#34 合成獣戦 Part2
そうか。
この合成獣は、コボルトと蠍の合成獣じゃない。
コボルトと蠍と人間…いや、コボルトと蠍の合成獣を、人間が取り込んで超人へと進化したという方が正しいか。
何の意図だ?
十中八九異世界人だろうが…
世界侵略?こんな世界、侵略してどうする?
ただ破壊衝動に突き動かされてる自我のないやべえ人間の可能性もあるぞ。
やべー、合成獣を取り込んだ人間が狂気の沙汰でしかない。凶気の沙汰といったほうがいいか。
いかれてんな。
ってことは、自我がないか、相当頭がおかしいかのどっちがだろうな。
話しても、通じるわけがねえ。
そうしている間にも、合成獣の断面はボコボコと盛り上がって再生を続ける。
叩くなら今のうちか。
「みんな、今のうちに殺すぞ!!!」
「了解!!」
「Wind(F x,y,z:0,0,0 T x,y,z:0,100,5000)!!」
「りゃぁぁぁぁ!!!」
「抜刀術:鬼神乱舞重連!!!」
「月光魔術:ムーンライト!!」
「行け、式神!!」
「クー!!」
「キュー!!」
「芳香連理っ!!」
「ワフ!!」
俺達の総攻撃を受けて、ダメージはある程度負っているようだ。だが、再生のほうが速い。
「くそっ、どうしたらいいんだよ!!!」
「ブレス!!!」
ヴァーミリオンのブレスが弱点みたいだな。
豆人の火属性魔法でも少しダメージを受けているように感じられる。
「みんな、火属性がこいつの弱点みたいだ!!」
「了解!!」
「クー!!!」
アイオーンは蒼炎を出して応戦している。
俺も、雷で内部から焼こうと考えたが、それはかなり有効だったようで、しびれて痙攣している間に味方がダメージを与えるという構図ができあがっていた。
HPは確実に減らせている。だが、合成獣の体の再生は止まらず、それどころか新しい形を形作っている。
「まずいな…一旦攻撃停止!!相手の攻撃に備えろ!!」
「なぜだ?」
「こいつの再生が終わるまでにHPを削りきれるとは思えない。だから、あえて下がっておこう!!」
「そういうことなら!!防御、石神!!!」
エルラの式神の一つ、石神が、前に出て合成獣の攻撃を受け流す準備をしている。
「なら、俺は竜嵐一過の準備しとく!!!」
再生が、推定あと3秒で終わる。
3、2、1。
「なっ…さっきより大きい…」
そう、合成獣は、上半身人間、下半身が蠍で、コボルトの頸が2つ横から生え、腕は六本、人間、コボルト、蠍の鋏がそれぞれ一対ずつという、さっきよりもより強力な姿となっていた。そして、人間の腕には盾と剣を持っている。
「シャハハハハ!!雑魚ども!!俺をこの形態にできたことは褒めてやる!!狂喜乱舞して地獄に行くんだな!!」
はい、頭おかしいの確定。
まともに会話できるとは思わないので、黙って守りに徹する。
「フヒャヒャヒャハ!!喰らいやがれ!!巨爪!!」
「がっ!!!抜刀術:竜嵐一過!!!」
「ハハハハハ!!無駄無駄ぁ!!!」
「石神ぃ!!硬化ぁ!!!」
石神も砕かれる。
「芳香連理ぃ!!!」
効果なし。
「喰らえ大槌!!ファイアースタンプ!!!」
スルトの大槌も軽くいなされる。苦手属性である炎を嫌そうにしつつも、いと簡単に払いのけられる。
「フヒャヒャ!!久しぶりにあばれんのって気持ちがいいもんだなァ!!!ハーッハッハッハ!!」
そして剣を振り回す。
自分の身の丈程もある大剣を、軽々と振り回して襲いかかる。
剣ばっかり気にしていると盾が当たる。
竜嵐一過でなんとかしのいでいるが…
しかたない、獄門を使うか。
「みんな、離れて!!俺、獄門使う!!」
「了解!!みんな、引け!!!」
「おらあ!!獄門っ!!フリーズ!!」
フリーズはさすがユニークスキルというべきか少し効果があるようで、少しだけなら動きを止めることができる。
その間に超音速で接近し、獄門を使いながら鬼神乱舞をぶちかますという戦法を取っているが、いかんせんMP消費が激しい。
なので、みんなにも後ろから遠距離攻撃を頼んでいる。
「うりゃうりゃうりゃぁ!!!まだまだ!!」
「ハッ!!それだけか!!手応えねえなァ!!」
「グハッ!!」
盾で吹き飛ばされた。
だが、その盾には今までにないほど力がこもっていた。
つまり、俺に脅威を少し感じたということだろう。
行ける、絶望的な戦いではない。
このまま、押して、俺達が勝つ!!!
だが、そんな期待は木っ端微塵に吹き飛ばされることになる。
「ハハハハ!!もう俺は充分楽しんだ!!じゃあな、雑魚ども、ゴミども!!」
そう云うなり、地面を叩いた。
「冥土の土産に教えてやろう!!コレは俺のレジェンドスキル、奈落だ!!目に焼き付けて死ぬんだな!アーッハッハハハハァ!!!」
その刹那。
急激に、俺の前に穴が空いた。
吸い込まれる。
間一髪尭雲烈風を出して避けたものの、今も吸い続けられている。
「さあて、どこまで耐えられるかな?」
「キュー!!」
やばい、アテーナが!!助けないと!!
でも俺にもソンナ余裕がないんだな。
ええい、迷ってる暇はない!!
「アテーナ、待ってろ!」
「キュー!!」
「ハハハ、もういいって、いい加減地獄落ちろよ〜」
「ガッ…舐めんなよ!!」
「悪あがきはもう充分だぜ!!ヒャッハッハッハ!!」
俺はしっかりとアテーナの翼を掴んだ。
重い。
だが、俺は天高くアテーナを放り投げた。
それにつづき、俺も天高く飛ぶ。
「こんなもんなぁ、飛んじまえば大したことねえんだよ!!」
いま唐突に思いついたアイデアだが、意外とうまくいくもんだな。
「みんなも上がってこいよ!!」
「うっしゃおら!!」
なんとか全員、空中戦に持っていくことができた。
「無知だなぁ。ほんと、そろそろ悪あがきやめよう?」
「やだね〜。ばーか。」
「は?お前らの分際で?」
地味にキレられたな。
こうして精神で少しづつ揺さぶっていくのだ。
「ええい!!奈落!!」
「おっと、空中にも奈落出せんよかよ。それは予想外だったな。」
スッ。
避ける。
冷静に考えれば、避けるのはそう難しくない。
ただ、反撃の一手がなかなか加えられない。
「さあ、死ねしねぇ!!」
無視して避けに徹する。
「シャハハハハ!!言ってることとやってることが合わないぜ、余裕ねえじゃんか!!」
確かに、余裕はない。
でも、不思議と怖くはない。
むしろ、戦慄するというか、なんというか、こいつを倒したいという衝動に駆られている。
こうやって人間はバーサーカーになっていくんだな、って思った。
バーサーカーにならないように気をつけないとな、って思った。
突然、奈落が乱れる。
チャンス!!
と思った束の間、剣と盾、それに爪や鋏、毒まで使って攻撃してきた。
「ちょっ!!まずい!!」
「ハハハ!確かに、お前らちょっとは遊びがいがあるな!!いいぜ、本気は出さないけど、せいぜい俺がいい感じに葬ってやるよ!!」
まずい。このままだと袋の鼠だ。
これを突破するには、速度が必要だ。
そうだ、俺には「超音速」という素晴らしいスキルがあるじゃないか。
そうか、そうだな。
「 超音速 !!」
「フハハハハ!!羽虫ども、無駄だぜ!!俺の圧倒的な力に取り込まれて俺の贄になれェ!!」
「断る!!」
「生意気だな貴様ら!!」
どうやら激昂したようだ。
毒の弾幕も飛ばしてくる。
やばい、こんなに怒らせなければよかった。
避けで必死。
なにか策は…
ない。
絶望的。
とりあえず思いつくまで、がむしゃらに避け続けよう。
そうして、策を見つけるしか道はない。
生か、死か。
俺達はふるいにかけられている。
たとえ、99%が死だとしても。
俺は最後まで足掻く。
その覚悟が今できた。




