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See you again  作者: 田村ケンタッキー
瞬間移動能力者 永谷瞬の虚勢

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スケアリー・モンスター8

 望めば手に入る。ちょっと頑張れば手に入る。天国に住める私たちは特別なんだ。

 そんな無敵感、選民思想すら持ち始めていた天使達だったが、幸福な時間は思いがけぬ形で終わる。

 蝉すらも鳴くのを休むほど猛暑の日。そんな日でも皆が集まる。瑠璃は出欠を取る。小見山は勿論として、あまり輪に加わろうとしないも端っこで胡桃達がいる。更には勉強で忙しく欠席率が高くなっている広見もいた。そして最後に、瞬を数える。

 数え終わると出欠の報告を行う。これも瑠璃の仕事だ。


「ボス、今日は全員集まってるっす! こんな暑いのにも関わらずっすよ!」


 小さい奇跡にはしゃぐ瑠璃だったが、


「そりゃあ、あたしが直々に来るように頼んだからな」


 さも当然と瞬は凛としていた。


「さすがボスっす! 皆が認めるボスっす!」


 おだてても、瞬は長い髪を首の後に回している。暑いのなら切れば良いのに、髪型はいつも束ねず下ろしたままだ。

 まだ、瑠璃は気付かない。髪の流れ一本一本を追うのに夢中で目の前の憧れの女性がほんの刹那にもの憂げにしてても盲目だった。


「今日は皆に話したいことがあって呼ばせてもらった」


 玲瓏とした声が人の散開した倉庫に響く。

 その一声で、学校の授業でも集会でも成し遂げられない静寂が生まれた。

 誰もが聞き零しのないように耳を澄ませた。敬虔そのものだった。

 しかし、それも今日までだ。

 望めば手に入る。ちょっと頑張れば手に入る。天国に住める私たちは特別なんだ。

 そんな無敵感、選民思想すら持ち始めていた天使達だったが、幸福な時間は思いがけぬ形で終わる。


「あたし、永谷瞬は今日を以ってスケアリー・モンスターを卒業しようと思う」


 天国を統べる神の、瞬の一言で終わる。

 勿論全員が必死になって止めた。泣いてまで止める者もいた。スケアリー・モンスターの中心どころではない、象徴たる人間だ。

 だがしかし、決心は変わらなかった。


「来年から高校生になるんだ。いつまでもここにはいられない」


 最もな話だった。中学生の集まりにいつまでもOGがいる不自然さは拭えない。

 道理に沿えば判断は正しいだろう、しかし道理とは人の数だけある。


「それは学校の話っす! ウチらには関係ない話っす!」


 瑠璃が一番に反抗する。それも論理的には間違っていなかった。この集団の枠、共通点は超能力者であること。その超能力も歳を重ねれば消えるニキビではなく成人の超能力者は勿論とし、最年長だとイギリスにはひ孫のためにスコーンを焼くのが趣味の90歳を超える高齢の透視能力者もいる。

 腰が曲がっても、死んだ後でも繋がっていたかった。天国を築き上げた功労者としては二番目だが、この場所を一番に愛していた。掃除などの雑務は率先して請け負っていた。出欠の際も誰に言われるでもなく連絡のなく遅刻、欠席する者にはしつこく電話を繰り返していた。うざがれていても分かって行っていた。

 そう、彼女は一生懸命だった。道理も条理も、時に人の気持ちすら目もくれなかった。


「いつまでもいて欲しいっす! ウチらにはボスが必要なんす!」


 しかし皮肉にも、その反論が反証となる。


「今のここに、あたしは必要か?」


 予想外の反撃に、瑠璃は面食らう。


「……わ……わからないじゃないっすか!? どこかに、ウチらの敵が潜んでるかもしれないじゃないっすか!」

「お前と付き合って長いけど、そんな敵が今までにいたか? きっと、いないんだよ」

「わからないっす! どうしてそう言い切れるんすか! ボス、教えてほしいっす!」

「どうしてそんなに熱くなるんだよ、今生の別れじゃないんだから。市内の高校に進学だぞ?」

「違うんす! そういうことじゃないんす!」


 片時も離れたくなかった。ただでさえ、大気圏外にいるような人だから繋がりがこれ以上薄く、細くなっていくのが堪らなく寂しかった。

 ボロボロと涙が落ちる。これも身を知る雨だった。


「お前の気持ち、嬉しいよ。たまに遊びに来てやるからさ」


 慰めに頭を撫でてくれる。

 間違っている、全然わかっていない。たまに、ではダメなんだ。いつもじゃないとダメなのに。

 撫でてくれる手を力いっぱいつねりたいが恐れ多くて出来なかった。

 離れていく手を捕まえることも出来なかった。

 最後の砦は沈黙し、改めて、瞬は全員の前に凛として立つ。


「大事な話はまだある。次のボスについてだ」


 次のボスだと? そんなものは存在しない。ボスをボスだと決めたのは自分だ、なのにボスが勝手にボスを決めるなんておかしい話ではないだろうか。

 そんな我儘が浮かぶも無気力化してて言葉に出来ない。全てがどうでもよくなりつつあった。


「次のボスは胡桃に頼もうと思っている。異論はないか?」


 胡桃だと? ありえない。よりにもよって粗忽者で馴染もうとしない排他的新参者が後任だと? ボスのようなカリスマも持っていない。


「そんなボスはボスですよぉ。今まで通り胡桃でいいですよ」


 新参者のくせに一丁前に空気を読んだか、当然の話だ。

 スケアリー・モンスターの設立にも関わった二番目の功労者が不在のまま、引き継ぎの話は進んでいく。外国語の映画を吹き替え字幕無しで見るかのように、まるで頭に入ってこない。夏だというのに蝉の鳴き声も聞こえなかった。

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