その黒は闇の中でも凛々しく
今宵は新月。夜の闇に紛れるかのように点々と白く光る星々。自分の放つ光をもかき消されないよう、、星々は煌々と輝く。
その遥か下で夜遅くにも関わらず暗闇にも覆いかぶさってるにも関わらず本来夜行性ではない生き物たちが蠢いている。上空の星々とは違い、周囲の小柄の奏者の騒音を外套にして身を隠すように足並みを揃えて進行する。
静寂に耐え切れず、一際大声を出す者がいた。ストラップで首からカメラをかけていた。昼夜問わず常用している愛用のカメラも今は用無しのようで活発に楽しそうに仲間と話し始める持ち主の僅かに膨れた胸をクッションに表、裏、表と跳ねて紐を軸にクルクルと捻れいていく。
生き物たちの先頭に立つ一人が後ろに首をひねって、一声だけ諌める。集団の規律正しい静寂が再び戻る。先頭が満足して前を向くと共に長く麗しい黒髪がたなびく。空間の漆黒に紛れているにも関わらず、その黒髪は僅かな光を集めて揺れる光芒を生み出していた。
その非現実的な後ろ姿は目にした者たちの目を焼き付かせ、そして星よりも視線を引いて離さない。
魅力に惹かれて騒いでいた一人が胸の前のカメラを構える。ファインダーを覗くまで撮る気満々だったが周りからの感嘆の声が聞こえ、空気を読み惜しみながらもカメラを手放して紐に吊るす。
暗闇だからこそ滅多に見えない光景を大人しく堪能する。写真には残せない幻想を瞳が干からびるまで見つめ、窒息するまで息を呑んだ。




