表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/31

「これがっ!」「クロスボウの威力だ!!」

 俺はむくれていた。

 初仕事の薬草採集の最中だ。

 仕事がいやなんじゃない。

 原因は俺の腰にあるクロスボウだ。


「うーん、さっきから視界の隅にチラチラ入るけど、やっぱりそのクロスボウすごいねー」


 シェレラがしみじみと呟く。

 俺の腰の後ろに装備されているのは、普通の手持ちボウガン……を、分厚い金属の板であちこち補強したものだ。

 鍛冶屋としてのカリーナ曰く、


「ダンはどうせ、普通のクロスボウなら壊してしまうだろ? それに、今度は都市の外に出てクロスボウを使うんだ。練習用なんて一瞬で粉みじんになるに決まってる。そこで、私が可愛い幼馴染のためにこれを作ってやったぞ! うん、製作時間? 昨日夕飯の後で、三十分くらいで」


 という代物が、これだ!


「シェレラ。俺はさ、クロスボウってこう、もっとスマートで、シャープで、必中必殺! って感じの武器だと思うんだよね……。このクロスボウはできそこないだ。当てられないよ」


「でも、ダンは普通のクロスボウでも当たらないって聞いたけど」


「うっ!!」


 俺の繊細なハートが傷ついた。

 なんてこった。シェレラは優しい顔をして、とんだハードパンチャーだ。俺の心を的確に(えぐ)ってくるぞ。


「ほら、そんなことより最初の仕事なんだから、ちゃきちゃき薬草を採集しよ? 私、早く上のランクになって、強いモンスターの討伐に参加したいの。それで、モンスターの素材を手に入れて、強力な武器を作って、そしてドグラマガーを……! あっ、そこにはダンもいなくちゃだめなんだからね?」


「お、おう!」


 まくし立てられて、俺は圧倒される。

 まあ、こんなに一生懸命なんだ。彼女が報われるように、付き合ってやっても罰は当たるまい。

 というか、俺がこうして都市の外にでるきっかけを作ってくれた恩人でもあるわけで。


「よーし、じゃあ取り尽くすか!!」


「だめだよ!? 取り尽くしたらもう生えてこなくなるでしょ!? そうしたらみんなが困るじゃない! ちゃーんと、再生できるくらいに留めておくの」


「お、おう!」


 もっともな事である。

 思わず、この辺りの薬草を取り付くし、絶滅させるところだった……!!


 俺とシェレラはその後、仕事に(いそ)しんだ。

 背負った薬草入れが、半分ほど埋まる。


「これくらいじゃないかな。ダンが背負ってる量が多いから、依頼されたぶんは充分に取れていると思う。私はこんだけ」


「どっさりだなー」


 シェレラが、褒めて欲しそうに尻尾をふりふりしている。

 銀色のもふもふした尻尾だから、猛烈に目立つな!


「よーし、よくやったよくやった」


 俺は手を伸ばして、彼女の尻尾をわしゃわしゃしてやろうとした。

 すると、尻尾の影から近づいていたそいつと目があったのだ。


「おっ」


「ギョ」


 紫色の肌をした、どでかい直立したトカゲだ。

 確か……ラプトーンというモンスターのはず。この辺りのはパープルラプトーンと言って、小動物やモンスターの卵を食べて暮らしているはずだ。


「シェレラ、ゆっくりそのままの姿勢で、前に進め」


「えっ? どういうこと……」


「振り返るな! 尻尾が揺れてあいつを刺激する!」


 ふりふり……ふりふりっと銀狐の尻尾が振られてしまった。

 ラプトーンの目が、シェレラの尻尾を追う。

 やつはそこから、ピョーンっと跳んだ。


「この距離なら、外すかよ! いくぜ、クロスボウ!!」


 俺はシェレラを引き寄せながら、片腕でクロスボウを抜いた。

 素早くトリガーのストッパーを解除し、装填されていた弾丸を放つ……!

 弾丸は勢いよく飛び、ラプトーンから二メートルほど離れた場所に着弾した。


「ギョ?」


「ガッデム!!」


 俺は呻いた。

 これは当たらなかったんじゃない。奴が避けたんだ!!


「ギョッ!」


 ラプトーンの目の色が変わった。

 攻撃色というやつだろう。

 空に向かって、ギョギョギョワーッと吠える。

 仲間を呼ぶ気だ。


「ええっ、モンスター!?」


 今頃になって、シェレラは気付いたらしい。

 慌てて弓を取り出すが、いかんせん、ラプトーンが近すぎる。


「ギョーッ!」


 奴は、あろうことか俺のクロスボウに齧り付いてきた。

 くっ、俺の唯一の武器を封じるつもりか。頭の良い奴だ。


「させるかよお!! どらあっ!」


 俺はクロスボウを思いっきり振り上げた。

 クロスボウごと、ラプトーンが持ち上げられて、宙を舞う。

 空中を落下してくるこいつ目掛けて、俺は踏み込みながら、クロスボウをフルスイング! 


「おォーらァッ!!」


 バッキィーンッ! と小気味いい音がして、ラプトーンはいびつな形になりながら、遥か彼方に吹き飛んでいった。


「やばいよ! 次々出てくる!」


 シェレラが矢を放った。

 一本が当たり、顔を出していたラプトーンが撃ち落とされる。

 だが、茂みから、木の上から、ラプトーンがどんどんと現れる。


「くそ! こんな数がいるんじゃ、単発のクロスボウじゃ足りねえ……!!」


「えっ。ダンは拡散型のクロスボウでも外しそうな気がする……」


「やめて!!」


 俺のハートをざっくりと突き刺してくるシェレラである。

 これを振り捨てるように、俺はクロスボウを振り回した。

 飛びかかってくるラプトーンを片っ端から打ち返していく。


 おおっ、奴らの頭蓋骨と衝突して、今いい音したなあ……!

 いつものクロスボウなら、無様に曲がってしまっているであろう手応えだ。

 しかし、カリーナはこれを見越して改造したのだろう。


「悔しいが、金属板つきクロスボウならなんともないぜ……!!」


 今は、クロスボウの素晴らしい頑丈さに感謝だ。


「これがっ!」


 俺はラプトーンの一匹を掴み上げると、振り回した。

 そいつが他のモンスターにバキバキと当たり、群がって来た連中がなぎ倒されていく。

 さらに、俺はラプトーンを放り上げて、クロスボウを振りかぶった。


「クロスボウの威力だ!!」


 大きく踏み込みながら、ボウガンでラプトーンを殴打する。


「ギョエーッ!!」


 ラプトーンが絶叫しながら、他のモンスターを巻き込んでぶっ飛んでいった。

 ストライクだ!


「やるう!! 私も負けないよ!」


 俺の後ろから、シェレラがどんどんと矢を射る。

 俺を越え、曲射が次々とラプトーンを貫いていく。


 シェレラなら、俺に矢を当てることは無いだろう。

 ランク1とは思えぬ、凄まじい技量だ。

 弓の性能が上がれば、きっともっと凄いことになる。


 彼女から射撃を習うことができるのだ。

 ワクワクしてくるじゃないか。


「俺は……射撃をマスターするぞーっ!!」


 手近なラプトーンを掴んでは投げ、足に引っ掛けては吹き飛ばし、ついでに真横に置いてあった巨岩を持ち上げてぶん投げ……。

 気が付くと、動くラプトーンはいなくなってしまっていた。


「あれっ」


 その時、シェレラが声を漏らした。


「どうした?」


「うん、なんだか一瞬向こうに、私をパーティに誘ってくれたワンダラーの人たちがいたような……」


 なんだと?

 どうも、良からぬ陰謀の臭いがする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ