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深海  作者: 水嶋


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16/26

見送り

「綾の居た施設で働いていた職員…柿安紫苑、カキヤスホールディングスの会長の息子」


「なにそれ、そんな人が施設の職員!?」


「その前は中学の教師」


「益々謎の経歴…」



今日はアンジエリーナのモンブランを頬張っていた。

おフランス仕込みの頭痛がしそうな程の激甘だ。

しかも現地レギュラーサイズのデカい方のやつ…



光太郎はいつもどうやって調べてくるのか…

多分犯罪スレスレな事やってそうだから深くは知りたく無いが、いっそ探偵にでもなれば良いのにとも思う。


そうなると高くつきそうだから言わないが。



「まあ、柿安はロリコンだね。子供の盗撮やら悪戯やらしてたみたいだし。教師はその為だろうね。」



ブルータス、お前もか…


何処もかしこも、石を投げればロリコンに当たるのか?この国は。



「で、その詩織の娘の件でまあ、親の力で何とかしたみたいだけど児ポとか、未成年への淫行で結局実刑にはなったから、社会活動の一環で施設で働いてたみたいよ。経歴は隠蔽してるみたいだけど」


「成る程ね」


「その柿安ってやつの居所も調べたけど。どうする?」


「それは…」




「多分詩織はその場所知ると決行するだろうね。」


「だね。」



「そうしたら…多分…」


「だよね…」



多分…


詩織さんは無念を晴らしたら…


今まで突き動かしていた恨み、憎しみ、言わば原動力が消えたら…


恐らくきっと…




私は柿安の事を詩織さんには伝えられなかった。




○○○○○○○○○○




そんな風になんだかモヤモヤした気持ちで過ごしていた。


やがて3年生になったある日、大学2年になっていた隼人に告げられた。



「ゴメン…麻里奈ちゃん…俺、初めて本気で好きになった人が出来た…別れて欲しい。」



それって私は本気じゃ無かったって言ってるよね?

まあ、お互い様だけど。


その言葉、他の子に言うと刺されるかもよって思ったけど、いっそ刺されろと思い黙っておいた。



「ふうん…どんな子?教えてくれたら大人しく別れてあげる。」


「その子は…顔に痣もあるんだけどね…心が綺麗な子なんだ…」



まあ、私の心は散々泥水被って逞しく毛が生えておりますよ。

まあ、それは良いとして



て事は…


多分相手はやっぱり綾なんだろう。

上手くいってるのか?

詩織さんから情報が無いからイマイチ分からない。



どうやら他の子にも同じ様に手を切っている様だった。


このダメ男の隼人に両家大物の親同士で決められた小百合との婚約破棄とか出来るのだろうか?


色々疑問だった。




そう思って過ごしていたある日、ニュースで流れて来た。




『柿安紫苑29歳、睡眠薬を服用して浴室で手首を切って湯船に浸し自殺と断定』



『御子柴隼人20歳学生、駅のホームで女性と口論の末、誤ってホームに転落し電車にはねられ意識不明の重体』






○○○○○○○○○○





「麻里奈ちゃん、久しぶりだね。連絡出来なくてゴメンね。」



「詩織さん、大丈夫でしたか?」



久々に詩織さんから連絡が来て会っていた。



「何とか…全て片付いたよ。時間かかっちゃってゴメンね。」


「詩織さんは…この後どうするんですか?」


「私は…この後会わなくちゃいけない人がいるの。」


「それは…警察ですか?」


「ふふふ。違うわ」


「じゃあ!?」




娘に会いに行くんですか?


死ぬつもりですか?


…とは言えなかった。





「詩織さんは私に自分の事をお母さんと思ってって言ってくれました。」


「…」


「私は詩織さんに…お母さんに話さなければならない事があります。」


「…」


「私は詩織さんを待ってます。会わなくちゃいけない人に会った後…私に会いに来て下さい。」


「…」



私は詩織さんが帰って来たら…


私が今までやって来た事、されて来た事を告白しようと思った。

まるでお母さんに甘える様に…



「それでは…行ってらっしゃい。」






「行ってきます。麻里奈ちゃん。」


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