。
あっても知らない。
「龍!?本当にいるんだ。そういうことならしょうがないか。じゃあ先に行ってるね」
そう言って俺達は分かれたが、この時猫が勘違いしている事に俺は気付かなかった。
そして俺は龍の池に向かった。
龍の池の近くまて来た時に竜巻が来ているのが見えた。
ヤバい!竜巻に巻き込まれてからじゃ話も出来ないぞ!
「龍さーん!逃げてー!」
「ん?おわっ!」
龍は近くの岩場に捕まって、何とか竜巻をやり過ごしたようだ。
「誰だか知らないが助かった。礼を言……?誰もいない?」
「こっちこっち!」
龍が近付いてきた。
「声はたしかこっちから聞こえてきたと思うんだが……」
「下、下!」
「おお!改めて助かった。礼を言う。虎以外に会ったのは何年振りじゃろう。大した持て成しも出来んがゆっくりしていくといい」
「いや、そういうわけにはいかないんだ。龍さんに神様からの言伝があってね。『1月1日の午前0時に神社に森の神社に集まった動物達の中から、先着12匹を十二支にする』だって。十二支が何かはわからないけど時間までに集まらなかったらたぶん12位に入ってもダメみたいだから急いだ方がいいよ」
「なるほどのう。神がそんなことを。じゃあ早速行くとするか。お主も行くんじゃろ?儂に乗って行くか?」
「いいの?じゃあお言葉に甘えて」
「行き先は同じじゃからの。で、お主は誰じゃ?」
今更……いや、そう言えば名乗ってなかったな。
「俺は鼠。道中よろしく」
神社まで半ばまで差し掛かった頃、悲劇は起きた。
気付いた時にはもう逃げられない距離まで近付いていた。
「すまんのう、儂の体質のせいで。いつもは3日に1回程度じゃから今日はもう大丈夫じゃろうと思うとったんじゃが」
「仕方ないさ。生きてたらまた神社で会おうぜ」
そして俺達は竜巻に巻き上げられた。
気付くと俺は雲の上にいた。
「ダメだったか……」
やっぱり竜巻に巻き込まれて生きてるわけないよな。
「生きとるよ」
「え?てゆーか誰?」
声に振り返ると白髪の老人が……浮いてる!?
「ワシは仙人じゃ。一人じゃがの。ほっほっほ」
ギャグはつまらなかったが、どうやら神様より格上の存在らしい。
「十二支に選ばれる為に森の神社まで行くんじゃろ?日が出てるうちは雲の上を走れるようにしてやったから急げ」
「日が沈んだら落ちて死んじゃうじゃん!」
「それまでに神社に着けば神が何とかするじゃろ。ほれ、とっとと行くがよい」
俺は走った。命がかかってるからな。
森の神社までの道は結構入り組んでいるので、雲の上を走って大きくショートカット出来たのは幸か不幸か。
逆に言えば神社の上に雲が無ければ詰みなんだがな。
そして雲が途切れた。
しかし神社はもう目と鼻の先だ。
跳べばワンチャンあるか?
よし、助走を付けて……え?
「ええぇぇ〜〜〜………」
突然足場が無くなった。
どうやら日が沈んだらしい。
「ぐえ!」
これは死んだな。
俺の意識は薄れていった。
目が覚めると俺は神社にいた。
「目が覚めたか。早速だがお主が1位だ。おめでとう」
「え?何がどうなって……?え?神様?え?」
俺、雲から落ちて死んだよね?
「だからお主が最初に神社に着いたんだ。死にかけとったがのう」
「え?俺生きてる?やったー!助かった!!」
生きてるって素晴らしい!
どうやら俺は、牛の頭の上に落ちて弾き飛ばされたらしい。6時間ほど気を失っていたようだ。
辺りを見回すと、十数匹の動物達がいた。
「まだ0時にはなっておらんが、既に12匹は越えておる。これで決まりだろうな。獅子、鹿、山羊、妖精、お前達は恐らく十二支には入れんが、気を落とすでないぞ」
え?妖精いるの!?
「他の皆さんはともかく、私はこのイベント自体知らないで来ちゃったから大丈夫ですよ」
……え?それじゃ狐達もしかしてまだ妖精探してるんじゃ?
まあいいや、えっと、他の面子は……虎はいるな、龍さんも無事だったんだ、良かった。猫は……え?猫は!?
「0時を回ったようだな。では、十二支は鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪とする。それぞれ子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥と名を改めるがよい」
「待ってください!猫は?猫は!?」
「来ておらんようだな」
「どうして……」
そんな話をしていると猫がやってきた。
「明けましておめでとうございます……え?何でもうみんないるの?0時から早い者順だよね?」
「馬鹿!0時からじゃなくて0時までだよ!0時には着いてないと話にならないって言っただろ!?」
「0時回ってからじゃないと話にならいんじゃ…?0時回る前でいいなら時間指定してる意味ないからてっきり…」
「神様、どうにかなりませんか?俺の伝達ミスが原因です。だから俺の代わりに猫を……」
「それは認められねえな」
横から牛が口を挟んだ。
「どうして!?」
「お前がオレの頭から前に飛んでいかなければオレはお前にも負けなかったと思うが、それについては時の運ってやつだ。オレも認めよう。だがオレだって亀達に託されたんだ。時間になっても来てなかった奴より順位が下なんてどう説明したらいい?そもそも伝達ミスどころか伝達すらされてない奴もいるんだ。そいつらにどう説明するつもりだ?」
「それは……」
言い返せなかった。
「わかった。それじゃせめて俺が猫を騙したことにしてくれ。猫は悪くない。俺のせいなんだ」
そして俺が猫を騙したせいで猫が十二支に入れなかったという噂は広まった。
ゴール直前に牛の頭から飛び降りたという噂とともに。
どうやら噂好きの妖精が牛の台詞を曲解して広めたらしい……。
「ねえ、寅。どうしたら子と仲直り出来るかな?」
「さあね。僕は彼と会ったらとりあえず食べていいか聞いてるくらいだから仲が良いとも思われてないだろうし」
「それにゃ!」
『猫ふんじゃった』と呼ばれるあの曲は黒鍵の練習曲として世界中にあるようです。
アメリカ(米国)やイギリス(ユニオンジャックって「米」って漢字に似てるよね)では指の動きから『Chopsticks』(お箸)というタイトルだそうです。