運命の赤と青
「これは?」
「どちらか一方はただの睡眠薬。もう一方は安らかにこの世界から消える事が出来るよ。痛みも苦しみも無く眠る様に行ける。僕のお父さんの様に。」
「…」
「つまらなくて苦しくて辛いだけの世界から離脱するか、目を覚まして向き合って争うか。その場合は僕も同じ苦しみの中にいる君を僭越ながら手助けするよ…自分で決められないなら運を天に任せてみてはどうかな?」
「成る程…」
「どちらも選ばないと言う選択肢もあるよ。まあ、その場合は現状維持かな。ママの言いなりのまま芽が出ない無駄なレッスンを続け、いずれ16歳になって八神先生との子供を産むんだろうね。」
「それは…やっぱり嫌。」
「ははは。初めて君の本心を声に出して吐露したのかな?」
「かも知れない…」
確かに…
普段はハイしか言わないのに、田所との会話は否定する言葉を口にしていた事に気付いた。
「じゃあどうする?」
「薬を選ぶ。」
「成る程、やっぱり決断も罪も人のせいにしたい所は僕と似ていて好感が持てるね。」
「卑怯者ですみませんね。」
「いやいや、卑怯ではなく、臆病で慎重、冷静で思慮深いって言ってるんだよ。賢い子だよ」
「それはどうも。」
「じゃあどっちを選ぶ?」
「赤で。」
「へえ。何か赤って危険そうな色じゃない?大丈夫?」
「うん。赤色の方が可愛い色だし。」
「ははは。理由もやっぱり面白いね、麻里奈ちゃんは。それじゃ、ハイ」
そう言って差し出された赤いカプセルを気持ちが変わる前に勢いで飲み込んだ。
「どう?」
暫くすると瞼が重くなってきてやがて意識が遠のいた。
○○○○○○○○○○
「こんちは。自分、坂田幸次郎って言います。」
「今回、幸次郎くんの弟が手伝ってくれるんで、紹介するね。」
「ご本人では無く?」
「すんません。弟人見知りで…その内紹介します…」
「はあ…」
紹介されたこの幸次郎って人…
覗いてる腕や首筋にびっしりタトゥーが…
ピアスもなんか数えるのが面倒な位沢山…
鼻やら唇やら眉毛やらにまで…
関わっちゃいけない人にしか見えないけど…
結局私はあの後目を覚ました。
果たして選択は合っているのか間違っているのか…
運を天に任せたので、そのまま流れに従っている。
今回の計画は主に田所が立案してくれた。
まあ、子供の私にはそんな計画を考えつくのは無理だ。
こちらも任せていた。
言われるまま行動するのは慣れている。
「幸次郎くんとはここで出会ったんだよ。」
「そうなんですか…」
今、会っている場所も最初に田所に呼び出された『Exit-エグジ-』だった。
Exit=出口…
何だかこの先を予見している様な…
因縁めいた名前だなって思った。
私は2回目なので、店員にそこまで変な顔はされなかった。
「まあ、俺もソッチなんで…しかも田所さんとは被るんで身体の関係は無いっす。」
「そうなんですね」
多分この人は田所がゲイだと思っているんだろう。
まさか精液を集めているとは知る由も無いか…
「それでね、話をしてみると中々面白い子でね。仲良くなったんだよ。」
「へえ」
「僕が『支配』をするキッカケになる人を紹介して貰ってね。」
「そうなんですか」
「その人の教えは『ドミネーション&サブミッション。DS。支配と従属』支配される人間は支配もしている。一方通行じゃダメ。支配する側も支配されるし、逆もまた然り。」
「ふむふむ」
「僕みたいに支配され続けた人間は支配もしているって気付かせてくれたんだよ。」
成る程…
その人がこのモンスターを生み出したって訳ね…
「だからね、僕はこの素晴らしい考えを支配されている人に教えてあげたくてね。虐げられてる人を紹介して貰ってたりもするんだ。」
「ほう。」
「その人の代わりに支配してるんだよ。まあ、僕の場合は正義感なんて一欠片もない、単なる性的嗜好と快楽の為だけどね。」
やはり、この人は清々しい程に
名前の通り正直…
と思った。
「今回来なかった俺の弟の光太郎、ソイツ中々使える奴だから。期待してて。」
「そうなんですか…色々有難うございます。」
兄が次郎で、弟が太郎…
変わった家だなって思った。
「それじゃあ、まずは、麻里奈ちゃんはね…」
そして私の『支配』が始まった
ここに来て幸次郎再登場…弟いたんですね。
しかし、幸次郎は色んな所に首突っ込んでますね。
あと、あの田所を生み出したのは口咲だったみたいです。
口咲と幸次郎については「芳一郎奇談-四谷怪談」を参照下さい。




