最弱と闇と光
あえて(幅広い投稿ペースだと)言ったハズだ!
投稿が少し遅くなった気がするので。すみません
「それで?結局、見せたい物ってのは何なんだよ?」
「正直なところ、時間がありません。なので、手短に説明します」
そう、校舎を歩きながら、リエルが言う。
「まず、これから皆さんにはアストさんと僕の共同で作った、とあるものを受け取ってもらいます」
「あら、それは楽しみね?」
「わあっ!?……って、なんだクピディか~。」
急な後ろからの声に、チュルネが驚く。しかし、声の主を確認すると、すぐにホッとした。
「今までどこにいたのじゃ?思えば先程から姿を見かけんかったのう」
「うふふ。少しお手洗いに、ね」
そう話しているうちに。
「ここです」
そうして着いたのは、一階の西廊下の突き当たり。つまり――
「――……ただの壁じゃねえか」
「違いますよ……コード・VAL」
そうリエルが言ったとき、目の前の壁に幾何学的な紋様が浮かび上がり、壁が消える。代わりに現れたのは、一階のさらに下へと続く、階段であった。
「こんな物があったんだね」
「壁。特殊。術式。幻影?(そこの壁は、特殊な術式で編まれた幻影だったの?)」
「少し違いますが……大体、そんなところです」
「それで、この下には何があるのじゃ?」
「…………」
リエルは何も言わず、ただ進み続ける。
特に話すこともなく、進み続けて。
――何処かに出る。
そこは、暗い場所に薄い青色の光が点々と光る場所だった。
「……おい、何も見えねえぞ?」
「……コード・VIE」
そうリエルが呟く。
その次の瞬間、暗かった空間に、眩しい程の光が照らされる。
そうして見えた空間には――
「何、これ……武器?」
レーネはそう漏らす。
そこは、広い部屋だった。その部屋の壁には、20個程の武器が置かれている。
大剣、短剣、刀、槍、銃、大砲や、中にはどの様な武器なのか分からないものまで、様々。
「まずは、皆さんに合わせた武器を受け取ってもらいます。恐らく、不備はまだありますし、改良の余地も探せば幾らでもあります。しかし、時間がありませんので、今は急拵えのこれで準備してもらいます。ではまず……レーネさん」
「ええ。私のは?」
部屋を歩き、ひとつの武器の前で止まる。
ガキン、とその武器を壁から外す。
「この大剣ですよ」
そう言われ渡されたのは、特殊な形をした大剣。通常の持ち手に加え、刀身の根本に丸い穴が空いており、そこにも持ち手らしきものが見える。
「これは……」
「レーネさん専用の武器です。ここにある武器は全て、皆さんに合わせて作ってあります。アストさんが思う性格の面、僕の調べによる能力の面と、戦闘の際のスタイルに合わせて作りました。皆さんにはこれを受け取ってもらい、明日までにモノにできるようにしてもらいます。できなければ、まあアメリカとドイツの軍勢に倒れるだけですが」
「……わかったよ、やってやる」
「まあ、できるでしょ。普段から戦闘訓練だってやってるし」
ウルファとチュルネの言葉に、全員が頷く。
夜空。月が照らす丘。
そこに、二人はいた。
「アスト君……そろそろ戻ったほうが……」
「んー、それもそうだな。すっかり暗くなっちまったし」
そうして、街に戻ろうとしたところで、アストが足を止める。
「あ」
「アスト君……?」
「忘れるところだった……どうせだし、アリスも一緒に来てくれるか?」
「え……?」
丘から、少し歩いた場所。
そこには、ポツリと佇む、墓があった。
「これって……」
「ああ。フィアの墓だよ」
墓石の下には、黄色の花が置かれている。
「これ……」
「もう、誰か来てたのか。……後から知ったけど、フィアは『マリーゴールド』ってゆう花が好きだって知ってさ。たまに持ってきたりするんだ。……変だよな。まだ子供だったのに、好きな花があるって」
「ううん……好きな花があるのは……変じゃないし……いいと思うよ」
「……ありがとな」
夜中。
アメリカ軍、浮遊戦艦軍団。
総勢500隻。内駆逐200隻、軽巡100隻、重巡100隻、戦艦50隻、空母50隻。無人艦載機総計1000機。
兵士総数10000人。
全艦、敵ヴィレッジェナード学院、巨大起動兵器に向けて行軍中――
「あーあ、前の戦争の最重要人物の息子だからってよ、流石に1万はやりすぎだろ」
「上の命令だ、従わないわけにもいかねえ。それに、芽は早いうちに潰しておくべきなんだろ」
「はあー。明日はデートの約束があったってのに、それもキャンセルだぜ、ったくよ」
「あんまり変なこと言ってんじゃねえよ。独房に入れられたくないなら、ヘタに口を開かない方がいいぜ」
「にしたって、もう少し遠慮したっていいだろうがよ。お前だって、明日は何かあったろ?」
「いいから黙って見てろ」
「……そんなドラゴンがいる訳じゃねえんだし、こんな空のど真ん中で警戒しなくたっていいじゃねえか」
最前列艦で警戒中の兵士二人が、そう会話している。
寒い中、する必要もないハズの警戒をしているのだ。
「はあ、さみーなあ。もうすっぽかしちまおうぜ」
「バカ野郎、そんなことしたら刑罰くらうぞ……ん?」
「どうした?本当にドラゴンでも来たか、ハハハ」
「いや……誰かいるな」
「はあ?マジかよどこだ?」
「ほら、ちょうど航路の真ん中に……」
「お、ホントだ。見た限りじゃ、翼がついてるな」
「ひとまず報告だ。警告するぞ」
「おう」
「警告する。我々は現在、世界に反逆せしヴィレッジェナード学院に進行している最中である。そこを避けろ。さもなくばこのまま行進し、引き殺す。繰り返す。我々は現在、ヴィレッジェナード学院に……」
夜空に響く、拡声器を使った声。
それを発する船の、メインブリッジ。
「ライト、照射します」
航路の中心にいる人物が照らされる。
「あれは……獣人族、それも悪魔種か」
「艦長、どうしますか?」
「……構わん。いくら悪魔種と言えど、浮遊戦艦を止めることはできまい。進め」
「分かりました」
ゴゴゴ、と船が進行を再開する。
青年は1人、呟く。
「彼らを殺させはしない。彼らは『希望』だからね。本来であれば僕たちが干渉することはないけど、今の彼らは未熟だ。だから君たちには、彼らが成長するまで――少し黙っていてもらうよ。それに、フィネアちゃんが心配だからね。ちゃんとできてるかな?これ、一応こっそりやらないとダメなんだけど」
青年は、ただ佇むだけだった。
そう――これからこの大艦隊に起こる出来事の最中でさえ、彼は指ひとつ動かすことは無かった。
同時刻、ドイツ軍。
彼らもまた同じように、空中に佇む人影を見ていた。
「ありゃ天使族か。艦長、どうします?」
「構わん。引き殺してでも進め。姫様が奴らの首を御所望だからな」
ゴゴゴと進む、ドイツ軍の浮遊戦艦軍団。
そして、空に浮かぶ『少女』が、天に向かって指を立てる。
「なんだ?」
「艦長、アイツ何か喋ってますけど。音声、拾いますか?」
「構うな。進め」
「了解です」
「え、ええ~!?全然止まる気配が無いよ!?せっかく考えた『カッコよさそうなキメゼリフ・第753号』を用意したのに!」
少女は1人、困惑する。
ただひたすら陽気に。
巨大な船が眼前に迫ろうとも、その雰囲気は変わらない。
いや、変わったと言えば変わった。そう、キメたハズのセリフがキマってなかった事に、少しばかり怒っている、というだけの。
「三日三晩、寝ずに考えたキメゼリフを……ええい、ならば!喰らうがいい――サアアアアアンシャイン!エクスプロオオオオオオオオジョオオオオオオオオン!」
変なポーズをキメながら、少女は叫ぶ。
――次の瞬間、光が全てを包み込んだ。
翌日。
ヴィレッジェナード学院、屋上。
そこには、アストのクラスの人物が集められていた。
「よう」
「よう、じゃねーぞアスト。テメェ昨日どこいってやがった」
「悪かったって、な?1円やるから」
「いらねーよ、ったく……」
そんないつも通りの、アストとウルファの会話。
だが、それを切る発言がされた。
「そろそろ、話を進めていいですか?」
そう、朝からリエルに、大事な話があると言われ、こうして集められたのだ。
「なんじゃ。具体的な軍の到着時刻がわかったのかの?」
「いえ……今朝、僕も驚きましたが……アメリカ軍が何者かによって壊滅的打撃を受けたそうです。それでいて、負傷者・死者は0名。何があったのかは分かりませんが……撤退を余儀なくされた、とのことです」
「ええっ!?それって、どうゆうこと!?」
そう言われ、チュルネが驚きの声をあげる。
「壊滅的打撃を受けながら、死者どころか負傷者もでなかった……変な話ね。被害状況の詳細はある?」
「レーネさんが気にするのも分かりますが……詳しい事は分かりません。途中で電波障害がおきて、見ることができませんでしたから」
「……リエル。ドイツ軍はどうなったのだ?アメリカが被害にあったのであれば、ドイツも被害に合う確率は高い。同じ目的を持っているのだから」
ニサムが問いかける。その回答は、漠然としたものだった。
「ドイツ軍は……分かりません」
「分からない……?」
「ええ。忽然と姿を消したんです。人工衛星をハッキングして記録映像を閲覧しましたが、艦隊がいた場所が一瞬光ったかと思えば、光が収まった時にはもう……アメリカについては、大艦隊がいたであろう場所が非常に――いえ、闇に呑まれたとでも言えるほどに、暗かったんです」
「ますます不思議だな」
「ええ。不自然とも言えるほどに」
ところ変わって、アメリカのとある王室。
「王よ、申し訳ございません!このような失態を……!」
そう頭を垂れるのは、昨夜の最前列にいた船の艦長。
その先には、アメリカの国王がいる。
「よい、顔を上げろ。こうなったのは、我の責任でもある」
「はっ」
「それで、何があったのだ?」
改めて事態の詳細を聞き出そうとする。
そして、ゆっくりと話始めた。
「……昨夜の事です。我々が進行するなか、ヤツは航路の真ん中に堂々と佇んでいました。再三に渡る警告を流し、尚も退かぬようでした……ので、強引に進行を続けようとした。……その時です。不可解な事態が起こったのは」
進行を再開し、謎の悪魔種を引き殺そうとした時。
突如、艦内にアラームが鳴り響き、赤く照らされる。
「何があった!?」
「エラーです!……航行関係以外のシステムが全てエラー反応を起こしています!これでは砲撃も何も……!」
「なにぃ……!?」
「艦長、緊急連絡です!艦に搭載されている武器が、全て消えています!剣も銃も、武器が忽然と……!」
「くっ……どうなっている?まさかヤツか!」
そう言って、船の前に佇む青年を睨む。
「空母から無人機が発進しました!悪魔種に突撃していきます!」
「なっ……バカ者!敵が一体何者かも分からんというのに……!」
「減速無し、現状況を考えれば武装は全解除状態……特攻を仕掛ける気です!」
「……!ええい、空母に通信はとれんのか!」
「通信機器も全てエラーを起こしていて、使用が不可能です!」
「くっ……!」
ただ見ることしかできない。
その結果を。
そうして、さらに混乱に陥る。
特攻を仕掛けた無人機――それが悪魔種に触れる瞬間。
闇に呑まれた。
そう表現する他に無かった。
「…………バカな……」
「な……何がどうなって……」
その時、艦長と呼ばれていた人間は直感的に理解する。
「……信号弾は撃てるか」
「え、ええ。それならばなんとか……」
「撤退だ。これ以上の進行は不可能。全軍に撤退信号を出せ……!」
「し……しかし、旗艦と通信もできないのでは……」
「さっさとしろ!受け入れられぬようなら、我が艦だけでも撤退する!これ以上は……命に関わるぞ!」
そう――死を理解した。
「は……はい!」
あの『闇』は、自分が知る『闇』ではない。
ただ暗く、黒く、光無き、虚無と絶望を表す空間……そのような『生易しいモノ』ではない。
あれは闇の名と姿を被った、『死』という概念そのものであると。
理解し、逃げた。
恥も外聞もなく、ただ必死に。
どうか、あの『闇』が――『死』が、追ってきませんようにと。
獣人族の惑星の、とある丘。
二人の人物の内の1人、ローブを着た男が遠くを見つめる。
メガネを着けており、顔は20代前半程度。ローブの隙間からは、派手な装飾が施された、黒い軍服が見える。
「ゼレオ様……」
「心配してるんですか?」
それを気にする、もう1人の女性。
同じくメガネを着けているが、ローブは被っていない。黒い軍服には装飾はほとんど無く、どこか落ち着いた雰囲気。
「ええ。やり過ぎないか、といった事ではありますが」
「――ハッ、むしろ俺としちゃあ、やり過ぎぐらいがちょうど良いんだがな」
女性の口調が変わる。
それを気にした様子も無く、男は続ける。
「それだと、こちらの仕事が増えるんですよ。正直に言って、面倒くさいですしね」
「テメエも言うようになったな――あの、天使の子のおかげですかね?」
「わかりませんが……フィネア様は天使ではなく――」
「あ、いえ!フィネア様の方じゃなくって――ったく、テメエは相変わらず鈍いな、べリア」
「鈍いと言われましても……何が何だか、分かりませんよ」
「……こりゃモテねえ訳だ。俺はコッチの専門じゃねえし、お前に任せるわ――ってええ!?ちょっ、待って……って、もう寝息が……うう」
「いつ見ても、大変そうですね。『完全分離型』の多重人格でしたか」
そう、彼女は普通の人間とは脳の構造が決定的に違う。
通常、解離性同一性障害とされるものは、完全に人格が入れ替わり、その裏にいる人格は眠っている状態……だが、この女性はその人格と会話する事が可能であり、天性の物である。
記憶や思考、感覚や神経すら別々に感じていると言っても過言ではなく、俗に言う『2人で1人』を地で行く。
しかし、2人分の感覚があれど身体は1つ。過去に一度、脳を過剰に酷使したせいで、長期に渡って意識不明となった。
「うう……本当ですよ~。変な所で強引に出てきたり、何か頼もうと思ったら寝てるし、目が覚めたらドッキリとか仕掛けてくるし……」
「ですが、楽しそうですね」
「なんやかんやで、生まれてからずっと一緒ですから」
そう、少し笑って。
「……でも、本当にやり過ぎないか心配ですね。ゼレオ様よりも、フィネア様の方が、ですけど」
「ええ……ゼレオ様は、こういった時はしっかりしてます。が……問題はやはり、レラージニの言う通り、フィネア様でしょうね」
「フィネア様、力の制御とかしませんからね~」
「まあ、そうなったらそうなったで、ゼレオ様からの説教がとんでいくだけです」
「あ、あはは……」
男――べリアは、空へ向き直る。
遥か遠くの星、見えずとも視線の先に存在する――地球を見つめて。
まーた謎を増やすだけ増やして終わるんですよ。
ところでお気づきの方もいらっしゃるとは思いますが、1話約1万文字で作っております。
切れの良い数字ならば、作りやすいんじゃないかな、と。
まあ、結局その文字まで持っていくのが大変なんですが。今更止めないですよ。時間ない人申し訳ございません焼き土下座でも何でもしますから。
では、また。