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1.フューチャー3登場

 スペースコロニー「ラウム」。

 そこの「宇宙ドーム」におけるコンサート会場はクライマックスの熱気にあふれれていた。

 ステージ上にはパステルカラーの3色の衣装に身を包んだ3人の少女。

 トップアイドルの「フューチャー3」だ。

「みんなあーー! 今日は本当にありがとう!!」

 パープルの衣装の中央の少女が叫んだ。

 衣装と同じ紫色のロングヘアー。

 フューチャー3のリーダー、パル(17歳)である。

「じゃあ、本日のラストナンバー、フューチャー3の新曲いくよーー!」

 向かって左側のイエローの衣装の少女が呼びかけた。

 金髪のショートカットで活発そうな印象を受ける。

 ピノ(16歳)である。

「歌います……。聴いてください……」

 向かって右側のピンクの衣装の少女が観客席に語りかけた。

 衣装と同じ桃色のセミロングの髪。

 おとなしそうな印象の最年少ポロ(15歳)である。

 曲のイントロが流れ出し、パル、ピノ、ポロの3人が激しく踊り出した。

 歌、スタート。

 観客は熱狂。

 あれだけの激しい振り付けのダンスをこなしながら、歌いぶりには全く息切れを感じさせない。

 客席はますますヒートアップ。

 興奮しすぎて失神したのか、客席のあちこちで数人が倒れ始めた。

 周囲の人間が気付いて、倒れた者を抱き起こす。

 激しく歌い、踊りながらも、ステージ上のパル、ピノ、ポロたちもまた、倒れた客に気付いていた。

(ピノ、ポロ、気付いた?)

(ああ、もちろんさ、パル)

(倒れた……、お客さんの背後から……、足早に立ち去った者がいたわ……)

(コンサートが終わったら……、行くわよ!)

((オッケー、パル!))

 歌が終了した。

 客席に手を振りながら、足早に舞台袖に退場するフューチャー3。

 客席からは、アンコールの大合唱。

 しかし、フューチャー3はアンコールに応じないことで通っている。

 最後の曲が終わったら足早に退場し、もう決して姿を見せないのだ。


 宇宙ドームから少し離れた路地裏。

 そこを走る、黒ずくめの3人の男たち。

「待ちなさい!!」

 3人の男たちの行く手をはばむように、3つの人影が立っていた。

「ギ……、ギギ……、何者だ!?」

 男の1人が問いかけた。

 3つの影が名乗った。

「風刃のパル!」

「音壊のピノ!」

「香撃のポロ!」

「「「わたしたち、バトルアイドル・フューチャー3!」」」

 街行く車のライトに照らされて浮かび上がったその顔は――、さきほどまで宇宙ドームのコンサート会場で歌い踊っていたアイドルグループ「フューチャー3」の3人だった。

「フューチャー……」

「スリーだと……?」

 黒ずくめの男たちが独り言のように繰り返す。

「人間に擬態しても無駄よ! 宇宙害虫ガイチュラ!」

 男たちを指差し、パルが叫んだ。

「さっきのコンサート会場で、人間たちの生命エキスを吸い取っていただろう?」

 腕組みのピノが、男たちをにらんだ。

「私たちは……、ごまかせないわよ……」

 ゆっくりと、だが、しっかりとした口調でポロが語った。

「く……、そうか、俺たちの正体を知っていたのか……」

「ギギギ……、人間の分際で生意気な」

「ゼゼゼ……、食後のデザート代わりだ。お前らの生命エキスも吸い取ってやる!」

 3人の男たちの黒ずくめの衣装が裂け始めた。

 体が巨大化したのだ。

 男の体は、巨大な3匹の昆虫型の怪物姿にそれぞれ変貌を遂げた。

 1匹は、クワガタ型、1匹はカミキリムシ型、そしてもう1匹はセミ型の怪物だ。

 彼らは宇宙害虫ガイチュラ。

 人間を糧とする、昆虫型知的生命体である。

 人間に擬態して社会の中に紛れ込み、その生命エキスを吸い取っているのだ。

 ガイチュラたちは、パル、ピノ、ポロに襲い掛かってきた。


 クワガタ型のガイチュラが、その大アゴでポロの体をはさんだ。

「あっけないな? このままおまえの体を上下に分断してやる」

 クワガタ型は、締め付ける大アゴに力を込めた。

「うおおおおおおおっっ!!」

 パルは、自身の体を締め付ける左右の大アゴに両手を乗せ、こじ開けんとした。

「く……、無駄だ、無駄だ。無駄、無駄、無駄、無駄、む……?」

 クワガタ型は一瞬、何が起きているのか理解できなかった。

 自分の大アゴがどんどん開いていくからだ。

「バカな!? 人間の小娘ごときの力で、この俺の大アゴを開かされるなんて」

「おりゃああああ!」

 パルの気合の叫びと共に、クワガタ型の大アゴは砕かれヘシ折られた。

「ば、馬鹿なあ!?」

 驚愕するクワガタ型ガイチュラ。

「くらえ! ウィンドカッター!」

 パルが垂直に手刀を振るうと、そこから真空のかまいたちが発生した。

 その風の刃は、クワガタ型ガイチュラを縦真っ二つに切り裂いた。


 カミキリムシ型のガイチュラは、その長い2本の触覚を自由自在に操り、ピノの体を貫かんと襲い掛かってきた。

 何回か跳躍してかわすピノ。

 だが、触覚の方が動きが速かった。

 ついに、1本の触覚が、ピノの腹部を貫いた!

 ――かに見えたが、触角はピノの腹部表面で止まっていた。

「なに? 人間の体をなぜ、俺の触覚が貫けない?」

 戸惑うカミキリムシ型。

「ギギ……、きさま……、離せ……」

 カミキリムシ型は、ピノと距離を取ろうと跳躍しようとしたが、ピノが両手で触覚をしっかり握っており、そこから退けなくなっていた。

「あたいの声に聞き惚れな。バスターボイス!」

 ピノが大きく口を開くと、そこから破壊超音波が発せられた。

「ギギ……、ギギ……、俺の……、俺の甲羅があああ……!!」

 悲鳴を上げるカミキリムシ型ガイチュラ。

 その外甲にはどんどん亀裂が走り、ついには甲羅内側の筋肉にまで損傷が及んだ。

「この俺が、ガイチュラのこの俺が人間ごときにィィィィィ!!」

 カミキリムシ型ガイチュラの体は砕け散った。


 セミ型のガイチュラは、ポロに対峙すると、その羽根をこすり合わせ、破壊音波を発生させた。

 さきほどピノがガイチュラに対して行った音波攻撃を、今度はガイチュラがポロに対して行っている。

 だが、ポロは全く動じない。

 ポロの体にも何の異常も表れなかった。

 ポロのセミロングの桃色の髪が、緩やかな動きで波打ち始めた。

「ドリーミングアロマ……」

 ポロがそうつぶやくと、波打つ髪からある香りが発せられた。

「ひゃ……、な、なんだ……、この匂いは……、うひ、うへへへ、いい匂いだあ……」

 セミ型の音波発振は止まった。

 セミ型ガイチュラは、恍惚の表情のまま白目を向くと、のけぞって倒れた。

 体はまだピクピクと動いているが、既に絶命していた。


「ガイチュラ退治完了ね」

「パル……、警察へは……?」

「連絡済みよ」

「じゃあ、後始末は警察に任せて、あたいらは退散しようぜ」

 パル、ピノ、ポロの3人は高く跳躍すると、その場から姿を消した。


 スペースコロニー「ラウム」某所。

 パル、ピノ、ポロは、サングラスをかけた銀髪の若い男と向かい合っていた。

「ご苦労さん。ゆっくり休んでくれ」

 男が言った。

「マネージャー、会場で倒れたお客さんたちの容態は?」

 パルが、サングラスの男に尋ねた。

「大丈夫だ。ガイチュラどもに生体エキスを吸われ、衰弱してはいるが、みんな命に別状は無いそうだ」

「そう……、良かった……」

 つぶやくような小声でポロ。

「ガイチュラどもめ。何匹表れようが、あたいらが退治してやるぜ」

 ピノが息巻く。

 サングラスの男が言った。

「バトルアイドル・フューチャー3! 社会に紛れ込み人間を襲うガイチュラを倒すのが君たちの使命だ! これからもしっかり頼むぞ!」

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