い
「えっと今日は…酉山さんだっけ」
封筒に入っていた物を無造作にテーブルの上にあけた少女は、目を瞑ると狩る区域を吸い込んだ。
「ふ〜ん。男は二股かけてて、デートDVの前科あり。あらら…孕ませてんじゃん。どーしたらこんな男に引っかかるのかな〜」
文句を垂れながらも頭に浮かんだヴィジョンをさらさらと紙に書いてく。
そう、これが少女の仕事である。
一段落した後は午後の紅茶の時間。
いつもなら、シスコンの兄が淹れてくれるけど、お仕事じゃね無理っしょ。
「ぶあちっ!」
ふうふうと何度もロイヤルミルクティを冷ましながら、ようやく呑める温度(人肌まで温くなった)の物をゆっくりと口に含んだ。
じんわりと温い液体が食道をするすると滑り降りるように胃に落ちてく。
…この感覚、快感!!
「にしても、ほんとうに猫舌って嫌よね。この微妙な温度調節が毎回出来たら最高なのに!」
少女の感覚はどこまで行っても斜め上。そんな少女の言葉とは裏腹に申し訳無さげに一筋の湯気を上げるのは、さきほど少女の舌を火傷させたロイヤルミルクティ。
私、稲生 遥18歳独身。
高校生。そして自他ともに認める猫舌&猫肌。
べ、別に私だって好きで猫舌してるわけじゃない。物が熱すぎるから、すぐに舌を火傷しちゃうんだけなのよ。ほんと、毎回友達と茶店に行く度に彼女達からも呆れられるくらい。
ちなみにどれだけの猫肌かというと…風呂は26度、出されたスープも人肌くらいがベスト。
猫舌で猫肌な私は平凡な人生を希望中。普通の高校生なんだけど、私にはもう一つの顔がある。
占い師とは言っても、遥の場合は水晶や星座などは使わない。その人との繋がりを示す物に軽く触れただけで見える遠視と呼ばれるものだ。
たまに警察や探偵事務所から仕事を依頼されるほど腕は確か。
丁度この日も知り合いの探偵事務所からの依頼があって、依頼人のお嬢さんの恋人と言われる人の素性を調べてたところ。
別に探偵事務所でも結果は調べれば出て来るんだろうけど。依頼人が提示した日数が短すぎた。
そうなるとね〜毎回遥のところに依頼がまわされて来る。
この能力は友達にはまだバレてない。
こんなのがバレたら、テストでいい点をとってもズルをしたなんて言われるのが関の山。
一番良いのは、も ち ろ ん 『黙ってた方が良い』に決まってる。
これが平々凡々に生きるコツってヤツっすよ!




