ひとめ見て
馬詰の思惑はじわじわとその効果を発揮した。張子の虎が倒れて威を借りていた狐を下敷きにしてしまう事態に陥っていた。
書き込みの内容が旧校舎のトイレ半壊事件の犯人は透のせいにするなど誇張されてあり、休憩時間に鵜呑みした怖いもの知らずの他のクラスの女子生徒が興味津々に話しかけてくる場面があった。人目を避けようと人気のない場所に逃げ込んでも面白がってついてくる人間もいた。
実はこのような時の人状態に陥るのは透にとって初めてではなかったが、この状況は彼女のトラウマを蘇らせる。
「ごめん、マルコ……気分悪い……もう早退する……」
年上の先輩に捕まり、超能力についてちやほされ、東洋のカレン・リードとまで持て囃されたところで透はギブアップし保健室に逃げ込んだ。マルコも付き添い、側にいた。掛ける言葉は励ましではなかった。
「どうしてですか、皆褒めてくれるのに」
責め立てるように透に質問を投げかけた。超能力のことを明かせない身としてマルコは正直羨ましかった。できるなら代わってあげたいぐらいだった。
「透視を褒めてくれないからですか?」
「……」
透はうなだれたまま何も話そうとしない。
「何が嫌なんですか。カレン・リードって持て囃されるのが嫌なんですか」
マルコの追撃を止めたのはケイトだった。
『マルコ、そっとしておきなさい』
「で、でも……」
『元気だけが取り柄みたいな馬鹿がこんな風になるってことはそれなりの訳があるのよ』
「わかってます……わかってますけど」
知っているとも。ケイトに言われなくとも透が透視能力を隠し続け人との関わりを避けていることを知っている。自分との会話には遠慮がなかったから忘れそうになるけども裏に何かを抱えていることを知っている。
『あなたにはわからないことでしょうけど超能力をもつことが必ず幸せじゃないのよ。貧乏くじを引いたと思ってる人もいるの』
「でも! 僕は!」
詮索をしたいわけではない。力になりたいだけだ。微力ながら支えになりたい。
『口答えするんじゃありません。透は早退。今日の捜索は中止よ。いいわね?』
取り付く島もない。マルコはただ言うことを聞くことしかできなかった。




