第7話 ひな月の貫くモノ
written:ひな月雨音
パチンっ!──
「二律背反銃!」
ひな月が指を鳴らすと、まるでイリュージョンでも見ているかのように、左手に見たことのない形の銃が現れた。
「てっ……てめぇ! 汚ねぇぞっ!」
自分のしたことを棚に上げ、弱い立場になったと思った途端、モラルや常識を盾に身を護ろうとする男。
「……この銃に込めるのは、普通の弾丸ではないのよ」
ひな月はそう言うと、右手を開き一言──
「……執行弾!」
小さな光が輝きを放ちながら、右手の中に収縮していく。
「本日の弾丸の名は……永遠迷宮」
光は音無く弾け、右の手のひらにポトリと落ちた。
「……ひ、ひな月さん! それは……」
「大丈夫……死にはしないから」
ひな月は目の色を変え、二律背反銃と称した謎の銃を、目の前で息を切らす男に向ける──
「何か言い残したことはある?」
「……く」
男が口を開くのと同時にひな月が……。
「くそったれ! でしょ? 私は予言屋 ひな月雨音。私の先を行く者は……誰もいない」
パンっ!──
実際にはしていない銃声が、よつ葉の耳には聞こえた気がした。
「………………ひな月さんが……撃った」