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「お前が、竜人か……!!」モブ視点

 ランク15のワンダラー四名で構成されるパーティー、シルバーキャプター。

 ハンマー使いのベテランをリーダーとし、斧使いの女性と弓使い、片手剣使い兼雑用係。

 仕事の成功率、実に90%を超える、都市国家コーフの代表的パーティである。


「グルルドーンがハントされたお陰で、安心して仕事ができるわねえ」


 群がるモンスターを振り払いながら、斧使いが笑った。


「まったくだ。警戒態勢に駆り出されがお陰で、最近仕事ができなかったからな。腕が訛っていかん」


 次々に矢を射て、モンスターたちを仕留めていく弓使い。


「だが……ダンごときがやれたんだろう? グルルドーンも大したこと無かったんじゃねえの……っと!」


 片手剣使いが素早くバックダッシュした。

 彼がついさっきまでいた場所に、火花を散らす竹筒が置かれている。


 モンスターたちは、逃げた片手剣使いを追うために、竹筒を追い越していく。

 だが。


「無視していいのかい? そいつは爆弾だぜ?」


 モンスターたちの背後で爆発が起こった。


「ギャオーンッ!」


 悲鳴をあげ、吹き散らされるモンスターたち。

 生き残ったものを、片手剣使いは駆け寄りざまに切り裂く。


「そう言うな。彼は俺同様、ハンマーを志していれば一流のワンダラーとなったであろう男だ」


 ハンマー使いが、敏捷な大型モンスターに駆け寄る。

 今回のハント対象は、地竜タイドラガー。

 巨体に見合わぬ身軽さで、枝から枝へと飛び移るモンスターを、ハンマー使いは的確に追尾する。


「着地地点……読んでいたぞ!」


 弓使いの威嚇と、片手剣使いが投擲する爆弾。

 それに誘導され、タイドラガーはハンマー使いの前に降り立たざるを得ない。


 その着地に合わせ、巨大なハンマーを構えていたハンマー使いである。


「はぁっ!!」


 大柄な肉体に、太い縄のような筋肉が浮かび上がる。

 叩きつけられたハンマーが、地竜の顎を的確に打ち抜く。


 タイドラガーはグオオッと呻くと、ふらふらと歩き、そのまま目を回して突っ伏した。


「チャーンス!!」


 ありったけの爆弾を取り出しながら駆け寄る片手剣使い。

 最大威力の矢を放とうとする弓使い。

 斧使いは手近な段差の上に登り、ジャンプからの一撃を加えようとした。


 シルバーキャプターの必勝パターンである。


「ダンは今頃、対竜人用のサポートを受けている頃か。若いワンダラーが、ラッキーヒットで実力以上のモンスターをハントしてしまうことはままある。そんな偶然に頼ろうとするとは、ギルドは浮足立ち過ぎだろう」


 タイドラガーの断末魔の声が聞こえる。

 ベテランワンダラーの集中攻撃を受ければ、並のモンスターであればひとたまりもない。

 今回の仕事も、危なげなく終了したのだ。


「こんなことなら、グルルドーンとやらも俺たちでやってみたかったぜ!」


 倒れたタイドラガーから、希少な爪の部位を剥ぎ取りつつ、片手剣使い。


「火山竜か。あれは矢が通らない重厚な鱗を持っていると聞く。やってみるとすれば、興味深い相手だ」


「はっ。火山竜だかなんだか知らないけど、生きてるモンスターならば頭をやれば一発さ!」


「ああ。俺のハンマーで弱らせた所を、いつもの集中攻撃で仕留められるだろう。俺たちは少々、慎重すぎたのかも知れないな」


 仕事を終えた後の高揚感からか、シルバーキャプターの面々は饒舌だった。

 自分達が優れた実力を持っていると自負しているからこそ、新米のワンダラーであるダンが、獣人の娘とともに竜人対策を任されたことに、思うところがある。


「おう、このあと戻ったらよ。俺たちでギルドに掛け合ってみようぜ。あのひよっこじゃない。このベテラン、シルバーキャプターに竜人討伐を任せてくれってな」


 お調子者の片手剣使いだが、この言葉は本気だった。

 本気で、自分達はあの若きワンダラーよりも優れているから、より上手く竜人討伐を成し遂げられると、そう思っている。

 その時だ。


『ほう。お前らが、俺を?』


 彼らのすぐそばで、突然そんな声がした。

 人の言葉を発してはいたが、人の声帯から生まれた音ではない。

 シルバーキャプターの面々の背筋が粟立った。


「誰だ!!」


 ハンマー使いは誰何する。

 いつの間にか、倒れたモンスターを挟んだ向こうに、黒衣の男が立っている。

 フードの隙間から、金色の瞳がこちらを見つめていた。


「いつの間に……!? この地域は俺たちが仕事をするため、人払いをしていたはずだ! どうやって入ってきた!?」


「さては、モンスターを横取りしようってんだね!? 許しゃしないよ!」


 弓使いと斧使いが、自らの得物を構える。

 これを見て、黒衣の人物の口元が笑みの形になった。


『戦う前に吠えるのがお前たちの流儀か? あのダンとか言う男とは随分違うんだな?』


「なんだと……!?」


「俺たちをあんなひよっこと一緒にするんじゃねえ!」


 激高した片手剣使いが、取り出した短剣を黒衣の男目掛けて投擲した。

 相手が一般人であれば、場合によっては殺傷してしまうであろう行為である。

 だが、これを黒衣は避ける素振りも無い。


 短剣は彼の身体に突き刺さらず……布の上を滑り、落ちた。


「へっ……?」


『そうだ。やる気ならば手を出せばいい。シンプルかつ最高の意思表示だ』


 黒衣はそう言うと、前かがみになった。

 呆然とする片手剣使いに向かって、黒衣の背中を突き破って飛び出した何かが襲いかかる。

 片手剣使いは咄嗟に反応するものの、何か、はあまりにも大きく、そして広く展開していた。


「うげえっ!」


 それに打たれて、転がる片手剣使い。

 それは、翼だった。

 漆黒の巨大な翼。


 次に、翼の下から人の胴よりも太い腕が飛び出してくる。


「じょ……冗談……!」


 その言葉を残して、片手剣使いは押し潰された。


「てめえ!!」


 斧使いが、段差を利用して飛びかかる。

 だが、これを、彼女の頭上から振り下ろされた太い鞭のようなものが叩き落とした。


「ぎゃあっ!?」


 尻尾である。

 いつの間にか、爛々と輝く黄金の目が、高いところから残る人間達を見下ろしている。


「お……お……」


 ハンマー使いは、口の中がカラカラに乾いていくのを感じていた。

 黒衣の男などどこにもおらず、そこには、未知の巨大なモンスターが存在していたのだ。

 それは、漆黒の巨竜。


「お前が、竜人か……!!」


『俺を狩るのだったか? どう狩るのだ? やってみせろ』


 竜が発した言葉は、笑みを含んでいた。

 そして、一方的な殺戮が始まった。

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