新しい門出
「へえ。それからどうなったのかな?」
「暫くは…詩織さんから連絡はありませんでした。」
今は田所に病院で詩織さんとの経緯を報告していた。
「そう。でも麻里奈ちゃんの今の様子から察するに…」
○○○○○○○○○○
あの時、また会う約束を…
したのは、私が一方的に言っただけだった。
詩織さんは返事をしなかった。
暫くして詩織さんから連絡があった。
「詩織さん!」
「ゴメンなさいね。暫く連絡せずに…」
「いいんです。無事なら。生きてるなら。」
「有難う。心配してくれてたのね。優しい子ね…」
優しい?私が?
多分人から初めて言われた言葉かも知れない。
可愛い、いい子、賢い、正直…
とは言われて来ていたが…
私の中に優しさなんて有ったのだろうか?
隼人に関しても動いたのは興味本位だった。
でもなぜ邦枝浩二の事を調べたのだろう…
それは…やっぱり…
「詩織さんと最後に会った時に言いました。話さなければならない事があるって。」
「そうね。何かしら…」
「それは…」
私は今までの事を洗いざらい話した。
小学生の頃、ママの認証欲求の為に言われるがまま芸能人を目指してキッズモデルをしていて、多忙なスケジュールの数々のレッスンをしていた事
気持ち悪い撮影会や演技指導の先生にレイプされていた事
同じクラスだった綾を虐めていた事
ある日綾に石を投げつけられ騒ぎになり、その経緯で精神科へ通った事
そこで精神科医の八神にレイプされ続け、動画や画像を撮影されていた事
田所に出会った事
田所の助けで私がママを殺害し、八神を自殺に追い込んだ事
それで今の状況にいる事…
「私を逮捕しますか?」
そう詩織さんに言った。
詩織さんになら捕まっても良いと思った。
「私は麻里奈ちゃんと同じ一般人だよ。警察でも無いわ…」
そう言って私を抱きしめていた。
「私は麻里奈ちゃんのお母さんなんでしょ?」
「…うん…」
「お母さんはね、娘のどんな事でも受け入れるのよ。辛い事も苦しい事も。」
「うん。」
「麻里奈ちゃんは優しくて…強い子ね…」
「そうかな…」
「私の娘だった…梨沙も麻里奈ちゃんみたいに強い子だったら…私の人生も違ったのかも知れないね…」
私たちは同じ世界線に居たなら…ずっと平穏に生活出来ていたのかも知れない…
○○○○○○○○○○
「それから詩織さんの紹介で、まあ斡旋業者でバイトみたいな事を始めました。」
「へえ?どんな?」
「詩織さんも隼人の事が片付いて娘の仇の男も自殺して、気力を失ってたんですが。」
「ふむ」
「友達になった人から紹介されて、まあ…所謂始末屋って所でしょうか?で働き出したと。」
「何だか物騒な紹介制度だね。」
「そこで依頼された仕事をこなす…まあ、詩織さんが今まで個人でしてた事が業者を通す様になったって感じみたいです。」
「へえ。まあ裏家業って感じ?」
「ですかね。始末相手は警察では捕まえられ無い様な悪人や権力者みたいなんで。田所さんのやってる事に近いかもですね。」
「成る程ね」
「此方はキチンと金銭をやり取りするんである意味ドライで割り切ってる感じもしますね。」
「まあ、僕は個人的な趣向だからね。その点は違うのかな。」
「ですね。」
「君の片割れ…綾って子はどうなったのかな?」
「綾は…」
隼人をホームから突き落としたのは綾だった。
あの後、隼人が綾に横恋慕して揉めた事が明るみとなり隼人の意識が戻らないまま、隼人と小百合は婚約破棄となった。
その後、小百合と綾は家を出て同居を始めたらしい。
私の片割れは、やはり自分の力で世界を押し開いて、大切な人を見つけて共に歩み始めていた。
私と綾はやっぱり同類だったんだなって思った。
多分二度と会う事は無いと思うけど…
「それじゃあ、麻里奈ちゃんが高校卒業のお祝いに、僕からも。」
「なんですか?」
中学入学した時は確か八神にアナルプラグ入れられたが…
田所は私に何をする気だろう…
少し身構えていた。
「今日で麻里奈ちゃんには免許皆伝を授けよう。僕からも卒業だね。」
「そうですか。」
少し肩透かしを食らっていた。
「これからは麻里奈ちゃんは自分の信じるままに優雅に深海を廻遊して欲しいな。」
「まあ、頑張ります。」
「たまには師匠に話も聞かせてね。」
「面白い話は期待しないで下さいね。」
「あと、薬物の入手ルートは自分で開拓してね。僕と同じルートだと何方かが捕まった時に直ぐに割れてしまうからね」
「やはり田所さんは抜け目ないですね。」
「僕は行き着く先は高木組になるだろうから…オススメは敵対勢力の八代興業かな。」
「分かりました。探ってみます。」
「相変わらず光太郎くんと組んでるのかな?」
「相変わらずですね。腐れ縁になってますね。私の事女とも男とも思ってないですよ。甘味処か財布位に思ってるんじゃないですか?」
「ははは、あの光太郎くんが懐いてるんだから麻里奈ちゃんも相当な人タラシだよ。」
「そんな気全くしませんが。」
「じゃあね。仲良くね。」
「ハイハイ。」
綾と小百合はこんな感じになったみたいです。




