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See you again  作者: 田村ケンタッキー
瞬間移動能力者 永谷瞬の虚勢

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本当のお人好し

 路地裏に残された透は立ち尽くしていた。しかしこのまま悠長に突っ立ていては多方面に裏切る形となってしまう。それではと動こうにも手詰まり感が否めない。せっかく掴んだチャンスが、チャンスの方から振りほどかれてしまった。それでもまだ諦めていない。拒絶されてしまったが諦めていない。瞬との和解も、そして幸の救出も、両方とも解決させるつもりだ。

 思考の透視のおかげでだいたいの事情は掴めた。傍観者から見れば性悪女が気を引くための狂言の可能性も考えられたが、誰よりも性悪女を知っているであろう瞬の様子を見るとその可能性は低いようだ。


「本当のお人好しかぁ、あいつは……」


 自分に対しては敵意を剥き出しにする姿ばかりを見かけていたので瞬の必死に焦る姿は予想外だった。喫茶店でのクールに澄ました顔はどこにいったのか。

 そんな姿に触発された透は手伝うことを決めた。無論裏心がないわけではない。ここで恩を売れば後の話もスムーズに進められる。そのような狙いもあった。

 ウィンウィンの関係であるはずが事態と信頼関係はややこしく絡まって悪化している。手伝おうとしたら怪しまれる上に警告すらされてしまった。あまりにも理解できる感情故に恨むつもりはない。そりゃそうだ、昨日の敵は今日の友みたいな都合のいい展開を信じられるほど人間はお人好しではない。

 表立ったサポートが禁じられ非常にもどかしい。下手に動けば見つかって顔中を痣だらけにされかねない。

 それならば何とか先に見つけてしまう手もなくはない。しかしこれは奇跡が起きないかぎり実現が難しい。奇跡的に見つけられたとしても疑いが深まりそうだ。万事解決のためには奇跡が二度起きないといけないので却下。

 結局、一番望ましい結果は瞬が自力で発見してもらうことだがそれもどうも期待できそうにない。このように望み薄と考えるにもそれなりの理由がある。

 思考を巡らせている間も透視を怠らずに別れた瞬を目で追っているがそろそろ苦痛になっていた。透視能力の限界が来たわけではない、目も当てられなくなっていた。

 黒髪をはためかせ凛々しく君臨し大衆を湧かせる女傑も今は見る影もなく、そよ風にすら揺られながら歩き、杖をつく老人のような背中と歩く早さで哀愁を漂わせている。映画の中では輝かしく映る女優の寝起きのスッピンを生で見てしまったかのような辛さがそこにはあった。

 人のために信じて尽くせるお人好しは称揚するが、空回りする不器用さは素直に褒められない。本当にスケアリーモンスターのボスなのか、今度はこっちが怪しくなり疑わしくなる。

 一度マイナスの感情が湧くと続けざまに違う不安要素が無理矢理塞いでいても湧き出てくる。

 別れたっきりのマルコから連絡が一つもない。定刻で連絡する決まりをしていないので不自然ではないが、豆な性格をした彼なら僅かな隙間でも連絡をくれそうだとは勝手に期待をしていた。

 先ほど試しにこちらから電話をしたが、電源が切れているか電波の届かないところにいるらしい。映画や演奏を聞く時のように音を遮断するために電源を切っているかもしれないし、電波状況が悪いかもしれない。

 日本の電波環境に疎い透にとっては郊外の倉庫辺りでも圏外になると考えていた。実際には何者かによって電波妨害されているとは夢にも思わない。

 試しにもう一度電話をかけるも結果は変わらなかった。女性の声が状況を説明してくれる。

 連絡は来ないが、うまくやっているとは信じている。その上で何らかのアクシデントが起きたのではないかと予想していた。もし捕まったとしたなら胡桃あたりがこちらに連絡をしてくるだろう。スマートフォンの故障とも考えにくい。何らかの手段で接触を図るはずだ。

 櫻濱スタジアム周辺を普通に歩いているつもりだが、スケアリーモンスターの接触も尾行もされていない。休業日ということはないだろう。

 不安は積もりに積もり、


「はあ……」


 ため息となって落ちる。

 どうやら現状の自分にできることは殴られる覚悟の上での尾行らしい。

 日本人女性にしては恵まれた身長を持つ少女が小さく見えなくなる前に透は歩き始めた。

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