信頼とは
日曜の朝、透達は櫻濱駅の南改札口にいた。周囲は私服の者もいれば不幸にもスーツ服の者が無表情で憂さ晴らしにICカードを改札に叩きつけている不気味なシーンもある。売店の類はなく、柱に広告が貼ってるだけでやや殺風景な場所だった。照明は薄白い寒色系で、洞窟のような涼しさだった。
透は駅で買った櫻濱ウォーカーを読んでいた。写真と見比べて、おおまかにページを予想する。するとちょうど喫茶店の特集が見開きで収録されている。女子のおすすめスイーツに見出しにショートケーキが写真付きで載っている。
「これは賭ける価値はあるかな」
ページの端を折り畳んで目印にする。
思わぬ幸運に透は微笑んでいるが、マルコは逆に落ち込んでいた。
「やっぱり危なくないですか? 僕と瑠璃さんもそっちに行ったほうが良いんじゃないですか」
閉じた本をマルコの頭にぽんと乗せる。
「さらに誤解を招く可能性だってあるんだ、これ以上事態をややこしくしたくないしリスクは少ないほうが良い」
「でも……」
「男に二言は?」
「……ありません」
「天は二物を」
「与えません?」
「いえーい♪」
透は手のひらを見せてハイタッチの合図を見せる。
「……」
マルコは納得行かなそうに手のひらを合わせた。
『下らないわね……』
「カレンさんもいえーい♪」
『どうしろって言うのよ』
カレンは依然釣れない態度だった。まだ不機嫌なのかもしれない。結局昨日の不機嫌の原因はわからないままだった。
「いつまでトゲトゲしてんの、カルシウム採ってる?」
『別に。あなた達にできることはないわ』
「そーですか」
思考の透視で不機嫌の理由を探れないし、表情や仕草でどれだけ苛立っているのかもわからない。深入りはこの辺にしておく。
ガラケーを開き、時間を確認する。そろそろ作戦開始の時刻だ。
「時間だよ、気を引き締めて行こうか」
「僕は本厚義に」
「私はみなと櫻濱に」
少し見合ってから二人は、
「……」
「……」
無言のハイタッチをした。
息は合う。
お互いを信頼はしているが、やはり不安は拭えない。少しでもお互いの信頼を得ようとするための内気、かつ陽気に奮い立たせた。




