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「よーし、とびっきりの武器を作ってあげる!」

 メガパープルを持ち込んだら、都市国家はちょっとした騒ぎになった。

 具体的には、衛兵がぞろぞろとやって来た。

 俺とシェレラを取り囲む彼ら。


 最初は警戒心をあらわにしていたんだが、担いでいるのが俺で、シェレラが物珍しそうに衛兵たちをキョロキョロ見回しているので、毒気を抜かれたらしい。


「なんだ、ダンか……」


 そう言ったのは、斧槍を持った長身の衛兵。俺と上背が近い。

 俺よりちょっと年上の昔なじみ、チョーサーだ。


「おう、ついにワンダラーになった俺だ! メガパープルを狩ったからこうして持ってきたぜ!」


「持ってきたって、お前なあ……。まるごと担いでくる奴なんて初めて見たぜ。とんでもねえ馬力だなあ」


「でしょ? ダンって凄いのよ! メガパープルを真正面からふっ飛ばしちゃうの!」


 シェレラが身振り手振りで、俺の活躍を語る。

 右に左に、お尻がふりふり。尻尾が釣られて大きく動くものだから、衛兵たちは彼女に釘付けになった。


 そっと人混みから、シェレラの尻尾目掛けて手が伸びる。

 だが、彼女はそれをするりと躱して俺の傍らに立った。


 そして、値踏みするように兵士達を見る。


「ふぅん……案外鈍いんだ? やっぱり、簡単に私の耳や尻尾に触ってくるダンって、反射神経いいのかも」


「おいダン。お前、そんな羨ましいことをしてたのか……」


 チョーサーが咎める目をしてきた。


「あの尻尾は触りたくなるだろう」


「そりゃあそうだが……」


 俺とチョーサーがやり取りする間に、衛兵たちはわらわらと帰っていった。

 街中にモンスターが出たという通報でやって来たのだろう。

 いたのが俺と狐娘だったので、拍子抜けしたのだ。


「まあまあ、いいじゃないか。俺は彼女のおかげで仕事を受けられるようになったんだ。そのうちサクサクとランクを上げて、伝説のワンダラーになるんだから、狐娘の尻尾をもふったくらいで目くじらを立てるなよ」


「それとこれとは……」


 かくして、俺たちはチョーサーを連れたままワンダラーズギルドへ。


「また!! また依頼内容を超越することをやって!!」


 エイラは、俺が担いできたメガパープルを見て、驚きを通り越して呆れ返っている。

 ちなみにギルドの面々は、目を剥いてこの巨大な得物を見つめていた。


 その中には、俺をバカにしてきていたナッツブレイカーの面々もいて、そのリーダー格の男は悔しそうな顔をしている。


「いい、ダン! 確かにラプトーンの仕事と同時に、メガパープルラプトーンを狩ることができれば、ランクは上がりやすくなるわ。だけど、危険だって言ってるのに……」


「エイラ、ワンダラーが危険なのは当たり前でしょ?」


 言い募ろうとするエイラに、シェレラが答えた。


「それに……私が目指すところは、こんなもんじゃないから」


「ドグラマガー……? 壊天の魔獣なんていう伝説みたいな存在とやろうだなんて、悪い冗談だわ。まさかシェレラ、本気じゃないでしょうね?」


 女子たちの間の空気がおかしい。

 エイラの中では、俺はまだ年下の幼馴染のままなんだろう。子供扱い的な。

 だが、俺の気持ちとしてはシェレラに近いのだ。


「エイラ、これで仕事は達成ってことでいいな!」


「それはそうだけど……」


 まだ不服そうなエイラを置いて、俺はメガパープルを担ぎ、一路もうひとりの幼馴染の家を目指す。


「エイラ心配性ねえ。心配したって、やる事はやるんだから変わらないのに。それに、どうして脳天気にコーフの街がドグラマガーにやられないって信じられるのかしら」


 横を歩くシェレラが呟く。

 彼女は現実を見た。

 自分の王国を踏み潰していく、壊天魔獣と遭い、それに心を折られることなく、必ずそれを倒すと誓ったわけだ。


 エイラとじゃ、向いている場所が全然違うんだろう。

 覚悟だって決まってるに違いない。

 俺はと言うと、そんなに思いつめてはいないな。


「ま、俺らの装備があんまりにも貧弱だったから心配したのかもしれないぜ。ってことで、このメガパープルを素材にしてもらおうぜ!」


「そうね! 私のは、曲射しかできないタイプだから、速射に拡散、遠当て……何かもう一つできるようになっておきたいわ」


「俺は……そうだな、もっと当てやすいボウガンに」


「ダンは当てるより威力重視でいいわよ!」


 食い気味に否定されたぞ!

 だけど、遠くで命中率を上げてちまちま撃つより、さっき発見した必中の方法、密着して射撃に特化するのもいいな。

 そこはカリーナに任せるとしよう。


 鍛冶屋を営む彼女の家に到着すると、カリーナは既に待機していた。


「やって来ると思ったよ。チョーサーが先に知らせに来たからね。しっかし、メガパープルをまるごと一匹素材に使うなんて、剛毅ねえ……!」


 俺がドーンと置いた、この巨大モンスターを見て、彼女は笑みを浮かべた。

 生まれながらの鍛冶師でもあるカリーナは、腕が鳴るというところだろう。


「カリーナ、私はね、曲射以外の矢を撃てる弓!」


「俺はお任せで……」


「あら、私が作った、金属板付きクロスボウはお気に召したみたいじゃない?」


「悔しいが……役立った……!」


「ははは! 結構! よーし、とびっきりの武器を作ってあげる!」


 カリーナは、頼もしく宣言したのだった。

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