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See you again  作者: 田村ケンタッキー
瞬間移動能力者 永谷瞬の虚勢

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人類唱歌

 土曜日の午前十時。学校が休みである今日は制服ではなく、私服に着替える。周りに目立つと悪いのでフードのある半袖のパーカーを着る。そして制服ではないのでスカートを履く必要がないのでズボンを履ける。一週間のうちのほとんどをスカートを履かなくてはないけないのだから気苦労が絶えない。そのため休日はなるべくズボンを履いて心の英気を養っている。

 鏡の前で仁王立ちする。慣れた下半身の密着感にほっと一息。


「これです……これなんです……足はスースーしてじゃダメなんです……」

『別にスカートでもいいんじゃない?』

「よくありません」


 着替え終わると外出することを透にメールで伝える。ただし行き先は全くのデタラメで、近所の図書館と書いた。まだ寝ていると思ったがすぐに返信が来た。了解、という簡素なメールだった。

 家の用事を済ますと早速厚義市に向かう。車を持たない彼は彼の地に向かうため当然電車を使う。

 しっかり者の彼はルートを出かける前に検索する。PCがあるが駅に着いても確認できるようにスマートフォンであらかじめ検索する。QWERTYキーボード上を指が舐める。入力が終わると全体の真ん中にトラックパッドがあり、そこで画面のマウスを動かす。

 提示されたルートは3つ。どれも時間は大して変わらない上、値段もほぼ同じ。どうも立地的に縁がないようで、まっすぐに向かえるルートは存在せず必ずどこかに迂回しなくてはいけなかった。何となく損をした気になりながらもとりあえず一番安いルートを選ぶ。

 厚義市は西側にあるが一旦、東にある櫻濱駅に寄る。櫻濱駅は数々の線路を束ねるターミナル駅だ。


「お姉ちゃん、知ってますか? この駅は開業以来ずっと工事が続いてるらしいですよ」

『へえ、まるで人間の体みたいね』


 櫻濱駅では時間を潰さず、改札を出るとすぐに私鉄に乗り換えに向かう。看板の案内に従い、右に曲がり、エスカレーターで上がると次の改札がすぐに見えた。改札の向こうにはホームはなく、階段もしくはエレベータで上らなくてはいけないようだった。


『足腰の良いトレーニングだわ、足を細くするにはちょうどいいわ』

「お姉ちゃんは歩かないでしょう……歩くのは僕です」

『うんうん、ますます可愛くなるわね』

「……」


 うさぎ跳びで飛んでやろうかと思ったが人目があるので諦めた。勿論人目がなくてもやらないが。

 改札を通るとホームの選択を迫られる。急行か、快速か、各駅停車か。

 人の流れを見ると急行、快速のホーム行きの階段に集まっている。容易に上の階が混雑していると予想できた。


「お姉ちゃん、各駅停車で良いですよね?」

『お構い無く。お好きなように』


 時間には余裕がある。それに初めて使う路線のため、ゆっくりと景色を楽しむことにした。しかしホーム行きの階段は一段飛ばして登る。時間短縮ではなくトレーニングのためだった。

 各駅停車の電車が止まっているホームは空いていた。客全員が電車に乗車していた。

 電車に乗ると運良く対面座席が空いており、そこに座ることにした。一息ついているうちに電車は走り出し、車窓がホームから川へと変わる。川は決して綺麗ではなかったがよく目を凝らせば魚が泳いでいるのが見えた。


 しばらくすると電車の真上を新幹線が横切って行く。


「お姉ちゃん、見ました!? 新幹線ですよ、新幹線! ○やぶさでしょうか!」

「なんで首都より以南で走ってるのよ……今のは○がやきじゃないかしら」


 またしばらくして景色が開けるとマルコは僅かに感嘆の声を漏らす。 


「わ……」


 丘の上から谷渓谷の全景が見えた。谷の間には川が流れている。

 青々とした大自然に驚嘆したわけではない、むしろその逆だった。

 急斜面の渓谷をコンクリート、セメント、ゴム、金属などの人工物が埋め尽くしている。揺れればあっという間に崩れ落ちそうな土地に家が建ち、その下を車が渋滞を作っている。

 なぜそこに住もうと思ったのか、住宅街だった。踏み外せば命を無くしそうな急な階段をマルコより小さい子供が一人で下りていた、

 この街は海の名前が付いているのに反して山、坂道が多いようでこの先の駅名の末尾に谷、峰、丘、谷と付く駅が続いている。


「坂を見ているとサンフランシスコを思い出しますね。この街も坂が多くて似ていると思いませんか」

『そうね、あとはケーブルカーが走っていれば良かったかしら』

「元は木々が生い茂る山だったんでしょうか。何となく人の業を感じます」

『そうね、ご先祖様の偉業には恐れ入るわね』


 谷が見えるのはほんの一瞬だった。電車が駅のホームで止まる。乗客が何人も降りていく。しかしマルコとカレンはその席から離れない。降りる駅はまだ先だ。ここでようやく半分といったところだった。


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