相容れない2つの能力
途切れ途切れの会話の後に注文した飲み物が彼女たちの席に運ばれる。
瞬の前には銅のマグカップに入ったアイスコーヒー、マルコの前には透明なコップに入ったアイスカフェオレが置かれた。そして透の前には陶器製のティーポット、ティーカップ、ティーストレーナー、ミルクを並べられた。
「……ん?」
透が疑問符を頭の上に浮かべているうちに並べ終わった店員は、
「ショートケーキはもうしばらくお待ち下さい。ごゆっくりどうぞ」
すたすたとキッチンの奥へと消えていってしまった。
「……」
透は無言で腕を組んで茶道具たちを見下ろす。
「……ティーカップが空だ。ティーポットから注ぐのは明白だけど、この茶漉しみたいなのは一体どこで使うんだ……むむ、よく見るとティーカップの縁に乗る仕組みになっている……つまりこれを使うのは飲むとき……?」
「透さん、推理が口から出てますよ……」
「……こういう店はじめてだから何もかもわかんない……ドレッサーに置いてある化粧道具みたいに興味あるけど高そうで恐れ多くて触れないみたいな……これ、私なんかが触ったら壊れない?」
「考え過ぎだと思います」
「というかなんで私だけセルフサービスなんだよ! いじめか!? 私は望まれない客なのか!? それとも焼肉か!?」
「考えすぎですって!」
「別に他の店でもあるよ。ミルクティーをセルフで作らせるところ」
「……それじゃあなんでカフェオレはセルフじゃないの」
「そこまではあたしも知らない」
気後れしていると瞬が道具一式を自分の前へと引き寄せる。
「貸してみ」
まずはティーカップに乗ったティーストレーナーを外し、ミルクをちょこんと注いだ。次にティーストレーナーを戻すと、そこに紅茶を注いでいく。すると紅茶と一緒に茶葉が流れ出てきて金網に着地した。
「緑茶の急須と違って中に茶漉しが入ってないんだ……」
「だから飲むときに使うなんてトンデモナイ勘違いしたんですか……」
出来上がったミルクティーを透の前に置いた。
「砂糖は好みで入れれば良い」
「ほうほう……」
ひとまず、砂糖をティースプーン1さじをこぼしてゆっくりと混ぜるてから恐る恐る口に運ぶ。ゆっくり、ゆっくりとティーカップを両手で丁重に運ぶ。
「……猫舌なの?」
「いえ、透さんの舌は出来立てのグラタンもばくばく食べるほど頑丈ですよ」
「あぁ、そう……」
二人の会話も耳に入らないほど透は集中していた。
ようやくティーカップが唇に触れ、隙間から口内に熱いミルクティーの味と香りが広がっていく。
(こ、これは……!)
さらに傾けて流れを急にする。紅茶が押入れられると喉が口で話しているかのようにゴクゴクと音を鳴らせる。
あっという間にティーカップは空になる。
マイクロファイバー製タオル並の吸収力を見て、席を共にしていた者達は絶句する。
そんな中、透は満面の笑みで言う。
「うまい! おかわり!」
おいしいミルクティーを摂取した今の彼女は場の温度にも空気にも飲まれない気概を取り戻していた。だがしかし、場の空気を読む気質は見失っていた。




