#24 憎悪
俺は、何もない空間を浮遊していた。
いや、落ちていたというのだろうか。
とにかく、感覚も、何もない。
触覚ってなんだっけって感じだ。
だから、何もなかった。
これは死の前兆か?
それだったら、走馬灯でも見たらいいはずだが…
とにかく、俺は死ぬ訳にはいかない。
だから、なんとかこの空間から抜けなければならない。
俺は、この空間をー
斬る。
そう決意した瞬間、触覚が戻る。真っ暗なため、視覚が戻ったのかはわからないが、とにかく手探りで黄金薙を掴む。
体は動くか?
よし、行ける。
「天空流抜刀術:鬼神乱舞っ!!」
その時、紫色が目の前を走る。
黄金薙が放った、紫電とは違う。もっとどろどろした、汚い紫色だ。
生理的に悪寒を感じる。
そうか、俺は、「憎悪」の中にいるんだな。
なら、話は簡単だ。
ここから、抜ける。
もう一回。
俺は感情を虚無にして、憎悪をなくす。
そして、もう一回、斬ることを試みる。
「覇閃!!」
俺の目の前を紫電が走る。
刹那、背中に、鮮烈な痛みが走った。同時に、視界が青に染まる。
「痛っ!!」
俺の意識は現実に戻った。
どうなっているのかはわからないが、とにかく溶岩から抜ける。
飛行を使って…
ついでに空中跳躍で飛ぶ。
なんとか抜けたか…
俺は手の中を確認する。
そこには、紫電を纏い、少しヒビの入った黄金薙があった。
どうやら、こいつのおかげでピンチを脱出したらしい。
作っておいてよかった。
さて、アースフォールなんだが…
堅すぎる。
なので、総攻撃をしないと一向にダメージが通らない。
俺は、みんなに声をかける。
「一斉攻撃!!」
俺も、その攻撃に加わるつもりだった。
だが、体が、まるで貼り付けにされたように動かない。
極度の疲労のせいだろう。
とりあえず、落ちないようにしないと…
なんとか意識を保ち、黄金薙を一閃する。
当然、威力はゴブリン一匹倒せるかどうかというレベルで弱い。
だが、ないよりはマシだろう。
もう一回、抜刀術ができないなら、小技で、数で、圧倒すればいい。
「天覇八連!」
なんとか、8回、前に黄金薙を繰り出す。
出し惜しみはしない。
「雄伍、大丈夫か?」
「うーん、あんまり大丈夫じゃないが、今ここで俺がサボるのもあれだろ?」
「それもそうだな」
豆人はわかってくれたらしい。いや、俺が強引に納得させたのかもしれないが。
そして、俺はアースフォールから距離を取り、大技を放つ。
おそらく、技らしい技はこれが最後だ。
「空轟閃っ!!」
飛ぶ、俺が今出せる最大威力の斬撃。
これを出し切ったら、もしかしたら俺は倒れるかもしれない。
でも、大丈夫だ。
そのために、距離を取ったのだから。
豆人が、俺に向かって魔術を放つ。
それは、そんじょそこらの攻撃では破壊できない結界。
そして、俺はその結界に包まれる。
幸い意識は保っているか…
問題は、これで戻れるかだな。
空中跳躍は…まだいける。
あそこの陸まで。
俺は、最後の力を振り絞って、陸へ向かう。
大きく、一回飛んで、最高到達点から落ち始めたところで、再び俺の意識は途切れた。




