上辺の付き合い
「それでは宜しくお願い致します」
ママが先生に挨拶をしていた。
私は今、精神科の先生の元にカウンセリングに通っている。
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「でもさぁ〜こないだの参観日、瀬谷さんのお母さんヤバかったね〜!顔とかゾンビ来たのかと思った〜!服も何アレ?ドドメ色?」
参観日の次の日にクラスの地味シメジの綾にこの言葉で絡んだ後、ちょっとした騒ぎになった。
あの綾が豹変して、石を私に投げつけて来た。
その後まるで狂犬の様に暴れて叫んでいた。
担任から事情を聞かれ、黙っていたが取り巻き達は掌返しで洗いざらい今までの事も含めてぶち撒けた。
所詮子供なんて大人にかかるとこんな物だ。
弱い者らしく上手くその時の流れを見極めて流れに乗って立ち回る。
元々人の人気に乗っかって自分も強者になっているつもりの連中だ。
信頼関係なんて微塵もない。
こう言う上手く立ち回れる人間達が結局は幸せとやらを掴んでいくんだろう。
この事件の後も、コイツらは私を虐めるとかハブにすると言った目立つ事をする訳でも無く、上辺だけの付き合いで上手く立ち回っていた。
変わった事と言えばあれから綾に絡む事は無く、腫れ物でも扱うように、空気の様に、居ない者として扱っていた。
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「それじゃあ、麻里奈ちゃん。今日はどうだったかな?」
「はい、学校では友達と仲良くお喋りしてました。」
「そう。それは良かった。お仕事の方はどうかな?」
「はい。ダンスのレッスンは相変わらずママに怒られていますが、演技のレッスンの横山先生には褒めてもらえました。」
「そう。それは良かったね。」
「はい。」
「まだ直らないかな?その癖…」
そう言って先生は私の右手を手に取って中指をさすった。
「はい…」
「吐くの、我慢できない?」
「はい。モデルやってるし太れないので…」
「吐くだけ?」
「…たまに下剤も使います…」
「そう。」
「麻里奈ちゃんは過度なストレスから摂食障害になっているよ。」
「はい。」
「治療は根本的な原因を解決させないとね。」
「はい。」
「自分の身の丈に合わない過度な期待に応えないとって頑張るのも良くないよ。」
「はい。」
「親や周りから誰にも愛されてないと言う不安もあるね。」
「はい。」
「僕は何でも麻里奈ちゃんのお話を聞くし、とことん付き添うよ。」
「はい。」
「僕だけは麻里奈ちゃんの味方だからね。」
「はい。」
「だから麻里奈ちゃんは僕の事を信じて。」
「はい。」
「一緒に治療、頑張っていこうね。」
「はい。有難うございます。」
カウンセリングが終わり、ママが診察室に入って来た。
「八神先生、有難うございました。」
「はい。麻里奈ちゃんは今不安定な状態です。お母様もどうか麻里奈ちゃんに目を配ってあげて下さいね。」
「はい。」
「それじゃあ、また来週ね。麻里奈ちゃん」
「はい。」
「それではまた、宜しくお願い致します。」
「明日のダンスのレッスンはお休みにするから。」
「はい。」
「明後日の演技レッスンは行ける?横山先生は麻里奈の事、誉めてたし。」
「はい。」
「そう。良かった。まあ、モデルなんて賞味期限早いし。今の内に演技に力を入れて長い目で見ていきましょう。行く行くは実力派女優になるのよ。」
「はい。」
「来週からは病院1人で行ける?私レギュラー決まってこの曜日は打ち合わせで忙しいの。」
「はい。」
「良かったわ。麻里奈は本当に聞き分けが良くてお利口で自慢の娘よ。」
「はい。ありがとう。ママ」
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「今日から1人で通うんだね?」
「はい。」
「ママは忙しいのかな?」
「はい。」
「そうか。本当に麻里奈ちゃんの事を思ってくれる人は他には誰もいないのかな…」
「はい。」
「でも、僕は何でも麻里奈ちゃんのお話を聞くし、とことん付き添うよ。」
「はい。」
「僕だけは麻里奈ちゃんの味方だからね。」
「はい。」
「だから麻里奈ちゃんは僕の事を信じて。」
「はい。」




