くだらない世界
「袋はお付けいたしますか?」
「はい。」
「スプーンはお付けしますか?」
「はい。」
「5620円頂戴致します。」
「じゃあバーコード決済で。」
「有難う御座いました〜」
「ただいま…」
パチっ
暗いリビングの明かりをつけた。
『食事は冷蔵庫に入ってます。サプリは忘れずに飲みなさい』
テーブルに置かれたメモを確認してキッチンへ向かい冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫にラップに包んである豆腐ハンバーグや野菜の煮物、サラダなどが綺麗に盛り付けられたワンプレートを取り出した。
ドサッ
そのままゴミ箱へ捨ててキッチンを後にした。
ドサッ
そのまま2階の自室に入りベッドの上に腰掛けた。
さっきコンビニで買ってきた物をビニールから出してベッドの上に広げた。
カップに入ったプリンやデザート、プラスチックの容器に入ったケーキ類、袋に入った菓子パンやドーナツやポテチやお菓子…
次々に開けて次々に食べて行った。
「うぇっ」
粗方食べ終わると胃がムカムカしてきた。
トイレに入り全て吐き出した。
○○○○○○○○○
パンパン
「はーい!ここまで〜!」
「有難うございました〜!」
「じゃあ来週はAパートとBパートを合わせて通すから皆様各自練習しておいて下さいね〜!」
「はーい!」
「麻里奈、後半動き遅れてる。」
「はい。ごめんなさい」
「表情死んでるから。絵梨花ちゃんの笑顔、見習いなさい。」
「はい。ごめんなさい」
「もっと気持ち込めなさい。キララちゃんは同い年でもう日曜劇場の子役決まってるんだからね?」
「はい。ごめんなさい」
「明日は横山先生の演技指導の個人レッスンだから、帰ったらちゃんと台本読み込んでおくのよ。」
「はい。分かりました」
「この後は撮影会だからね。ちゃんとやるのよ?」
「はい。分かりました」
「麻里奈だけが私の希望なんだからね。」
「はい。ママ。」
「麻里奈ちゃーん!コッチ向いて笑顔でダブルピースしてー!」
「はい。」
「可愛い〜!」
そう言いながら何の仕事してんのか分からない中年のオッサンが私の足元に寝転がって下からカメラを向けて撮影している。
「じゃあ、次はジャンプして〜」
言われた通りぴょんぴょん飛び跳ねた。動画モードで撮影していた。
「次はねー、この長〜いアメを舐めてね〜」
そう言われてグレープ味の15センチ位でウマイ棒位の太さのアメを出した。
「舌を出してね〜!ペロペロして〜!上目遣いでね!」
「はい。」
そう言って顔の上からカメラを向けて撮影していた。
○○○○○○○○○○
「瀬谷さん〜昨日とおんなじ服着てる〜!汚ったな〜!」
「顔にもでっかいゴミが付いてるよ〜あはは〜お風呂入ってんの〜?くっさー」
学校の同クラの瀬谷綾は顔に痣も有り、いつも俯きがちで口数も少なく地味な服装でオドオドボソボソ喋るジメッとした奴だった。
目に入ると無性にイライラしていていた。
私はキッズモデルをしていていつもキラキラした服を着てる派手なタイプだった。
取り巻きを連れて学校ではカースト上位らしく女王の様に振る舞っていた。
「麻里奈ちゃんがJSティーンで着てた服可愛かった〜!」
「あはは、有難う〜、あの服人気で今買えないってよ〜」
「やっぱ麻里奈ちゃん効果かなあ!凄〜い!」
あの服のブランドは元々人気で常に品薄だ。
そして私はメインページでなくて、着回しコーデの一例の数人のモデルの中の1人で隅っこに掲載されていた。
『麻里奈ちゃんのお父様がねぇ…だってアレでしょ…一回り位違う若い女の子をさぁ…』
『ママもねぇ…対抗してかお化粧もアレだけど…もう麻里奈ちゃんに依存しちゃってねぇ…子育てってよりも認証要求の為の道具よねぇ…』
『麻里奈ちゃんも言っちゃアレだけど、性格あんななっちゃってるし子育てちゃんとしてあげてるのかしらねぇ…』
授業参観日の後、校庭でぺちゃくちゃ喋ってた、クラスの母親達の会話が聞こえた。
ママは料理研究家などと胡散臭い仕事をしていて、本を出したりたまにテレビの料理コーナーで芸能人と一緒にまるで幕の内弁当の漬物のようにオマケの様に出ていた。
それを自慢げに話してきていつかは私と共演するのよって言っていた。
パパはママと仕事関係で出会い、会社員だがイケオジだったので常に女が絶えず仕事と称して外泊も多かった。
ママはこのオバさん達の言うように、私を可愛がると言うより依存していた。
しかし、他人の家の事に首を突っ込んでる暇があったら自分の子供の心配をした方が良いだろう。
この間アンタの息子は万引きをしていたし、アンタの娘はマッチングアプリで年齢を中学生と偽ってパパ活をしている。
本当にこの世界はくだらない。




