羅針盤
遂に因縁のあの人が再登場です
「そう…危ない思いをさせてごめんなさいね…でも随分助かったわ。」
「いえ。お役に立てて嬉しいです。」
「私も今は一般人だから…色々調べるのも大変でね…」
「?」
「私は元警察官なのよ。」
「へえ!そうだったんですね!」
「今はこの通り普通のおばさんだけどね。あはは」
成る程…
警察官なら男女問わず武術等の心得がある筈だ。
この人めちゃくちゃ強いのかも…
多分拳銃とかも使えるんだろう。
私や田所には無い本物の正義…に突き動かされているんだろう。
「詩織さんはこれからどうするんですか?隼人に近付くのは難しそうですが…」
「そうねえ…私は見ず知らずの他人のおばさんだからねえ…隼人の婚約者の方の家に入ってみるわ。」
「そうですか」
「隼人は定期的にその家に通ってるって香織ちゃんのお母様から教えてもらったから」
「へえ」
「そのお宅もお金持ちだけど裏社会との繋がりは無さそうだから…多分隼人の家に入り込むより安全だと思うわ。」
「成る程」
「隼人の家より立派だから、お手伝いの募集も有るし。そこで隼人には事故にあってもらうわ。」
「そうですか…」
普通のおばさんが言うと逆に怖さが増すなって思った。
「その婚約者のお家は…どんなお家なんですか?」
「三ツ矢グループって幾つもの事業をしている大企業よ」
「へえ。そこの娘ですか?婚約者は」
「そう。三ツ矢グループの会長の娘、三ツ矢小百合って言うのよ。確か麻里奈ちゃんの2つ上、隼人と同じ歳かな。」
「へえ…」
会社名は聞いた事がある大企業だが、庶民の私には関わりの無い家柄と人物だった。
流石に隼人に婚約者の事を根掘り葉掘りは聞けないので、どんな人物かは分からなかった。
○○○○○○○○○○
「で、分かった?」
「まあね」
結局頼れる甘党塩対応の光太郎に調べて貰っていた。
今日は先払いでニューヨークチーズケーキとバナナタルトとホワイトラテとお土産用にチョコチャンククッキーを買わされていた。
「三ツ矢小百合、今は○○高校3年、隼人とは子供の頃親同士の口約束で婚約、お互いそれ程思い入れもないのか、アッサリ了承していて、それぞれ都度交際相手もいたがお互い干渉も無く特に揉めてもいない。」
「ふうん」
恋愛経験の無い私にはよく分からないが、香織みたいに盲目的にはならず、お金持ちの子ってこう言うライトな恋愛をする物なのかなって思った。
「三ツ矢家の家族構成は父赤彦、母美智子、兄剛、この兄が次期跡継ぎとなる予定。」
「ふむ。」
「で、最近父の婚外子…まあ不倫相手の外に作った女の娘を引き取っている。名前は綾」
「綾!?」
「そう。母親が事故で亡くなって施設に少し入っていたが、赤彦が引き取った」
「綾って…」
「瀬谷綾。今は三ツ矢綾かな?顔に痣がある。性格は陰気、口数も少なく高校も通信教育」
あの綾が…
まさか隼人の婚約者の家族だった。
あの母親は事故で亡くなったのか。
私のママは…まあ私が手を掛けたのだが今は居ない。
やっぱり私らはどこか似ているのか…
しかし相変わらず陰気で無口
あれから変わったのかと思ったが変わっていなかった様で安心と失望と言う両極端な思いを綾にしていた。
しかし…
まるで何かに導かれる様にまたあの綾と巡り合うとは。
思えばあの下らない私の世界に綾が石を投げつけてきてから状況が変わって行った。
あの事件から私はカウンセリングに通い、
八神と出会い、都合良く玩具にされ、
そこから田所に出会い田所の思想に触れ、
ママを支配してママと八神から解放され、
そこから自分を知りたくなって、
香織を捨てた隼人に興味を持ち、
詩織さんと出会って…
綾と私は陰と陽…向かい合わせで元が同じの同類みたいに思っていた。
田所は私の事を片割れだと言ったが、私にとっては綾が片割れの様に思えた。
綾はこの先どの様に進んで行くのか…
私の行く末…指針にもなるのかも知れない。
そう思えて私はこの件を最後まで見守ろうと思った。




