スケアリー・モンスター5
連絡先を交換し、学校へ戻る最中。
「名前、決めなくちゃ」
そう言い出したのが瑠璃だった。
「グループ名?」
「そう、グループ名」
「いるかな……」
「いる! 今後の活動に絶対必要!」
「そんなことより、大丈夫なの? いろんな人と会うってことはたくさん会話するんだよ」
初対面の人間との会話は苦手だ。極度に上がってしまう。
「そだよね……自他共認定の陰キャラだからね……」
「話し方から変えてみるとかしてみたら? もっと明るくてとっつきやすいような……」
「あ、それ、いっすねー、こーみやん♪」
「うわぁ、チャラいしウザくなった」
「それは言わないで欲しいっすー。とりあえず、これから無期限のお試し期間っす」
参考までに言うと一週間ほどでこの口調が癖になり、抜けなくなる。
「会話術より名前っす」
「そうだね、名前……超能力同盟?」
「普通……っす」
「今口調忘れてでしょ」
「漢字はダメっす、カタカナにしましょっす」
「というか、ボスを交えて決めたほうがいいんじゃないかなぁ」
「草案っす。後でボスに決めてもらうっす」
「カタカナ……英語か……」
「そうだ、スケアリーモンスター教ってなんてどうっすか」
「覚えたての英語使うの止めない? それと怪しい宗教みたいだよ」
「それじゃあ、スケアリーモンスターっす」
「スケアリー・モンスターズか……まあ、それでいいんじゃない、名前なんて何でも良いよ」
二人とも聞き間違いが起きていることに気付かない。
「そういえば、瑠璃ちゃん、今日はありがとうね」
「何のことっすか?」
「助けに来てくれたでしょ、そのお礼まだだったから」
「ウチは何もしてないっすよ、助けてくれたのはボスっす」
「二人が助けてくれたんだよ。ボスが助けに来てくれた時に言ってたの。本当に必死だったって。感謝するなら親友にしろって」
「当たり前じゃないっすか、親友なんすから。……それとウチも謝らないといけないっす。昼休み図書館のこと、謝りたいっす。つい嬉しくて、こみやんの気持ち全然考えてなかったっす」
親友を全世界に発信して自慢したかった。こんな素晴らしい親友を教えたかった。
「そっか……瑠璃ちゃん、そんなふうに考えてたんだ……私、最低だよね……勝手に勘違いして、平手打ちまでして」
「いいんすよ。本気で怒ってくれなかったら、たぶん今頃本当に配信してたところっす。親友に取り返しの付かない傷をつけていたところっす。こみやんは何でも言ってくれるところが好きっす。勘違いや先走りそうになると必ず止めてくれて、そればかりか応援もしてくれる」
瑠璃は小見山の手を包んだ。同い年なのに大きさに差があった。
そして天高く上げる。
「さあ! 明日からいろいろと忙しくなるけど頑張るっすよ!」
「うん、私、瑠璃ちゃんのためなら何でもするね!」
「そこはウチのためじゃなくて、皆のためにっすよ!」
手をブランコのように振りながら二人は歩いて行く。息が合わず、二人の肩は前後に振れる。
暮れなずむ街。瑠璃は一番星を見上げ、小見山は繋がった影を見下げる。
二人は同じ場所を歩いていたが同じ物は見ていなかった。




