元気の無いあなたが心配で
「……げ」
透は小さく呻く。
「あぁ〜、さっきの天パ〜!」
猫撫でのキンキンボイスが透の精神力やら体力やらを奪う。もはや天パを怒る気にもなれない。
サービスカウンター前でさっき別れたはずの二人組と再会してしまう。
「何の用なの〜!」
店内では様々なCMに店員の声、店内アナウンスと絶え間なく飛び交ってるというのにどういうわけかこの女の声は放射線のように透過して直に耳朶に響く。
「ただ善良な市民が落し物を届けに来ただけです」
「おい、ちょっと待て」
黒髪のほうが透から財布をひったくる。
「おい勝手に……」
「拾ってくれて有難うな」
財布の持ち主が見つかったようだが、まだ疑惑が残る。
そこで透は自分が眼鏡を外したままだと思い出し、黒髪の目を見て、質問をする。
「それ、本当にお前のかよ。一目でわかるのか」
「これはオーダーメイド品だからすぐに分かるよ」
嘘ではない、と確信する。
「……そう、疑ってごめん。それと、もう一つ見て欲しいものがあるんだけど」
透はポケットから小さなガラス細工を取り出した。
「これ、財布に挟まってたんだけど見覚えは?」
「全然」
即答だった。これも嘘ではなかった。
「え〜なになに〜幸にも見せて〜」
透はこちらの落し物の持ち主ではないとわかるとさっと隠した。
「この天パ超生意気〜」
つくづく耳栓を付けながらの会話をしたくなる女だと透は内心でため息をこぼす。
「行くぞ、幸。子犬のジグソーパズルが欲しいんだろ」
黒髪が彼女の手を引っ張って再び地下へ向かう。
もう一生地下から出てくるなと願いながら透は見送った。
二人の姿が見えなくなった後で、現実でため息をこぼす。
「はあ……」
「大丈夫ですか、ため息が連続で出てますよ」
「んー、まあね……」
生返事。その後にまたため息をこぼす。
初めて会った頃のようなアンニュイな様子でマルコ、カレンが心配する。
『愛しの相手が元気ないようよ。バナナでも渡したら?』
「そんな透さんはチンパンジーじゃないんですから……」
『そう。じゃあどうするかお手並み拝見しましょうか』
しばらく考えた後にマルコは、
「気分転換に行きませんか? その、ゲーセンとかどうですか」
思いつきで遊び場所を提案した。
「えぇ〜、また騒がしいところに行くの?」
思いつきで理由を至急考え、
「ジュースとかアイスとかありますよ!」
何故か遊ぶゲームではなく、飲食物の名前を挙げる。挙げた後でマルコは後悔する。この言い方だと食いしん坊キャラとして見てるようで女性に対して失礼なんじゃないかと心配する。それにバナナとあまり変わらない。
しかしその心配は杞憂だった。
「うん、それじゃあ、行こうか」
心配してた点に気づかず、透にしてはあっさりと従順に意見を変えた。
やはりどこか変だ。マルコは異変の正体を掴めないままでいた。




