「二人揃えばなんでもできるからな!」
俺のワンダラー生活は、順風満帆だった。
小型モンスターのハントに、希少な鉱石の採集、果ては、モンスターの卵ハント。
様々な仕事を請け負った。
とりあえず分かったのは、俺は小型モンスターなら片っ端から吹き飛ばし、希少な鉱石は握りつぶし、卵は抱えた瞬間にパリンと割れる。
イマイチ、仕事中の力加減が苦手だということだった。
だが、それもシェレラのお陰で解決だ。
俺は護衛に注力し、シェレラが細かい仕事を担当してくれる。
「まあ、私も本当は攻撃したいけど……ダンのパワーだと繊細な仕事は厳しいよねー」
「すまんなあ」
俺は彼女に感謝しながら、卵を取り返しに襲い掛かってくる地竜と戦っている。
地竜タイドラガーは、大きな樹上に巣を作る陸棲の竜だ。
その肉体は地上を走ることに特化していて、障害物のない草原なら、時速80キロほどを出す。
今も、タイドラガーの咆哮が聞こえてきて、その巨体が樹上から襲い掛かってきた。
「なんのぉっ!!」
俺はこいつを、クロスボウを使って受け止める。
金属板様々だ。
射撃するより、鈍器として使ってる機会が明らかに多い気がするが。
牙と爪と、金属板がぶつかり合って火花を散らす。
タイドラガーはミネラル補給の為、鉱石を食べる習慣がある。
それで、こいつらの牙や爪は金属を含んで猛烈に硬いのだ。
他の竜のようにブレスは吐かないが、素早い動きと強靭な爪と牙は脅威である。
ちなみに、俺たちランク4のワンダラーが相手に出来るレベルのモンスターではないが、それはいつもの事だ。
「どっせーい!!」
俺はクロスボウごしに、タイドラガーの鼻っ柱を掴んで張り飛ばす。
「ぎゃおおおおん!!」
地竜は叫びながら、あたりの木々をなぎ倒して転倒する。
「よーし、今だー!」
卵を抱えたシェレラが加速した。
普通の人間なら、落としてしまわないようにバランス取りで必死なはずだが、彼女には優秀なバランサーである尻尾がある。
狐の尻尾をピーンと伸ばして、彼女自身は前傾姿勢気味にどんどん走っていく。
速い速い!
「よっしゃ、急げ急げ!!」
俺たちの卵ハントは、他のワンダラーと比べて異常に仕事が早い。
というのも、他のワンダラーはモンスターを足止めするため、催眠肉やら麻酔弾、罠なんかを駆使したり、迂回ルートを使って行動するからだ。
俺たちは大変潔く、最短ルート一直線。
シェレラが尻尾を活かして猛スピードで走り、追ってくるモンスターを俺が殴り倒す!
完璧なコンビネーションである。
かくして、都市国家が見えてくると、タイドラガーは俺たちの追跡を諦めたらしい。
悔しげに鳴くと、森に戻っていった。
基本的に、モンスターは人が住む都市国家には近づかない。
そこには、モンスターの敵であるワンダラーが山ほどいるし、武器だって幾らでもある。
危険な場所だというのが本能的に分かっているのだ。
「むちゃくちゃしたわねえ……」
ギルドの受付け嬢、エイラが呆れ声で言った。
俺たちが、卵ハントの仕事を請け負って即日納品したからだ。
普通、これは対象モンスターの生態を調べたり、ルートを開拓したり、罠を張り巡らしたりして三日くらいかかるそうだ。
「そりゃもう! だって私たち、最短ルートをズドン! だもん」
シェレラが得意げにポーズを決め、あらぬ方向を指差す。
耳がピコピコ動いているから、テンションが高くなっている証拠だ。
「ああ。運ぶシェレラと、モンスターと殴りあう俺! 二人揃えばなんでもできるからな!」
俺もちょっと得意な感じで胸を張った。
「シェレラも無茶しすぎよ。って言うか、ダンも鼻の穴が広がってる。これは調子に乗ってる証拠よ? そういう時こそ落とし穴があるんだから、注意してね? ……でも、お疲れ様。多分これって、卵ハントの最短記録ね……!」
戻ってきた俺たちを、ワンダラーギルドの連中は、もう馬鹿にしたりなどしない。
たった二人きりで様々な仕事を請け、超短期間で達成して戻ってくる二人組、ダイレクトヒッターズは一目置かれているのだ。
ただ、そこそこ名前は売れてきたはずなのだが、誰も俺たちのパーティに加わろうという者がいないのが不思議である。
「いやいや、お前らのパーティに入ったら、命が幾つあっても足りないだろ……! 安全マージン取らずに仕事して、しかも毎回大型モンスターと遭遇して、それで生きて帰ってくるとか俺は自信がないわ」
考えが口に出ていた。
すぐ近くにいたベテランワンダラーが、苦笑している。
かくして、俺たちは卵ハントの報酬をもらい、防具の強化をしにカリーナの家に向かうのだ。
モンスターの卵は珍味らしく、高値で取引される。
俺たちに支払われる報酬の、十倍近い値段が付くのだとか。
「私も一度、モンスターの卵を食べてみたいなあ」
「実際に料理で食ったら、目玉が飛び出るような値段らしいぜ。もっと有名にならなきゃな!」
今回の仕事で、俺とシェレラのワンダラーランクは5になった。
いよいよ、大型モンスターのハントを受けられるレベルになる。
しかし、ランク5で最初に受けられる大型モンスターのハントは、なんとあのメガパープルなのである。
あれは前に倒したからなあ。
「でも、ダン。私たち一歩一歩前進してるわよ! しかも、凄い速度で一歩一歩!」
「確かに。まだ俺たち、パーティを組んで二週間経ってないもんな」
報酬の残りを使って、大通りに面した食堂で打ち上げである。
卵ハントの後なので、二人で卵料理を食べる。
山のように盛られた特大オムレツが出てきた。
こいつにトマトソースとコショウを掛けて、パンに載せてもりもりと食らう。
「新品の防具にオムレツがこぼれないように注意しないとね!」
そう言うシェレラだが、新品の銀色の胸当てを外す気配がない。
モンスターの骨を磨いて作られる、射手用の胸当てで、俺たちが採集した希少金属をコーティングされている。
若干大きさがあり、心臓から内臓の重要器官までを守る効果がある。
「ダンだって、鎧着てご飯食べてる!」
「ははは、だって、なあ!」
俺の装備は、モンスターの骨で作られた鎧と、具足と小手、それに兜。
特にコーティングもされてないので、茶褐色。
俺用に、骨のパーツを余すところなく使ったので、兜がメガパープルの頭蓋骨型だったりして大変かっこいい。
「ダンはまるでモンスターみたいね! すっごくいかすわ!」
「シェレラだって、胸当てよく似合ってるじゃないか!」
互いに褒めあって、顔を見合わせ、ぐふふふふ、と笑う。
そしてオムレツをもりもりと食べるのだった。
ちなみに、オムレツは装備にこぼれた。




