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第3話 駆け出す二人
written:ひな月雨音
「きゃあぁぁぁぁぁ!」
人の多いアーケード街だが、女性の叫び声が聞こえると、刹那、静まり返った──
ひな月は掛けていた椅子を立った勢いで倒しながら、扉を開け外へ駆け出していく。
「あ、あのっ! ひな月さん?!」
よつ葉も店内に一人残る訳にもいかず、バッグを片手にひな月のあとを追った。
「……どっ、泥棒っ! 誰かその男を捕まえてください!」
「……痛っ!」
如何にもといった男が、ひな月にぶつかりながら狭い路地裏へと折れていく。
「あいつ、おバカね! あの先は行き止まりよ。まあ、その方が色々と都合がいいけど」
「ひな月さん! 大丈夫ですか?」
「私はいいから。よつ葉ちゃんは女性の傷の処置をお願い」
「はい……ん? どうして私が看護関係者だと分かったんですか?」
「あら、私を誰だと思って? ふふっ……予言者よ?」
全てお見通しと言わんばかりに、よつ葉へ向けて片目を瞑って見せるひな月。
(さあ、イケないことをした人には、罰を与えなきゃね……)
ひな月とよつ葉は、逆方向へ歩きだした──