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ペペロンチーーノ  作者: 白咲・名誉
第2章オードヴル 【プリモ・ピアット】
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第8話【この男、凶暴につき】


 生きてる人は平等だとは笑わせるな。育てられた考え方が違えば同じ意味でも受け取り方が違ってくる。それで平等じゃなくなる。


 タクシーの後ろ窓を目に力を入れて眺める。もう小さな点になった発砲してきたヤバい男。


「真昼間からチャカ振り回すなんて頭おかしいだろ」


 状況を飲み込めないでいた俺は座っていたのに息を切らしている。


 改めて周辺を見てみた。建物は一つあれば数メートル先にもう一つ、そう言う等間隔。少し遠くには数棟の古い団地らしき建物がある。


 スーパーらしきところや病院もスマホで位置検索すると一つ二つしか存在しない。


 コンビニも同じくらい。しかも22時には閉まるとのこと。


 空を見上げる。なぜか紐で結ばれた靴2足が電線にぶら下がっていた。


「だからあいつはここで薬を売ってたのか」


「なんのことです?」


「この町が日本じゃないのははっきりしたな」


車が急に停まる。


「そ!それで、どうすればいいですか?」


 運転手も俺と同じで冷や汗をダラダラ流して動揺していた。


「なにが?」


「や、あの、葬式会場に行けばいいんですよね」


「もちろんだ」


「えぇ・・・・・・」


 俺は帰りたい。スマホのナビによるとここから近いところにコンビニがある事を俺は告げる。


「ここら辺で一息吐きたいですね」


 ミラー越しで運転手は物乞いをする犬の顔真似をした。


「勝手にしろ」


刺鬼さんは言った。俺は制止の意味を込めて言う。


「おまえは仕事優先じゃないのかよ」 


「タクシー業は休業になりました」


 一軒家が並ぶ道に入る。普通の日本らしい建物。でも後からペンキで異国語の落書きがされている。


「ひっでぇ有様だな」


ゴミ捨て場にはカラスが集る。電灯のカバーにはひび割れがあり、路面はズタズタ。


コンビニに到着。早速外へ出ようとする運転手を刺鬼さんは引き留める。


「ペペロンチーノとお茶とコーヒーと電池とカッター、あればこれで買ってこい」


財布から2万円を渡す。


「分かりました!」


俺と刺鬼さんは用事がないから車内で過ごす。


運転手は外へ駆ける。逃げる様子もなく店内へ。


 彼が外へ出た時にズボンの股が黒く湿っていた。

恐ろしさのラインを越えるなんて普通に生きてればそうそうない。あれの頭がおかしいんだろ。


「おいなんか臭うな」


「はいタバコ臭いっす」


「違え。周り見てみろ」


 コンビニの中とそれからこの車全体に数十人が束になって集まってきている。


「刺鬼さん!囲まれましたっ!!!」


 刃渡り6センチはある包丁を持つ奴がいれば金属バットや木材にパイプ棒を持つ奴らが足並み揃えてこちらに向かっている。


「デケェ声出さなくても知ってる」


「なんでわかったんでしょうか?」


「あいつらは国が違うだけでヤクザなんだからそんぐらいわかんだろ。外出ろ。どうやらあいつら道具は振り回すモンしかねぇしやれんだろ」


 そう言って刺鬼さんは外へ出る。表情は硬いがニヤニヤ笑う顔がはみ出ていた。


俺も外へ出た。


「把药还给我、我哥哥哭了,因为你们把他带走了(薬返せ。弟にはお前らに恐喝ゆすられたと泣きついてきた)


相変わらず何言ってんのかさっぱりだ。


 とりあえず口を開く奴はそいつの後ろに立つ、さっきの発砲野郎を顎で指し示した。


そいつは怯えた表情で頷く。周りは肩で笑う。


つい舌打ちが出る。


「日本語で話せや」


 小さい声だったが心の声が漏れた。刺鬼さんは圧迫感のある声で話す。


「如果有士兵似乎不愿意讨论事情,您是否担心?(話し合う姿勢とは思えない態度だな。兵隊いなきゃ不安か?)」


やってやった、という風に口角をあげて笑う。


 ニヤニヤ、ヘラヘラと弄ばれている居心地の悪さに背筋がかゆくなる。


 この集団のリーダーらしき人と刺鬼さんは一言も発さず手、足を回す。


 いつ切られてもおかしくない火蓋は刺鬼さんの拳から始まった。


 初手で殴られた奴はリーダーらしき人の近くにいたやつ。


 突風が吹く音のあと、頬骨が割れて突き出た。驚く間もないままに眼、手、足、睾丸、一人一人を多種多様に痛めつけた。

 

俺でさえ血飛沫が止まらない有様にゾッとする。


 敵側はヤらなきゃヤられると種の本能が警告を鳴らしている。


 真っ向から振りかざされた鉄パイプから風を切る音がした。


「うわっ」


 すんでのところで身体のどこにも当たらずに済んだ。


 コンクリの床を叩きつけられた鉄パイプの空洞から高い音が鳴った。俺はそいつに右ストレートを撃ち込んだ。


暴力は暴力を焚きつけられる。俺もあいつらも。


 刺鬼さんの味方で且つ、体格や風格で見比べたら弱そうな俺を奴らが襲ってくる。


━━━喧嘩にはセオリーがある。


 俺は往来、喧嘩は強くない。一対一ででも、実力が同じくらいでやっと。


 喧嘩に慣れると殴り方や身のこなし方やブラフの建て方を覚えて立ち回る。


 実力によるが相手が3人までなら勝てずとも負けない。その自信がある。


 3人以上を相手にする場合は後ろに人がいないかを目視確認からしなきゃいけない。


次は全体を一瞥し、気の強い人を探した。


 腕に自信があるやつは眉をひそめてたりするから分かりやすい。


 大概は部下や喧嘩の序列内で低い奴から先兵に使われる。


 一目散でそいつの元まで駆け寄る。それまでは身体中を蹴られたり棒で殴られても我慢。


 顔面に衝撃が走って鼻血が流れ、ふらつきから後ろへ下がってしまった。俺の目にはそいつしか映らない。


 猛攻は止まない。背中を叩かれて、痛みは感じないが痺れを覚える。そいつは折れた木材を持って震えていた。


 暴力の快感をこれまで知らなかったようで甘美さに驚いていた。


 俺はそいつの道具を奪う。走っていく。人垣を超えて辿り着く。


 木材の突出した部分をそいつの太ももに突き刺した。


 痛みにもがいて倒れる。胸の上になった俺は殴った。


 どっちかの意識が途切れるか俺の拳が割れるまで続ける。


 強い奴には出来る限り残忍な一撃を放る。そうすると全体の士気が下がる。


そうやって一人一人の戦意が萎える。


 大勢を相手にして最後の最後に勝つのは自分であるには殴られないようにしなくてはいけない。


 刺鬼さんがいるから俺がやらなくても意味はないんだけど。


時間にすれば10分は掛からなかった。


 35〜40人、漏れなく全員が怪我しているコンビニの駐車場。



 刺鬼さんに喧嘩を売った奴は地面に腰を据えて後退りをする。


「ゆ、ゆるして、くだ、ざい。ぼぼぼぼぼく、間違えていた。もうし、しないから・・・・・・」


 日本語を使って許しを乞う。恐怖に負けたあいつは泣いている。


だめ


「不要告诉任何人!(だれにも言わないから)」


「お前が誰であっても、手を出したらいけない相手はいるんだ。日本語は分からなくても、もうわかるよな」


刺鬼さんはそう言ってそいつの首に手をかけた。


 酸素の道を閉ざされた。舌を出して小刻みに息をする。顔が紫色にみるみる変わってゆく。


目を瞬かせながらもそいつは睨んでいた。


「你认为你在和谁打交道?(誰を相手にしてるつもりだ)。目前主力分头行动,但我们一定会杀了你。(本隊は今、別で動いているが必ずお前らを殺す。)


 そいつは何を言ってるのか解りかねるが刺鬼さんの手が離れた。


 いきなり立ち上がると俺に叫ぶ。血相が変わっていて青ざめている表情をしていた。


「運転手を連れてこい!今すぐだ!!走れェッ」


 なんのことか一瞬戸惑ったが言うことを聞かないと俺の身が危ないと理解した。


 あいつは息を整えながら首に手を当てて優しく撫でていた。


「我会让你害怕你毁掉了谁的岛。(誰の島を荒らしたか怯えさせてやるよ)」


俺たちを睨んでいたが俺は無視した。


 すぐに走ってコンビニに入る。そいつはレジの前で呑気に清算を待っていた。


「おいっ!急げ!」


 そいつの財布から刺鬼さんからもらった2万円を店員に投げる。


大きなレジ袋2つをおれは持って走った。


「うわ!なんだこれ」


 倒れている奴や肩を担いて帰ろうとしている奴が多くいるこの状況に運転手は驚く。


足の踏み場が分からず慎重に歩こうとしている。


「んなもん後だばか」


 つい俺が突っ込んでしまった。説明を話すのが手間であり、刺鬼さんの手を煩わせるほうが厄介だ。


 そいつはポケットから鍵を取り出すと刺鬼さんに奪われた。


運転席に座るとすぐさまエンジンを起こす。


「今すぐに葬式に行くぞ」

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