イッツノーゲーム中編
その後もクイズに格闘ゲームにUFOキャッチャーなどなど種目問わず再戦が何度も行われた。結果は面白いように結果は勝っては負け、勝っては負けと繰り返され、どちらかが連勝するということはなかった。
対戦ゲームを大方やりつくし、もしかしたら解散になるのではとマルコは淡い希望を抱くも、
「次はガンシューティングゲーム行くぞ」
「望むところだ」
呆気無く潰えた。
「というかガンシューティングゲームはスコアを競うものじゃありませんから……」
協力プレイが醍醐味のはずなのに、それすらも勝負に変えてしまう。和平への道は暗澹としていて程遠い。人間はどこまでも争う生き物なのか、とマルコは軽く悟ってしまった。
事の発端で当事者だったはずの幸はいつの間にか傍観者に回り、今は遠くのベンチでジュースを飲んで休憩している。止める気はさらさら無いようでそれどころかちょくちょく勝負を煽る始末で無責任にも程があった。
息をつく暇もなく、燃えている二人はサブマシンガンを模したコントローラを構えてゲームを始める。ストーリーはこれもまたよくある無数のゾンビを敵に立ち向かうというものだった。
「死んだ数関係なく、最終的にスコアが高いほうが上な」
「OK。死にまくって金なくなっても貸さないから」
「一万円入ってるから問題ねぇよ」
「あっそ。」
透はぼんやりと違和感を抱く。抱くがその違和感を正体がわからなかった。少し考えれば答えが出そうだったがゲームが始まったのでそちらを優先した。
始まってみるとゲームの進行は思ったよりも順調だった。二人の元々のスキルが高いために道中は無傷でやり過ごしている。
「このゲームの経験は?」
「一切なし。そっちは?」
「同じく」
二人もプレイをしながらそのスムーズさ、スマートさに驚きを隠せないようだった。その二人を傍から見ていたマルコは二人の息が意外にも合うことを知り、和解の道が開けたようで喜びもしたが反面悔しくもあった。
ボス戦に突入する。巨大なチェーンソーを振り回しながらも俊敏な動きをする大男が翻弄する。
チェーンソーの凶悪な攻撃が透に襲いかかろうとしている。大男は透の連射を受けてもたじろぎ一つしない。
「こんなん現実だとありえないぞ!!!」
「ゲームに何を言ってるんだよ」
アーケード版ガンシューティングゲームは一回のダメージでも命取りだ。コンシューマ版と違い、コンティニューは有料だからだ。
初ダメージは透か、と思いきや、画面の銃撃痕が1つから2つに増える。
黒髪が敵でありながらフォローを始めた。おかげで透はダメージを受けずに済んだ。
「……ありがとう」
「別に。手が空いてただけだから」
快進撃は中盤までだった。知識が足りないと厳しい場面と出くわすことになる。だんだんとダメージを受けるようになり、ついにラスボス戦で透が先に倒れてしまう。
「お疲れ様。後はこっちでやっておくよ」
「誰が辞めると言った!」
透は急いで財布を取り出す。小銭入れを漁るがどの小銭も穴が空いてたり、縁がつるつるだったりしていて、つまり……、
「百円玉がない!!」
「お疲れ様。今日はもう帰っていいよ」
「お前は私の上司か!」
仲睦まじく漫才を繰り広げながら透は千円札を取り出し、
「マルコ! 両替頼む! 大至急!」
「えぇ、なんで僕なんですか! 別にいいですけど!」
渡されて任されたマルコは健気にお使いに走る。
その間に黒髪もライフが0になって倒れる。小さく舌打ちして、ご自慢のオーダメイドの財布を開く。すると様子がおかしくなる。財布を開いたまま、膠着する。呆然自失しているようだった。
「透さん、持ってきました!」
「ありがとう!」
透はすぐに百円玉を入れて復帰する。しかし相方のほうがまだ固まっていた。
「どうした、社長! 社長のくせに一文無しか!?」
煽っても返事はなかった。いてもたってもいられず、持っていた百円玉を相手側に投入する。
それと同時に黒髪が意識を取り戻す。
「お前、勝手に!」
「話は後! さっさとボス倒すぞ!」
「あ、ああ……」
はっきりしない返事だったがプレイに帰し、持ち前の実力を発揮する。
二人の連射の末、ボスが倒れる。
「やったか!?」
「それ、フラグ!」
フラグ通り、予想通り、ボスは復活する。ボスの攻撃はさらに増加、多方向化、凶悪化する。しかし二人のセンスとコンビネーションはそれすらも乗り切り、ライフをギリギリに残して裏ボスも討伐したのだった。
ゲームクリアを知らせるエンドロールに歌詞がないメタルな曲が流れる。
「はぁ〜、面白かった〜」
仰々しいコントローラを元の位置に置いて透は肩を回す。
「……」
黒髪は無言で銃を置き、
「なあ……」
「ん?」
「……いや、何でもない」
一度は尋ねるもすぐに諦めてしまった。
エンドロールが終わると結果が発表される。ポイントをわずかに透が上回る。しかしそれよりも重大な情報が表示されている。
「おぉ……1位か……」
二人は思いがけず1位を獲とくした。二人は呆然とする中、マルコが盛大にはしゃぐ。
「お二人共すごいです! 1位ですよ。1位! これは二人の絆が成せた偉業ですよ!」
彼はこれをきっかけに二人の仲を取り持とうとしていた。和平とは仲介が必要なものだ。それは歴史が証明している。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
彼の言葉が伝わってか、透が黒髪に手を差し伸べる。
(透さん、さすがです! それでこそ大人です!)
マルコは一瞬期待するも、
「百円返して」
その期待もつゆ知らず透はあっけからんと返済を催促した。
(透さーーーーーーーーーーーーーーーーん!)
マルコは心のなかで泣いた。




