8/17
第8話 彷徨う者
written:菜須よつ葉
ひな月さんに攻撃された男は、真っ暗な路地裏の出口を探して、さ迷い歩き続ける。
歩いても歩いても見える景色に変化はない。
「チッ、どうなってやがるんだ」
どこを歩いて探しまくっても出口はなく袋小路。どれだけ歩き回ったのか男の体力も落ち始める。
「ここから出してくれ!!」
「こらぁ! 出しやがれ!」
まるで誰かに攻撃しそうなくらいの勢いで暴言を吐きながら、見えない何かに向かい殴りかかる男。
どこに向かって歩き続けても、どこに向かって叫んでいるのか、だんだん自分でもわからなくなってきていた。
「なぁ、誰かいねーのか?」
「居るんだろう?」
威勢よく振る舞っていた男も救いを求めるよう気弱な言動が現れ始めた。真っ暗な裏路地には光が差すこともなく、薄暗い不気味な雰囲気に包まれた孤独な世界。
「なぁ、ここで何してるんだ?」
「お前も迷ったのか?」
「俺と一緒だな」
誰もいない一点を見つめてまるで誰かに話しかけているようだった。あれほど威勢のよかった筈の男の姿はもうどこにもなかった。