第4話 看護学生よつ葉の本領発揮
written:菜須よつ葉
ひな月さんに、どこまで知られているんだろう?
そんなことを思いながら目の前の女性に視線を移すと転んだ時にできたであろう傷が見えた。
「大丈夫ですか?」
「はい……」
「血……出てますよ」
「えっ? あっ」
「私、☆☆大学看護学部看護学科4年 菜須よつ葉です。怪我の手当てさせてください」
怪我をした女性にそう伝えると
「ありがとうございます」
そう言ってくれたので、処置をすることに。
「膝の擦過傷ですね」
「擦過傷?」
「あっ、皮膚だけの擦り傷の事ですよ。傷口は水道水でよく洗い流します。傷口から細菌が入って破傷風に感染したら怖いので、しっかり洗い流しますから我慢してくださいね」
人の多いアーケード街だったので、お店の店主さんが水道を使わせてくださった。
「少し前なら消毒薬をしていたようですが、今は消毒薬は良くないと言われていて、傷口にガーゼをして傷口を保護するのはしない傾向になっています。かつては傷は乾燥させてかさぶたができた方が早く治ると言われてましたけど、組織再建に与る細胞群を乾燥死させるダメージのほうが大きく、実際には傷口を湿潤状態に保つ創傷被覆材を1日2~3回貼り替えて傷が乾かないようにした方が創傷面が早く治るうえに傷跡があまり残らないとする考え方が普及しつつあるんですよ」
話ながらもテキパキと処置を進めている。湿潤状態に保つ創傷被覆材を傷口に被って止めて出来上がり。
「これで大丈夫だと思いますよ。痛みが引かなかったり化膿してきたら直ぐに病院を受診してくださいね」
「ありがとうございました」
「はい」
傷口の手当ても無事に終わり、しかし、ひな月さんが戻って来ないので、急ぎ後を追うことにした──