第9話 事件解決
written:ひな月雨音
「や、やめろ! 来るなっ! 来るなぁぁぁ!」
男はひな月の能力【永遠迷宮】から解放されると、その場に膝から崩れ落ちてしまった。
ザッザッザッ──
近づく足音──
「全員動くな!」
狭い路地裏に数人の警察官が駆け込んできた。
「電話をしたのは私です。そこに座っている男が、このバッグを盗んで、ここに逃げ込んだんです」
よつ葉ちゃんが気を利かせて、先に電話してくれていたらしい。
「ん? こ、こいつ! 先輩! こいつ指名手配中の……ほら、この男ですよ!」
後輩警察官の一人が、ポケットの中から四つ折りになった紙を開いて、先輩に見せている。
「お二人とも、お怪我はありませんか?」
近くにいた三人目の女性警察官が、声を掛けてきた。
「……そ、その女。銃を……持ってるぞ! 銃だぞっ! はははははっ!」
男の一言に、一応確認をと、女性警察官がひな月の身体をポンポンと叩きながら調べ始めた。
しかしというか、案の定というか、無言で首を横に振る女性警察官──
「……そんな! よく調べろ! そいつが俺を撃って……」
「銃声の通報は無いし、お前はどこを撃たれたって?」
男は自分の身体をペタペタと触ると、どこからも出血していないことを確認した。
「何だ!? どうなってやがる! おい貴様っ! 俺にいったい何をしやがった!」
声を荒げる男を見ながら、呆れた表情をした警察官が一言……。
「どうやら薬物の検査も必要なようだな。ほら行くぞ。立て!」
「あとは私達にお任せください。後程、お話を伺わせて頂きに参りますので、ご協力よろしくお願いします」
最後の最後まで大声で喚き散らしながら、男はパトカーに乗せられて行った。
「……はぁ。で、よつ葉ちゃん? さっきのはいったい何かなぁ?」