目と時間を奪うテレビ
5分で玄関の清掃を終えて台所に戻るとテレビでは公共広告のCMが流れていた。超能力者の国家認定についての説明で尺を多めに取り、方法やメリットを事細やかに説明している。
国家認定の最大のメリットは助成金を得られることだ。未成年でも保護者の同意なしで本人の意志だけで登録できるのはメリットでしかない。小遣い欲しさに保護者の同意なしに登録する者は多い。透自身も小遣いは貰っているがこの物に溢れる世の中、物欲は人並みだとしても年頃の少女としてほしいものは数知れず。しかし登録には至っていない。
この制度が超能力者にとって出来が良すぎでありなんだか釣餌に見えて仕方がなく何か裏があるに違いないと勘ぐっていた。
何より、母親が大反対していた。すでに超能力者という存在が認知され始めているにも関わらず、単に「危ないから」と一点張りだった。透も何となくそれに同調している。
透が超能力者だと未だに誰にもバレていない。透視能力という限りなく微弱な力のため、自分から明かさない限り、もしくは思考を覗けるテレパシー能力の持ち主と接触しない限り、墓場まで隠し通せる。これが念動力や瞬間移動だったらこうもいかない。初期覚醒時期だとコントロールが上手く行かず暴走してしまい目撃されてしまうことが多い。またテレパシー能力者の数はかなり少なく全世界の超能力者の内の10%にも満たない。さらにテレパシー能力者だとしても狙いを定めて特定の記憶を読み取れるのは相当の実力者に限られている。よって、ここまでは秘密を守り通して来れた。
CMの最後にピンクとシルバーを織り交ぜた非常にダサいリボンをアップで映す。この意匠の由来は意外と知られていない。この縞々模様は超能力の女王カレン・リードが超能力で手品を披露していた初期のみに着用していた蝶ネクタイから取っている。母親の手作りだったらしいが、子供っぽいので次第に着けるのが嫌になったらしく、地味に黒歴史認定している。そう自伝で書いてあったのだが本人の意向や経緯はすっかり無視されてしまっている。ちなみに超能力の女王と呼ばれる前は縞々模様から因んだ『タイガー』という愛称で親しまれていた。
CMが変わり、ひらすらシュールなだけでテレビの向こうでしか笑いが生まれないショートコントが始まると視線をテレビから解放し、ようやく時計を見る。
「やばっ」
急いで支度を始める。食べ終わった皿を流し台に置いて、自分の部屋に戻る。布団はいつの間にか有雁が畳んでくれていたので、すぐに着替えに移る。多少ほつれてはいるものの、アイロン掛けされてシワ一つない制服に袖を通す。筆箱と運動着しか入ってない軽いスクールバッグを肩に掛ける。
早足で玄関に行く。革靴ではなく、運動靴を選ぶ。校則に反するが教師陣は誰も口出ししないので形骸化し、一部の生徒は登校に運動靴を常用している。
鍵を閉めて、一呼吸する。戸締まり、水道、ガス、電気などを念のために振り返る。問題無いと確信し、時間が惜しく「いってきます」の一言もなく、クラウチングスタートから登校を開始した。




