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御利益の効果

 卓也は生まれて初めてのことに動揺した。女の子から御守りを貰ったのだ。嬉しいは嬉しいがチョコとかラブレターとかでもなく御守りとはいかがなものか。


「いったいなんのご利益が?」


 卓也は本当は何で渡したのか聞きたかったが、理由を聞くのは失礼と思い止めた。

 その変わりにどういう意図で渡してきたのか質問で探ってみる。。


「これはね、私お手製の御守り。たぶん貰っておいて損はないと思うよ」


 少女は答える気がないかのように、曖昧な答えしか返さなかった。卓也は心の中でため息をつくと「どうもありがとう」と言ってから受け取った。

 それを見て少女は満足げにうなずく。そしたらなんと、少女の体の色が段々と透明に近づいていく。


「えっ!?」


 いくら少女が超能力者と分かっているとはいえ、流石に突然消えるのは予想していなかったのか卓也から素っ頓狂な声が出た。さらに思わず半歩後ずさりする。

 その卓也の仕草すらおかしいというように少女の顔に笑みが浮かぶ。しかし、卓也にはそれどころじゃなく少女の顔までは意識できなかった。

 それどころか、卓也の意識が薄れかかってきた。徹夜でゲームをした時を遥かに超える眠気に思わず卓也は膝をつく。そのまま崩れるように卓也は意識を手放した。


 卓也は目を覚ますと暗い空間にいた。周りには季節を問わない様々な花がある。

 少し前に少女が超能力を使った時と似たような空間だ。違うところはこの空間には太陽も神社も道も人の姿も何もかもない所だ。あるのは植物と卓也の体のみだ。


「なんなんだここ」


 卓也が疑問を浮かべると、暗い空間にある花が動き出した。足がついている訳でもなく花たちが宙に舞う。

 卓也は目の前の花が浮かぶたびに分裂しているように見えた。

 そして卓也の目の前にでかい木が現れた。大人十人で両手を広げても囲えそうにないほどの大木。

 卓也にはこの木に覚えがある。あの木は御守りをくれた少女を初めて見つけた場所にあった木だ。


「この木が、何でここに」

 

 まさか、あの木も少女が超能力で出したものなのだろうか。

(それは違うぞ)

 

 バッっと卓也は後ろに飛びのいた。直接頭の中に声が響いたからだ。


「誰だ!」

(誰だもなにも、お前も気が付いているんじゃないのかい?)

「やっぱり、木!」


 きって叫びづらいと思いつつも卓也は叫んだ。


(御神木の方が呼びやすいのではないか?)

「それじゃあ御神木。いったい何の用だよ。もしかして神様みたいな存在と会話ができることがご利益か?」


 すると考え込むように――あくまで卓也の想像だが――少し間を置いてから自称御神木は話し始めた。


(御利益の内容はそうだな、神や霊やらが見えるようになる。さらに現実が見えるようになるだろう)

「それ、嫌なものも見えるようになるんじゃないか?」

(それはないだろう。基本神は目撃するだけで何か幸運が舞い込むはずだ。それに霊ならもう見えているじゃないか)


 ドキッと心臓が脈打つのを卓也は感じた。他人が見え無いのに自分が見える者。そして自称御神木の霊と言う言葉。

「あの、女の子か?」

(全てを話してあげよう。ある意味、この話を聞くことができるのが一番のご利益かもしれないな。そこの花に腰かけると良い)


 卓也が後ろを振り向くと後ろに切り株があった。どこをどう見ても花じゃないじゃん、と卓也は思ったが、それに対して木の反応はなかった。あくまで声に出さないと木には伝わらないのだろうか。

 卓也は疑問に思いながらも切り株に座った。

このお話は短編です。三月以内に完結する予定です。

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