雪の女王、氷の女王
掌編の創作童話になります。時間はかからないと思うので気楽に呼んでください。
「雪の女王、氷の女王」/「AG is 風太郎」の小説 [pixiv] http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3661863感想、評価大歓迎です。ドッロプアウトした場合もどのあたりか記入していただければ今後の作品作りの参考になります。モラルの範囲内での辛口コメント期待しています。
雪の女王、氷の女王
男は言った。
「氷の女王様、霰をとめてください」
女王は答えた。
「わらわは知らんぞよ、雪の女王に頼みなや」
遠路悪路を越え男は雪の女王の元へたどり着いた。
「雪の女王様、霰をとめてください」
雪の女王はこう答えた。
「その頼みには応えられんの、氷の女王に言ってみてはどうや」
女王さまの言うとおり男はまたしても氷の女王の前を訪れた。そして帰ってくる答えも同じ。それでも男は氷の女王と雪の女王の間を何度も行き交った。
男の懸命さが伝わったのか、男の根性に呆れたのか状況を訝しむ両女王。
自分たち以外に天候を左右する存在など考えられぬと。
そこで女王は兄である風の王に相談した。
「どうした、妹達よ。なにまことか。おい、雨の弟よ、なにかしらぬか」
傍らにいた雨の弟に問いかけた。
「兄上、確かなことは言えませぬがこのところ我々の力の及ばぬところがあるようです」
「なに?それは真実なのだな?」
「お兄さまそのようなこと信じられません」
「そうですわ。わたくしたち兄妹以外にそのような」
「落ち着け弟妹たちよ。私もそのようなこと鵜呑みにはできんが雨の弟がそう言っておるのだ。そうなのだろう」
「どうなさいますか兄上」
その後氷の女王は男の夢枕にたってもう一度尋ねてくるよう告げた。
女王の言うままに再び悪路を超えてきた。男の顔は以前にも増して疲弊している。その様子から問題は未だ解決をみていないことを悟る。
「コレ人間よ。そなたの村の近くで変わったことはないかや」
「変わったこととは?女王さま」
「たわけ、あられに関することに決まっておろう」
「はて、あられに関することと言われましても」
男は女王の期待にこたえるべく頭をひねった。
「そういえば女王様」
「なんじゃ申してみよ」
「はい、実は霰ではなくあられという名に心当たりがございまして」
「愚か者、人の子になど興味はないわ。ええいもういい帰りたもう」
氷の女王の怒りに触れた男は追い出された。
そして数日今度は雪の女王が夢枕に立った。
頬をこけさせなんとか女王の元にたどり着く男。
雪の女王とも氷の女王同様の会話になり
「そなた我をバカにしているのか」
「滅相もない女王様」
「我は気を害したぞ、そなたに用はない」
またしても追い出されてしまった。
その後なぜか突然あられは止んだ。
事態は解決したものの事の真相が気がかりだった雨の王は男のもとを訪れた。
「そなただいぶ憔悴しているようだが」
男の姿は見るも無残で頭は白髪混じりのはげ、手は赤く荒れ、唇も乾いていた。
「これはこれは雨の王様。わたくしにどのようなご用件で」
「あられは止んだというのにその有り様はどうした」
「はあ、人の世では大分と年月が過ぎまして、また近頃では日差しが強くて参ってる次第です。雨の王様がいらっしゃたおかげで少しマシになりましたが」
「そうかそうか、それでいつぞやのアラレだが」
「はあ、私めが知っていることは女王様に申し上げたとおりで」
「いや、まだ言ってないことがあったろう」
「さて、ああ。これは王様に申し上げるにはつまらぬことで」
「良いから申してみよ」
「ははあ、そうおっしゃるなら」
そう言って男は乾いた唇をゆっくり動かした。
「あの頃、昔話に鳴りますがね。少し離れた村の村長が突然病に伏せまして。まもなくなくなったのですが。そのおさにはアラレという一人娘がございまして聞いた話では悲しみにくれ大層泣いて悲しんだそうな」
「左様か」
「はい、その話がこの村まで流れてくるほどに。誰かが言ってましたまるで嵐のように泣きじゃくっていたと。それに重なりアラレも降り出し日は隠れ激しさはマスばかり。しかしある時一人の若い旅人が村を訪れました。娘を不憫に思った若者は悲しみが晴れるまで村に滞在することにし、やがてふたりに恋が芽生えました」
「それはよきこと」
「はい、その頃にはあられも勢いを弱めしばらくして子を授かったそうな。子が生まれるのを見送ったようにパタリとあられはやみまして」
「なに?面妖な。そのようなことが」
「その夫婦も村の者もその子が太陽を授けてくれた神の子と讃え。太陽の子、ヒノコと名づけたそうでございます。それからというものずっとお天道様が登る毎日を送っております。不思議なことにハレゾラだというのに雷が降ることもございましてまあまあこういった次第でございます」
「そうであったか、よくぞ話してくれた男よ」
雨の王はその話を持ち帰り長兄の風の王に伝えた。
「その話真実であるならば」
「はい兄上、わたくしも同じ考えでございます」
しばしして兄のもとに召喚された二人の女王。
「どういったご用件ですの、お兄さま」
「ふたりに話しておきたいことがある、例のアラレの件だ」
「例の?なんでしたでしょうか」
「おまえたちが追い返した男の村のことだ」
雨の王が添え口をした。
「はて・・・ああ、そんなこともございましたわね。人の子の時間など気にしたことございませんから」
男から聞いた話をそのまま妹達に伝える雨の王。
「そのようなことでしたの。しかし小娘が泣き喚いた話となにか関係が」
「まだ気づかぬか」
「はい?」
「その娘は我らが腹違いの妹ぞ」
「ナニをおっしゃいますお兄さま、人の子が我々の兄妹のはずございませんわ」
「間違いはなし。霰を操る力、自在とはいえぬともその力我ら神の力。そしてその太陽の子とやらはわれらの甥にあたる」
「お兄さま方お戯れも程々になさってください」
「そうですわ、そんなはずございません」
「信じぬのならソレも良いが。しかし、雨の弟よどう思う」
「はい、あの男もう長くはございませぬな」
兄達の会話の意味をつかめず怪訝な顔を覗かせる女王。
「男というのはあの男でございましょう。ナニを気にしていらっしゃるのです。人の子の寿命など」
「本来はそうなのだが、それが神の怠慢によるところだとするとほってはおけん」
「お兄さま、まさかとは思いますが私達に不手際があったと仰りたいのですか」
「・・・」
「まあ、なんということ。お兄さまお気は確かですか。同じ腹からうまれし私達が過ちを犯したと?」
「兄上ここはわたしが」
重い兄の口にかわり雨の王が口を開く。
「双方の座所はともに険しい山の奥。年中雪が降り積もり氷に足を取られ死ぬ思いで山を昇ったにもかかわらずそなたらいともたやすく袖にして追い返したな」
「わたくしは自らの勤めを果たしただけです」
「わたくしも同じですわ」
「そうやもしれぬがな、そちらは人の子の時間に無頓着すぎるのではないか」
「?」
「男がどれだけの数、時間を賭けてそなたらに会いに行ったと思う」
「さあ、ひとつふたつ、まばたきをする間でしょうか」
「人の時間で8年、優に100度、50往復と言ったところだ。それだけ雪山を登れば手は感覚を失い肌はただれ、生気を失うのも至極当然」
「お言葉ですがお兄さま」
「兄上」
雨の王は妹達の弁明に耳を貸さなかった。
「どうしたものか、新しい妹と甥にはこのまま人の世で一生を終えさせるのも幸せやもしれぬ。半端な神の力。我らが気をつけておけば問題はあるまい。だが」
「雪の妹と氷の妹ですね」
「お兄さま!?私達に罰を与えようというのですの」
「わたしとて可愛い妹にきつい仕打ちはしとうない。雨よ、ここはそちの裁量にまかせてもよいか。情けないがわたしには手をくだせそうにない」
「はい兄上、仰せのままに」
雨の王は風の王に最上位の敬意を示し頭を垂れた。
「それではそなたらに処遇を言い渡す」
「待ってくださいお兄さま」
「そうです、わたくしたち反省していますわ」
慈悲を求める声は雨の王に届かない。
「そなたらには人の世で50ほどの時を過ごしてもらう。なに、幾度かまばたきをすれば過ぎる時間であろう。それからふたりのもつ神の力は天に返上してもらう。人の身にはあまりに過ぎた力故。よろしいですか兄上」
風の王はナニも言わず静かに頷いた。懇願する声も許しを請う声も耳を通り過ぎて行く。
そうして雪の女王と氷の女王は人の娘として50年の刑を送ることになった。
(終)
「雪の女王、氷の女王」/「AG is 風太郎」の小説 [pixiv] http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3661863
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