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See you again  作者: 田村ケンタッキー
瞬間移動能力者 永谷瞬の虚勢

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スケアリー・モンスター6

 勧誘は驚くほど順調に進み、一ヶ月で10人にも膨れ上がった。

 順序はまず小見山と瑠璃が学校の裏サイト、その他SNSで超能力者の疑惑を掛けられている者、またすでに知れ渡ってしまっている者を探す。裏サイトでは教師やクラスメイトの悪口が飛び交っている。今の時代なら閉鎖的に集団で交信できるツールが普及しているために利用者は減ってきてはいるが一部に不特定多数に晒す目的で利用される場合もある。

 しかし、やはり、あくまで欲しい情報は一部のために徒然なるままに連なる罵詈讒謗を嫌でも見なくてはいけない。


「うわぁ、エグいっす……見ず知らずとは言え、あんまりっす……」


 固形物と水を分ける鰓耙に似た器官を持たない瑠璃が早々に音を上げた。彼女は小見山以外との交友は極端に薄く、輪を広めようともしてこなかった。広げなくともこれまで日常生活に大きな支障はなかったし、何よりこういうドロドロとした面倒事を避けたい狙いもあった。

 音を上げるも席は立たずにブドウジュースを飲んでは気力を回復させつつ検索の手を止めない。しかしそうなると彼女のお腹は次第に限界に近づいていき、


「うっ……トイレ行ってくる……す」


 ここでドクターストップを出したのが小見山だった。


「瑠璃ちゃん、休んでていいよ。後はやっておくから」


 彼女は発言通りに、有言実行で、リサーチを続け、指示にも予定にもリストアップまでこなした。


「おぉ、あのヘドロからよくもまあこんなに……」


 感心する親友に、


「そう? 簡単だったよ」


 屈託のない笑顔を親友は見せた。


 勧誘に対し、様々な反応があった。

 すんなりと快諾してくれる者もいた。校内には超能力者が1人だけで相談どころか悩みを共有することも叶わず、いつかは公にされて日常生活が送れなくなると心細くしていたらしい。

 その逆の拒絶する者もいた。当然だろう、初対面でさらに見たこと聞いたことのない集団を信じるはずもなく目をつけられたとなれば怯えるはずだ。

 特に手痛く拒絶し、再度会おうとしても全力で逃げる少女がいた。その少女の名前は広見。超能力は小見山と同じ透視能力だった。歳は二人よりひとつ上だった。


「瑠璃ちゃん、すっごく拒否られたけど、まだやる気?」

「当然っす! 広見さんは絶対にスケアリー・モンスターに入るべきっす!」

「あんな気丈な人だったら大丈夫じゃないかな」

「そんなわけないっす! 透視能力者だって、すでに学校中にバレてるんすよ!? 虐められても何も仕返しもできないんすよ!」


 広見という少女にこそ、スケアリー・モンスターに加入すべきだと瑠璃は信じて疑わなかった。

 

「また話聞かないんだから……ボス、どう思いますか?」


 小見山は瞬に意見を求める。


「お願いっす! ボスが来てくれれば、あの石頭も絶対に首を縦に振ってくれるっす! ヘドバンしてくれるっす! ロックだけに!」

「……わかった。今度一緒に行こう。半ば強引でも話を聞いてもらって、それでもダメだったら諦めよう」


 広見を捕まえるのに労は取らなかった。初対面の瞬がこっそり近づけばあっさりと捕まえられた。


「離しなさいよ、変質者ども! ふつーにしつこい! 噛みつくわよ!」

「変質者じゃないっすよ。ちゃんと自己紹介したはずっすよ」

「変な口癖! ふつーじゃないわ!」

「変な口癖じゃないっすよ。ちゃんとした個性っすよ」


 話が進みそうにないので小見山が割り込む。


「広見さん、私とそちらの人は変質者でも変な口癖でもないから話を聞いてほしいの」

「そりゃないっすよ、こみやん……」

「変なアダ名で呼ばないで、変な口癖の変質者さん」

「今更っすよ……」

「何よ、あんたたち……用事ってそんなつまらない漫才見せに来たの……」


 広見は警戒を解かず、二人を睨みながらも逃げる隙を伺っていた。


「違うよ、ちゃんと話を聞いて欲しいんだ」


 瞬が掴んでいた手を放して持ち変える。広見は社交ダンスのような綺麗なターンで、瞬と向かい合わせに見つめ合う。


「あ、あれ、イケメン……?」


 両手で顔を隠す広見。それを壁にまで追い込む。


「あ、知ってるっす、これ、壁ドンっす」

「生で初めて見た……」


 二人は傍観する。昨日までとまるで逆の好感触だし、下手に手を出さないでおく。面白がっているわけでもない。

 というか完全に二人だけの世界になっている。たぶん大声で歌を唄っても認識されない。


「あたしは真剣に広見、お前を心配してるんだ。今、お前は学校で孤立してるんだろ? 本当は寂しくて怖いんだけど、でも弱音を吐いてるところを見せられない……そうだろ?」

「……は、はい」


 確かに事実そうだった。広見はそれなりに能力が高く、クラスの中心人物で、友達も多かった。しかし信頼して透視能力のことを打ち明かした途端、その秘密は学校中に広まった。そうなれば元の交友関係なんて築けられない。彼女は孤立を選ばざるを得なかった。


「あたし達はお前の力になりたいんだ、ダメか……?」


 二人の顔が近づく。吐息がかかるほどまで近い。


「……だ、ダメじゃないです」

「それじゃあ入ってくれるか、スケアリー・モンスターに」

「……喜んで」


 その返事を聞いて、瞬は壁から手を離した。広見は残念そうな顔をしている。


「自己紹介がまだだったな。あたしの名前は永谷瞬、よろしくな」

広見熙熙ききって言います……ぜひ下の名前で呼んでください……」


 無敵要塞がここに陥落。


「こみやん、これから勧誘する時はボスと一緒に行きましょうっす」

「うん、それがいいと思う」


 それから瞬を同行させたおかげで成功率は100%まで上昇した。

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