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「なんでクロスボウに杭が付いてるんだ?」

 武器が完成するまで、おおよそ一昼夜とか。

 他に色々な仕事を請け負っている、腕利き鍛冶師のカリーナ。

 しかし、俺とシェレラの分は特別扱いで先に仕上げてくれるらしい。


 ただし、払うものはきっちり払わねば。

 たっぷりの素材を提供した上に、お友達価格で一割増を請求された。

 カスタムと割り込み作成の料金なんだと。


「おう……報酬が全部空になっちまった……!!」


「たくさんお金を払ったから、いい武器ができるといいね!」


「そうか、そうだよな! 速攻で作ってくれるわけだからな! 高くても納得だ!」


「ということで、完成するまでの間は射撃の訓練するわよ!」


「オス! シェレラ師匠!」


 ってことで、俺たちはギルドに設けられた練習場で、射撃訓練を行うことになった。

 シェレラは練習用の弓、俺はクロスボウ。


「いい? クロスボウのここに付いている突起があるでしょ。これが照星。ここで標的を見て撃つの」


「ええっ……!? そこ、飾りじゃなかったのか!!」


 俺は心底驚いた。

 その様子を見て、シェレラが「やっぱり!!」と笑った。


「ダン、クロスボウの使い方独自だったでしょ! いいのよいいのよ。これから、基礎からやっていこう! 大丈夫、いつか遠くでも当たるから!」


「いやいやいや! ショーセイなるものを知った俺は、既に一歩進んだクロスボウ使いになったのだ! 見ててくれよ!」


 照星に標的を捉えて……シュート!!

 引き金を引く俺。

 放たれた弾は、標的の1mくらい横に炸裂した。


「惜しいっ!!」


「あー、照星を使っても当たらないか……!! これは鍛え甲斐があるわねッ」


 シェレラがやる気満々で鼻息を荒くした。

 かくして、俺はとってもしごかれる事になったのだった。


「いやあ……クロスボウってのは奥深いな! まさか狙いをつけるなんて高等な技法があったとは!」


「私だって、まさかダンが狙いをつけたことが無いなんて思いもよらなかったよ! でも、これからはちょっとは当たるね! ゼロから1%くらいまで上がったから、無限の進化だよ!」


「ああ! なんか褒められてるんだかきついこと言われてるんだか分からないが、任せてくれ!」


 訓練所を後にする俺たち。

 普段であれば、俺がやっている訓練に対し、ギルドの低いランクの奴らが茶々を入れてくるところだ。

 だが、流石に昨日、あのメガパープルを担いでくる姿を見せたせいか、俺を馬鹿にする奴はいなかった。


 だけど、ナッツブレイカーズがいないな。

 また仕事でも請け負ったのか?


「私あの人たちきらーい」


 思ってたことが口に出てたらしい。

 シェレラが唇を尖らせて、不満を言う。


「他人を下げたって自分が上がるわけじゃないじゃない? なら、悪く言う時間で自分を鍛えたほうがいいじゃない。ドグラマガーは待ってくれないんだよ?」


 耳も尻尾も、怒りをまとってツンツン立っている。

 彼女の目標は、かの壊天魔獣の打倒だからな。

 俺もシェレラのおかげでワンダラーとして仕事をできた恩があるから、壊天魔獣打倒には付き合うつもりだ。


「それじゃあ、全速力でランクを上げて、ドグラマガー退治できるようにならないとな!」


「うん!! そうだよそう! うひゃー、ダンって話分かるうー! 獣人じゃないのにこんな話分かるのダンだけだよー」


 シェレラが感激して、俺に飛びついてきた。

 首にかじりついて頬ずりしてくるので、彼女をぶらーんとぶら下げたまま歩くことになる。

 これは大変注目を集める格好だな。


「おい、あれ……!」


「うひょお、メガパープル担いでたダンが、今日は狐娘をぶら下げて凱旋だな!」


「仕事するようになってから、見違えたよなあ」


 そんな声が聞こえてくる。

 そうだな。仕事に出られなかった時はウツウツとしていたが、今は何も悩みは無いぞ!

 しかもこれから、新しい装備の受け取りと来ている。


 俺は堂々と胸を張り、大通りを歩く。

 首の周りをくるくると、しがみついたままのシェレラが回転しているが羽みたいな軽さだから全く気にならない。

 俺、自分と同じくらいの重さのものまでは、羽と変わらない感覚で持てるからな。


 やがて見えてきた、カリーナの鍛冶屋。

 扉をくぐると、ちょうど客の一人が武器を受け取るところだった。


 ほう、ヘヴィクロスボウか!

 移動しながらでは使えないという武器で、モンスターとの距離を取りながら、地面に設置して射撃する大型のクロスボウだ。


 こうして見ると俺のハンディクロスボウと大きさが変わらないように見えるが、きっと構造とか色々なものが違うんだろう。


「ダンはヘヴィクロスボウ手持ちで持ち歩いているから忘れるけど、普通の人と比べると大きいわよね」


「何を言ってるんだシェレラ。俺のクロスボウはハンディだぞ!」


 彼女の言葉を聞いて、俺は思わず笑う。

 ヘヴィなら持ち歩けるはずがないだろう。

 クロスボウ使いのワンダラーたちは皆、ヘヴィは設置して使うものだと言っていたぞ!


「おや、おかえり。ダンもシェレラも、お望みの武器ができているよ」


 店の奥からカリーナが顔を出した。

 俺と一番付き合いが長い幼馴染で、十代前半で鍛冶師だった親父さんの技を全て体得して、その翌年には超えてしまったといういわゆる神様の祝福持ちだ。


 ほいほいと台車に乗せて運んでくるのは、見たこともないような弓とクロスボウ。

 メガパープルの素材を使ったらしいが、巷で売ってる、パープルクロスボウやパープルボウとは見た目がぜんぜん違う。


「どう? メガパープルの骨どころか、骨髄まで新鮮なものを使えるのは初めてだったからね。張り切っちゃった」


「すっごーい!! これ、拡散型の弓ね!? メガパープルの素材で、これだけのものが出来るなんて……! これなら、ラプトーンがどれだけ出てきても、一度にやっつけられるわ! それに、紫色が綺麗……!」


 シェレラ大興奮だ。

 そして、俺だって興奮を抑えきれない。

 そこにあったのは、最新型のハンディクロスボウだったからだ。


 メガパープルの背骨を基本にして、鉄で補強した本体に、以前よりも一回り大きくなったクロスボウ部分。

 さらに、よく分からない仕掛けがしてあって、砲口の真下に長く突き出した部分がある。先端は鋭く尖り、メガパープルの牙を埋め込んであるようだ。

 一見して、それはどでかい杭に見えた。


「……なんでクロスボウに杭が付いてるんだ?」


「それは保険だよ。ダンは弾を外してよく弾切れになるだろう? そうしたら、砲をこの杭打機と切り替える。射撃の要領で、モンスターの堅い外皮を穿つってわけさ! まあ、メガパープルの牙だからそこまで大した貫通力じゃないけどね」


「ぬぬぬ……クロスボウらしからぬ……!! だが、カッコいい……!!」


 新しい得物を手に入れ、嬉しさ半分、複雑さ半分の俺なのだった。

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