「お前がグルルドーンか!!」
今日の仕事は、ランク5になって初の仕事だ。
まあ、メガパープルのハントなんで、この間クリアした内容なんだが。
「だがっ!! 俺はやる気満々だぜ!!」
カリーナにカスタムしてもらい、さらによく分からん鉄板が取り付けられたクロスボウを担ぎ、のっしのしと水の中を歩いていく。
ここは渓流。
滝が流れ落ちる洞窟の中に、最近メガパープル率いるラプトーンの群れが住み着いたらしい。
これをハントする。
「気合い入れて行こう! 前にハントしたやつと同じだけど、コツコツ仕事をしていかないとね!」
水辺にたむろっているラプトーンが、こちらに気付いて起き上がって来る。
ギャアギャアと鳴きながら、俺たちを囲むように集まってくるモンスターたち。
これを、
「おらぁ!!」
「ギャイーン!」
蹴散らす!
クロスボウのあちこちに、金属板や杭打機や盾が増設されたお陰で、適当に振り回すだけでモンスターにぶち当たって吹き飛ばせる。
こりゃあいい!
カリーナが俺のクロスボウを改造するたびに、彼女の正気を疑ったものだが、使ってみると案外これは使い勝手がいいな!
「いやあ、そんな変な武器使えるの、ダンくらいだねー!」
「ええ!? こ、これ使いやすくないか? 適当に振り回すと、どこかがモンスターに当たるじゃん!」
「ギャエーッ!」
盾にぶち当たったラプトーンが跳ね飛ばされていった。
「あのね、それ、私持ち上げることもできないのよ。めっっっちゃくちゃ重いの! ……っと!!」
シェレラが矢を放つ。
一度に何本も番えられた矢が、拡散しながら複数のラプトーンを射抜いていく。
狙いは正確、威力も十分だ。
「やるなあ」
飛びかかってきたラプトーンを鷲掴みにし、ポイッと投げ捨てた。
徐々に、滝が見えてくる。
その裏に、メガパープルが棲む洞窟があるのだ。
「おうい!」
俺は声を張り上げた。
腹の底に力を込めて、全身を使って発声する。
「出て来いよ、メガパープル!!」
隣に立っているシェレラが、俺の声を受けて尻尾から耳まではビリビリと震わせた。
残っていたラプトーンたちまで、動きを止めている。
すると、応じるように、洞窟の中から叫び声が聞こえた。
足音がする。
滝を突き破って、紫色の巨体が姿をあらわす。
メガパープルラプトーンだ。
さあ、この標的を狩ってやるぞ!
そう思った矢先である。
「はっ! てめえの仕事はここでおしまいだよ、デカブツ!」
憎たらしい声が聞こえた。
次いで、俺とメガパープルの間にクロスボウの弾が打ち込まれる。
「うおっ!?」
「ギャオッ!」
俺とメガパープルが驚く。
声がしたほうから、弾が飛んできたのだ。
そこにいたのは……。
「あっ、ピーナッツクラッシャーズ」
「誰がピーナッツだ!? ナッツブレイカーズだっての!!」
シェレラの言葉に、片手剣を持った男が憤って腕を振り回した。
そう、それだ。
俺に嫌がらせをしていた、ワンダラーのパーティである。
「おい、ナッツブレイカーズって、まだペナルティ解けてないはずだろ? 仕事はできないはずだ。っていうか、他のパーティの仕事に横槍を入れるのはご法度だぞ!」
「うるせえ!! 俺たちはな、ダン、てめえに復讐に来たんだ! てめえのお陰で俺たちはでかいペナルティを負って、こうして仕事が出来なくて干上がりそうだ!」
「それってそっちが悪いんじゃん」
シェレラに突っ込まれて、ナッツブレイカーズの面々が激高する。
「うるさいわね狐女!! けだものの癖に、いっちょまえに私たちの誘いを断るのがいけないのよ!」
「そうだ! 俺たちがせっかく一人前のワンダラーに育てて、その上でお前の美貌を利用して成り上がってやろうとだな!」
「そういうとこだぞ!」
俺はびしっと奴らを指さして言った。
「そういうのはいけないんだぞ!! シェレラはシェレラで目的があるんだからな! 利用しようとするな!」
「うるせえ、デカブツ!! てめえは、受付嬢とも仲がいいし、腕利き鍛冶師のカリーナにも贔屓されてる! その上、銀狐の獣人まで仲間にしてどんどんランクを上げてるだと!? 生意気なんだよ!」
「それは逆恨みじゃないか」
俺は呆れた。
ちなみに俺の眼前で、メガパープルは唖然としている。
いきなり足元を撃たれて気勢を削がれ、人間たちが大声で喧嘩を始めたんだから当たり前だろう。
だが、そろそろこいつの堪忍袋の緒も切れたようだ。
「ギャオオオオオッ!!」
高らかに吠えると、メガパープルは手近な相手、俺に向かって突進を始めた。
俺だって、いつまでもナッツブレイカーズに構ってはいられない。
「さあ来い!」
クロスボウを構えて、真っ向から迎え撃つ体勢だ。
「させるかよ!! 竜人の旦那、頼むぜ!!」
そこへ、片手剣の男の叫び声を上げた。
同時に、鋭い指笛の音色が辺りに響き渡る。
次に来たのは、衝撃だ。
ナッツブレイカーズ真横にある茂みが破れ、そこから炎を纏った岩石の塊が幾つも飛来する。
「うおお!? なんだ!」
慌てて、俺はこいつをクロスボウの盾で受け止める。
シェレラは素早く、俺の背後に隠れた。
驚愕したのはメガパープルも同じである。
モンスターは飛んできた炎の岩石を受けながら、苦痛の叫びを上げる。
だが、本番は岩石ではなかった。
それを追うように、メガパープル以上の巨体が飛び出してきたのだ。
「ギュロロローン!!」
全身を、岩石のような鱗で覆った巨大な竜。
四足で地面を蹴り、メガパープルに向かって突撃してきた。
まるで岩の塊に見える頭が、メガパープルに直撃する。
「ギャオオオーッ!!」
この大型ラプトーンは、叫び声を上げながら打ち倒され、滝の洞窟まで転げていった。
ラプトーンたちが動揺し、俺たちから距離を空ける。
俺たちと向かい合うのは、この新たなモンスター。
「そうか、お前がグルルドーンか!!」
岩石の竜は、俺に向かって高らかに咆哮を上げる。
俺もまた、クロスボウを構え、そして気付いた。
「いっけね。クロスボウに弾装填してねえや」
こうして、ダイレクトヒッターズと、火山竜グルルドーンの戦いの火蓋が切られたのである。




