スケアリー・モンスター2
家に帰った後も夢心地のままで制服を汚したことを母親から咎められるも耳に入っていない。
机の上のインスタントカメラが視界に入るとあの時の光景が蘇り、思い出し笑いをしてしまう。
「えへ、えへへへへへ」
無傷で勝ち取ったことが嬉しいのではない、黒髪の少女が格好良く助けてくれたことが嬉しかった。彼女の制服は見覚えがある。自分の所属とは異なるが近所の中学校の制服だ。会おうと思えば、いつでも会いに行ける。
「えへへへへ、いい子いい子」
素晴らしい出会いに巡りあわせてくれた道具をまるで飼い犬のように愛撫する。
同時に彼女を撮影しない自分の不甲斐なさに腹立たしくなる。また会えるだろうが、あの瞬間や感動はあの時限定だ。非常に惜しまれる。
気を紛らわそうとカメラを構えた。瞳を閉じて、彼女を想う。
瞳を閉じればいつでも彼女に会える。それぐらい病的に魅了されていた。
瞳を閉じながらファインダーを覗く。そして瞼の裏に住んでいる彼女を撮影した。
「あははは、もったいなー」
冗談のつもりで撮った写真には自分の部屋、ではなく、どこかの部屋で勉強する、あの黒髪の少女が映っていた。驚いて大げさに身体を動かしてしまい、足の小指を机にぶつけた。迫に腹を殴られた時より痛い。
今の痛みからして、夢の中ではない。写真だけが夢の中から次元を超えてきたようだ。
急に怖くなり写真を机の引き出しに入れて、さっさと寝ることにした。
明かりを消して、布団を被る。
「……」
明かりを点けて、引き出しから写真を取り出し、枕の下に敷き、両手を合わせてお祈りする。
「夢の中で会えますように」
今度こそ眠る。
宝船のように枕の下に敷くおまじないをするも肝心なときに近年稀に見る快眠っぷりで起床まで一切の夢を見られなかった。




