亭主関白
「自分の家だと思ってくつろいでね」
透は決まり文句を言うも、マルコはくつろごうにもくつろげない。
「……空き巣に入られたんですか」
マルコがそう言うのも無理はなかった。彼女の部屋は散らかりに散らかっていた。本棚があるのにその下に文庫本サイズの漫画が作品、巻数もバラバラに積み重なっている。テーブルがコンビニ弁当のゴミ置き場になっている。押し入れは開いたまま。布団は畳まれているがその上に畳まれていない洗濯物の山ができていた。テレビ周りに落ちているレシートが埃を被っている。
マルコの中の女性神話が音を立てて崩壊する。女性の部屋は必ず綺麗に片付き、整理整頓され、果実の香りがするとばかり思っていた。あれは姉限定の話だったのかもしれない。世の女性は、もしくは日本の女性はこんなにもだらしないのだろうか。
家の掃除が習慣だったマルコは自然ときれい好きな性格になっていた。こんなに散らかっていた部屋に人を泊めようと思う透の神経を疑う。マルコに怪訝な顔にされながらも透はふんぞり返る。
「私は本気を出してないだけだ」
「部屋の整理に本気も手加減もありません! まずはテーブルの上の物を片付けましょう! その次は本棚です!」
「えー……今日は疲れたから明日にしよう? ね?」
「今日できることを明日に持ち越してはいけません!」
「もう夜中だしあんまり騒ぎすぎるとご近所に迷惑が……」
「この寮、透さん以外には住んでないんですよね?」
笑顔だったが目が笑っていない。
「……うぃっす」
「返事ははいでしょ! 本棚の次は台所です! その次はお風呂! 最後にトイレです!」
「それって全部の部屋じゃん……」
説教をされながら透は片付けを手伝う。おかしなことに宿泊客が手伝うのではなく、住人が手伝う。マルコがテキパキと送ってくる指示をダラダラと実行する。主夫は整理整頓にうるさかった。将来亭主関白になるかもしれない。




