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いたずら王女と見習い騎士の婚姻譚  作者: 遥風 かずら
待ち望む行く先編

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61.アスティンの修行:【涙】


 1人目のカンラートの修行は心を学ぶことだった。夜が更けるまでかかっていたこともあって、2人目のハヴェルは、朝になっても俺を叩き起こすことをしなかった。


「……ふ。寝顔を見てもやはりあの頃の面影のままだな。ハヴェルは何をこいつに教えるつもりだ?」


「そうだな、このまま夕方まで寝かせておく。俺の修行は夜が本番だからな! 口出しはするなよ? カンラート。ちなみにドゥシャンも一緒に行くぜ」


「アスティンにアレをか? 恐らく初めての事だろう。程々にしとけよ? あと、髭は剃れ!」


「相変わらず小言がうるさいな、カンラート。王女様はさぞや、苛ついたに違いねえな」


「やかましいわ! ふっ、俺は王女と恋仲なのだぞ? どうだ、羨ましいか?」


「寝言は寝て言え! まったく、冗談にもならんことを言いやがる」


 俺が寝ている間、3人の騎士たちが何やら楽しそうに話をしていた。カンラートとルフィーナが何だろう? はっきりと聞こえもしないけど、俺も起きて話をしたい。


「……ってあれ?」


「起きたか、アスティン。夜までよく寝ていられたものだな」


「よ、夜!? えっ……あれ、修行は?」


 目覚めたらカンラートが俺を見ていて、他のふたりは宿舎からいなくなってた。どこに行ったんだろ。


「アスティンの修行は夜が本番だ。だから、心配するな! 俺がお前をそこへ送って行ってやろう。準備しろ。あぁ、鎧ではなく、普通の洋服でいいからな」


「えっ? あ、うん」


 カンラートも騎士鎧を珍しく脱いでいて、同じように洋服に着替えていた。修行……だよね?


「よし、着いたぞ。じゃあ、俺は行くからな。アスティンは中へ入って楽しめ!」


 ここって、昨日の酒場? 楽しめって何が? 酒場なんて俺が入っていい所なのかな。カンラートはまだその辺を歩いているよね。どうするべきなのか聞いてみないと。


 カンラートが歩いて行った方を追いかけて行くと、俺は視線の先を見ることが出来ずにそのまま酒場へ戻るためにきびすを返した。アレはシャンティ。洋服を着てた。カンラートと一緒に歩いていた。


 い、いや、ふたりは婚約者同士じゃないか。だからふたりでいたっておかしいことなんてない。そ、そんなこと分かっていたはずじゃないか。わ、分かっていた……んだ。それなのに、俺、俺はどうしてこんな所で泣いてるんだろ。何で涙なんか流れて来るんだよ……シャンティ――


「アスティン、待っていたぜ! ドゥシャンも緊急参戦だ。よし、どんどん注いでくれ! がはははっ!」


「へ? 注ぐって何? 修行は何なの、ハヴェル」


「まぁ、気にすんなよ! 細かいこと気にすんのはカンラートだけで勘弁してくれ。ん? お前、目の下が赤いが……まさか、すでに飲んでるとかじゃないだろうな?」


「ち、違うよ!」


 髭面ハヴェルと長髪ドゥシャンが、俺に課した修行は酒飲みだった。もちろん、飲んだことはないし飲みたいとも思ったことが無かった。


「よぉーし、アスティン! 酒はいいぞぉ。辛いことも悲しいことも全て忘れるくらいに飲めばいいんだぜ? 楽しければいいんだよ!」


 悲しいこと、辛いことを忘れる……シャンティのことも忘れるくらいに――


「おい、ハヴェル……寝ちまったぞ、アスティン。これも修行の内か?」


「いや、これでいい。見ろ、アスティンの目元を……ここに来る前に泣いてたんだろ。酒でやられて寝ているのに涙をずっと流してる。こいつに厳しいことなんて出来ねえよ。そうだろ?」


「……あぁ。だが、俺らは王命に従わなければならない。修行って言っても、強さの事では無く……」


「そうだ。内面的なことだ。それが一番辛いぜ……」


 子供の時からハヴェルとドゥシャンに懐いてきた俺。見習い騎士だけど、強さはすでに副団長クラスになっていたということを父様に聞かされた。心が優しい自分。それは昔から変わっていなかった。


 その部分を少しでも改善させるために、ハヴェルとドゥシャンは呼ばれた。男の騎士は女騎士よりも言葉は荒いけど、仲間意識が高い。恐らくそこを見込まれたんじゃないかな。


 いらっしゃいませ――


「おい、アスティン。ここで寝てると風邪を引いちまうぞ……う? あ、あなたは……」


 眠ってしまった俺を起こそうとしたハヴェルたち。その時、彼らが話したこともない意外な人が、店に来たことに驚いていたみたいだ。


「……眠っているのか?」


「はっ!」


「では、ふたりは先に帰ってよい。我がこやつを見ておく」


「お、恐れ入ります! し、失礼致しまする」


「ぅ……シャンティ……」


 俺は酔ったまま、無意識に彼女の名前を呟いていた。そこにいることも知らずに。


「泣いていたのか。そうか、やはり見られていたか。許せ、アスティン。私とアレはすでに王女によって、婚礼を済ませている。だが、お前に伝えていいか迷った。その上、帰還してすぐに命じられたことは、お前と会ってはならぬことだった。だからこその態度を示した……すまない、すまないな、アスティン……お前も、ルフィーナ王女の事も大好きだ。お前と旅した6年の歳月は絆だ。もう、私もカンラートにとっても、お前たちは大事な弟、妹のような存在なのだ。涙を流させてすまない、アスティン――」


 あれ――シャンティ? わわ、額にキス……? あぁ……でも、優しい口づけだなぁ。だから好きになったんだ。シャンティ……好きだったよ。僕はあなたと出会えて良かったです――シャンティ……

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