25.守護騎士への道
25.守護騎士への道
「ねえ、カンラート。アスティンはどの辺りにいるのかしら?」
「ん? あ、あぁ……恐らくは最初の試練が課せられる国にいるはずだ。時々キミはアスティンのことを心配になるようだが、彼のどこに惹かれたんだい?」
「あら? もしかして妬いてくれてるの?」
「それはそうだろう。すぐ傍に俺がいるにも関わらずに他の男の名を口にするのだからな」
「うふふ……あなたに妬かれるのもいいモノね。アスティンはとてもいい子なの。決して悪い心を持つことのない素直で真面目な男の子。ちょっと頼りないけれど、挫けない心と強い気持ちを秘めている人。そして誰よりも人の為に想ってくれる……そういう人なの」
「ふっ、キミにそこまで想われるなんて、幸せ者だなアスティンは」
× × × × ×
「見習い騎士アスティンとわたくしは、代々の王が眠る墳墓の地へ赴きます。そこへは、わたくしとアスティンのみで立ち入らねばなりません」
「はっ」
いよいよ僕はフィアナ様との試練に臨むことになった。それなのに、シャンティは納得のいかない表情を浮かべているみたいだ。
「フィアナ王女殿下。我も供をすることは許されぬのでしょうか?」
「ええ、シャンタル。多くの魂が眠る死者の地は多勢で行くことを良しとしておりません。見習い騎士を思いやる気持ちは汲みたく思いますが、どうか見守りをお願いするわ」
「ですが、墳墓の地には彷徨う死者がいるという伝えを聞いております。アスティンでは貴女様をお護り出来ないやもしれませぬ。それでも定めに従わねばなりませぬか?」
「それを願うわ」
「……承知しました。では、王女殿下は出立の準備をお願い致します」
「それではアスティン。外門にてお待ちしておりますわ」
「ははっ」
どうしてシャンティはそんなにお止めしようとしたのだろう。
「アスティン。出来ることなら傍に付きながら、試練を乗り越えるお前をこの目で見たかったのだが、王女殿下の覚悟には従うほかない。付いてやれないのが残念だ」
「シャンティ。そんなに心配しなくても僕は大丈夫だよ」
試練が決まるまで結構な日数を要したこともあって僕は、シャンティにようやく剣の修行をつけてもらっていた。とは言え、あくまでも動きのみであって手合わせをしたわけではなかった。
「アスティンには基本の動きを教えた。だが、実戦となると勝手が違うと感じるはずだ。いいか、お前には私が初めて使用していた剣を授ける。もしもの時はその剣を使用することを許可する。くれぐれも打ち勝とうとするな。そして、必ず生きて私の元へ帰って来るのだぞ!」
「へ? えっと、お墓参り……ですよね。ど、どうしてそんなに大袈裟にしているのですか?」
「……試練とはそういうものだからだ」
「分かったよ、シャンティ。必ず、生きて戻るから」
「アスティン、私からお前にお守りを付けてやろう。少し屈め」
首に何か掛けてくれるのかな? そう思って屈んだ僕は彼女の行動に驚いた。
「王女には敵わぬが……私もお前を想っている。これはその証だ。受け取れ」
何をされるのかと目を瞑っていると、額に感じたのは彼女の口付けだった。この前の冗談といい、今回のこれといい……シャンティは僕のことを本気で心配してくれている。そのことを感じることが出来た。
「見習い騎士アスティン、墳墓の地へ赴きます」
※
リーニズ国・墳墓――
「アスティン、では参りましょう」
「はっ!」
ここがお墓……。石で出来た重そうな扉が何だか雰囲気を感じさせている気がする。
フィアナ様を先頭に中へ進むことになった。用意していた松明を点けないと、とてもじゃないけど暗すぎて奥へ進むことを躊躇させてしまう。
「フィアナ様、お足元お気をつけてお進み下さい」
「ありがとう。大丈夫ですわ」
確かにシャンティが心配になるくらい壁や石畳が朽ちていて、崩れてしまうんじゃないかと思ってしまう。
フィアナ様の傍を歩いていても、行き先の分からない僕は不安を抱えながらついていくしかなかった。
「……ここですわ」
フィアナ様が立ち止まった所は一つの部屋のようになっていて、確かに歴代の王達が静かに眠る墓が所狭しと並んでいる。
ここまで特に危険を感じることなく進んで来たので、僕は気を緩めていた。これが、最大の誤りだったと後で後悔することになる。
「では、アスティン。来た道を戻るとしましょう……」
「ははっ」
そして今度は僕が先に進むことになり、フィアナ様はすぐ後ろについてきている。
何だ~何にも起きないし、起きなかったみたい。これが試練だったのかな? 思わず笑みをこぼしながら、フィアナ様を見やると僕の気分とは別に、血の気を失ったかのような表情を浮かべながらただ黙って歩いていた。
「大丈夫ですか、フィアナ様」
「……」
どうしたんだろう? そう思いながらも、外に向けて歩き出そうとすると、何か誰かが前方から向かって来ているように見えた。
「あれ? フィアナ様。前から誰かが来ていますが、どうすればよろしいでしょうか?」
確かに誰かが僕の方に向かって、歩いて来ているけど城の誰かなのかな?
「……アスティン。盾を構えて……」
「え?」
「はっ、早くなさい!」
さっきまで気を緩めていたせいか、僕は咄嗟の動きが出来ずにいた。そして、気付いた時にはすでに僕は、身体に衝撃を受けていた。
「えっ」
持っていた盾は弾き飛ばされていて、僕自身も壁に追いやられているほどに、突き飛ばされていた。な、何が起きたんだろう……




