スケアリー・モンスター7
他にも珍しいパターンがあった。
胡桃とその他との出会いも無二のケースに入る。
彼女らと出会い、交流が始まったのも偶然が重なったからだ。
ある日、瑠璃が街中を走っていた。小見山や瞬との大事な約束があったが、カメラを家に忘れたことに気づき引き返したら盛大に遅れてしまった。
仕方なしに普段は使わない裏道を使っていた。裏道は治安が悪く、素行の悪い不良のたまり場となっていた。善処はしたものの、運悪く、喧嘩の現場に遭遇してしまった。そこには未来の仲間となる胡桃、犬見、雉沢、猿若が喧嘩に参加していた。
不幸か、幸いか、喧嘩はすでに終盤だった。4対3と彼女たちのほうが人数が多く超能力があったが決め手にはならず胡桃たちの劣勢だった。胡桃以外の三人は地面に横たわり、唯一立ち続けている胡桃もひどい有様で右瞼を腫らし、額から血を流している。
「そこに突っ立てる奴、こいつらの仲間か」
きっとまだまだ幼稚なほうだが、信じたくはないけれど存在する裏世界を目の当たりにし、瑠璃は逃げ遅れてしまった。
「ま、まさかっす……全然知らない人っすよ……ほら、制服も違うし」
瑠璃の制服は青地のブラウス。その上に校章の刺繍があるベストを着ている。
一方の胡桃たちは白いポロシャツだ。顔なじみでもなんでもない赤の他人だったが、彼女たちの左肩にはピンクとシルバーを織り交ぜた肩章があった。
「あれ、そのピンク色のって」
「違うんだったら今すぐ消えろ! 殺すぞ!」
「は、はいっす……御機嫌ようっす……」
瑠璃はその場から逃げた。路地裏を出るとすぐに瞬に連絡をした。
「ボス、喧嘩っす! 仲裁して欲しいっす!」
「巻き込まれたのか?」
「違うっすけど、喧嘩で負けてるほうが超能力者なんすよ!」
「……わかった、すぐに向かう。場所を教えてくれ」
数分で瞬が喧嘩に介入し、リンチは免れた。
小見山に応急処置されながら胡桃は事の発端を話す。
「あいつらがふっかけてきたんだよ。肩章が目障りだって」
「目の敵にされるかもしれないのに何で付けたのかなぁ」
透視能力者の小見山は無鉄砲さに本気で呆れる。
「超能力者なんだから付けて何が悪い」
「それは……そうだけど」
「だけどしばらくは外す。弱い奴にこの肩章は相応しくない」
「それはそういう意味のものでもないんだよ……?」
その後、胡桃たちは自らスケアリー・モンスターへの加入を申し出た。と言うよりも瞬に忠誠を誓い、隷属したと言ったほうがしっくり来る。
こうして様々なトラブルと直面するもメンバーは増え続け、県央(相撲市を除く)をカバーする規模にまで広まった。当初3人だったメンバーも20人にまで膨れ上がった。
組織の空気は安寧としていた。皆が超能力という共通点があり、心を許し合っていたからだ。
しかし僅かに溝があった。胡桃とそれに与する三人は瞬以外とコミュニケーションを取ろうとしなかった。瑠璃と小見山には多少の恩があったので連絡先は交換したがそれだけだった。それでも安寧秩序を乱すようなことはしなかった。むしろ貢献することもあった。
集会場所となっている空き倉庫、あれは胡桃が見つけてきた。人数が膨れ上がる前は駅前の喫茶店、カラオケと会場に広さと料金を求められるようになっていった。公園で集まれば近隣の住民に通報されかねない。そう悩んでいた時に、グッドタイミングで、いつの間にか見つけてきたのだ。しかし問題があった。
「バレたら、警察沙汰で済まないっすよ」
超能力者の集団が不法侵入、及び不法占拠となれば全国デビューは間違いない。
「大丈夫大丈夫、絶対ばれないから」
いくら指摘しても胡桃はその一点張りだった。その根拠は未だに謎だ。
「ボス、試しにしばらくは少人数で足を運んでみたらどうです? それだったら大騒ぎにはなりません」
「それはそっすけど……」
「お前には言ってねぇだろ! ……ねえ、ボス。お願いします、この通り!」
プライドを捨てて土下座までしだす始末。必死に懇願してくるからか、ボスは頭
を振らなかった。
「わかった。そこまで言うなら同行しよう」
「ボスが行くんならウチも行くっす!」
「瑠璃ちゃんが行くなら私も」
「お前らは来んな!」
「まあそういうな、胡桃。この二人なら大丈夫だから」
「大丈夫ってなんなんですか……まあボスがそういうなら従いますけど」
従順な態度を見せるも二人に向ける目つきは悪かった。
その後何度も倉庫に通うも胡桃の言う通り通報どころか通行人すらほとんどいない穴場だった。程なくしてそこはスケアリー・モンスターのアジトとなった。




