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ペペロンチーーノ  作者: 白咲・名誉
第1章 【アンティパスト(前菜)】
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第1話【自分が拉致されるまでの経緯】

つまんない映画って導入から観たくなくなる。でもこの作品はこれから面白くなる。

 

誰かが言った。


警察とヤクザの仕組みはおんなじなのだと。


 我が身を守る金をヤクザに払うとショバ代となり、国へなら税金へと名前が変わる。


 最近はSNSのある界隈で“覚醒しろ”と言葉が流行っていた。

 この国は平民と選ばれた“富ある者”に別けられている。

 還元されない税金を国民は喜んで差し出す。この構図か理不尽だと、この法律は穴だらけだと流布されている。


 大仮眠団スリーパーズの目が覚めた。奴等は大衆も無能な政治家でさえ知らずに忍び足で近づいてくる。


選別なんてない。


 もう既に始まったのだ。白蟻の大群が全て食い切るまで歯止めが効かないように。


始まってしまったのだ。





 ピピュピピュィピピピピピピピィュ 6拍子のズレた電子音が気持ち悪い。



 男が目を覚ます。目の開きが軽くて、最近の睡眠の中では幾分かマシなくらい疲れが抜けていた。


 しかし夢心地な気分をかき消してくるかびの臭さに鼻の奥がこそばゆくなる。


「どこだここぁ」


 薄く明かるんだ青白い光線がカーテンの隙間に漏れ出ていた。


 粘り気混じりの唾を吐く。じめっと生乾いた口の中が気持ち悪い。


「うあ゛っ」


 身体の自然な動作で動いたら両手首に焼ける痛みが走った。


 自分の身体を自由に動かせない不自由なまま訳も分からなくて身体を捻じって痛みが増す。


「いったぁっ・・・・・・・」


 ようやく動かない方が楽だと理解し、首を後ろへできるだけ回して確認する。


「んだよ。これ」


両手を麻縄で硬く縛られていた。


 頭がクラクラする意識の中で何処だかわからなくて辺りを見回す。


 一面打ちっぱなしのコンクリート壁。足元にはブルーシートが敷かれているあたり、他は殺風景で人間味のするものがなかった。



 うす暗い室内では唯一の白熱の電球が揺れる。鉄パイプに座らされていてようやく、自分が監禁されていることを理解した。


 カチャカチャと音が近づいてくる。これは金属物同士が触れ合う音。大きな唾を飲み込もうとしたが気道が塞がって咳き込んでしまう。



 男はなにをされるのかを想像してしまった。今の状況は仕事柄、知っていた。それは拷問だ。だが、鼻に入り込んでくる香ばしく焼かれたニンニクの匂いに腹が空いてしまう。



「微かな旨みの匂いが漂うだろ。これがお前の死臭だ」


 姿こそ現さないが男の野太く低い声はライオンが吠えたように、おれの腹を最奥から震わせた。


「やっぱバレてたんだな・・・・・・」


 男は恐怖から唾液が酸っぱくなった。美味い飯とか酒を口にしたい。女もしこたま抱けば良かった。


自分の死を連想してしまう。


 やり直しの効きそうな後悔ばかりでも涙を流す準備を身体が整える。


 この男については誰かも知らない。でも相応の処遇だと思うと当然の報いだ。


 これから拷問を受ける。ヤクザの稼業をしていた人間なら当たり前の世界。


死んでも金が出なければ骨も痕跡も消される。


「くそみてぇな人生だなぁっ。こんな死に方は情けねぇ」


「これから出来立てを食うんだから汚い言葉を使うな」


 落雷のような野太い声の男が正面から歩いてくる。暗がりから現れた男は、声の印象に似合う太い体格をしている。


 頬には無駄な肉は付いておらず、りんご大くらいの手に丸皿とフォークを持っていた。


「お前誰なんだよ・・・・・・。上の指示に従ったってだけで俺はなんも知らねーんだ」


 惨めに顔を歪ませてしまう。鼻や眼、口と出せる部分から塩辛い水が止められない。


全てを白状しようと決めていた。


 とんでもない気迫に怯んでしまって息が詰まる。逃がしてくれる余地はないと、動物的な本能が告げている。


ズ、ゾゾゾゾゾゾォォ。啜る音がした。


「んーまぁ〜。ほんなとこらとほもった。ホマエは末端は末端の良いところまりだろうし」


 コップ一杯の水を飲む。俺も口渇感で喉仏が波打つ。


「まだ先だが必ずお前はオレの質問には答える」


 ズ ゾゾゾゾゾゾォォ。また一口で啜る。


「ほれでホマエは、誰だ?」



ーーーーどうしてこうなったのか。時間は遡る。


東京にて。

お時間割いていただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 裏社会の描写が素人の私にも良く理解できました。 次話以降も楽しみに読ませていただきます。 私は北海道札幌出身で現在東京在住なので、特に引き込まれました。 [一言] こちらの作品とは関係な…
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