レジェーレ
あの日、私は全てを失った
それまで住んでいた家を、たった一人の兄を、名門だったという我が家への信頼を
だが、私は自分が何を失ったのか解らずにいた
何故なら私が失ったのはそれらだけでは無かったから
私はあの日、それまでに培った全ての記憶を失った
私の中にある一番古い記憶は全てを失う前に暮らしていたという家の書架だ。
私は今でもそうだが、昔から本を読むのが好きでよく書架にいたらしい、
だが、その日、私は確かに書架にいたがその日は床に倒れていた
なぜ倒れていたのかは私にもわからない
気が付けば啓祇局に仕える正天使達が私を乱暴に揺り起こしルシアーノは何処だと聞いてくる
その時の私はそこが何処なのか全く分からなかった
私は周りにいた正天使達に此処は何処なのかと尋ねたが、正天使達は私の問いには答えず、怒ったようにルシアーノは何処だと聞いてくる。
私は逆にルシアーノとは何なのかと尋ねた、私はそれが名前だという事が分からなかった
周りにいた正天使達は、私がそれを本当に名前と認識していないと知ると戸惑い持て余した
結局私を持て余した正天使達は、大天使の下に私を連れて行き、私の記憶が失われている事を説明する。
そして、私は自分の通り名すらも忘れ去っている事がわかり、一族は最下級の天使達が暮らす辺境の片隅で暮らす事になる。
私の失われた記憶が全ての始まりだとも知らず
全ては始まっていた--------
主人公の一人語りです。
次は本編に行けると思います。