#10 竜之宮
豆人は、今からどうしようか考えていた。
真っ向から戦って勝てるかはわからない。かといって雄伍や他の仲間に頼りたくはない。前のオーガロード戦だって、雄伍が実質ほとんど戦ったようなものだ。だから、彼奴等には自分が無力だと思われたくない。
いっそのこと最初から芳香連理を使って毒殺するか?勝率は高い。だがリスクも高くはある。魔力が切れた場合は?芳香連理の威力が足りなかった場合は?
不安がグルグルと頭の中を回る。
ええい、もうやってられない。
いや、諦めるな。真っ向から蹂躙して、こちらの力を見せつけてしまえばよい。
ただそれだけの話じゃないか。
よし、今から突っ込む。3,2,1,
ズガガガガラガラドグシャグシャーン!
「「「「「「!?」」」」」」
なにげに脳筋プレー強い。今何が起こったかって?簡単だよ。洞窟の入口をぶっ潰して下位の蜥蜴を潰したのだ。
経験値はかなり入ったか。いや、下位の蜥蜴を倒しただけだ。レベルもまだ6だ。進化がLv125だから、まだ相当先である。
ただ、スキル「鱗」が手に入ったのは有り難い。防御力の少なさをカバーしてくれる。
そうこうしているうちに、上位の蜥蜴が出てきた。グレートサラマンダーや剛蜥蜴など。ちなみに剛蜥蜴の討伐レベルは15。これくらいはいけるだろう。
「光魔術・ムーンライト!」
シュウン
レーザービームの劣化版を大量にぶっ放す。ただそれだけで、ほとんどが殲滅できた。
残るは最上位の蜥蜴や竜たちか…そう思ってもう一度脳筋プレーをぶちかます。
ズガババガガガラガラドグシャダゴグドスガッシャーン!
ちなみにこちらはノーダメだ。
そしてー
蜥蜴の上位種、ドラゴンがその姿を表す。
「ははあ、この洞窟が破られたのなんて何年ぶりだろう。よくここまでこれたね。褒めて遣わそう。」
「結構だよ。俺は最強なんだから当たり前だ。」
「最強だぁ?ならその最強を証明してみせよ!いけ!ワイバーン!アンピプテラ!」
ドラゴンの近衛らしき2騎がこちらへ向かう。それにしても恐ろしい連携だ。絶妙に攻撃しにくい。
だが、
「出力15%。豪雪魔術・ブラッドアイス」
豆人の圧倒的な魔法の前では無意味だった。
砕け散る美しい緋色の氷弾。そして、一瞬のうちに2匹の竜たちを無力化した。
「なるほど。流石だね。ならこれはどうだ?顕現せよ!ウロボロス!」
「なにぃっ!?」
始まりと終わりを司る竜、ウロボロス。
それが今、ここに顕現した。
「どうだい、僕の配下の四天王の一角、ウロボロスは!」
「クッ・・・強い!」
ウロボロスの頸がうねる。次の瞬間、豆人のいた地面が粉々になっていた。
だが、叩きつけられた頭は隙だらけである。
「出力50%おおお!豪雪魔術・ブラッドアイス!!」
緋い氷が、ウロボロスを氷漬けにする。
ウロボロスが火を吐いてとかそうとする。無論、超火力の前に氷は意味はない。
だが、その一瞬が命取りだった。
「光魔術・ライトセーバー!」
豆人の周りの光がウロボロスに結集する。直後、爆炎がウロボロスを包んだ。
「グォォォォォォォ!!!」
「ちっ、殺しきれなかったか」
「なっ…まじか。ウロボロスを倒したか。ならば名を名乗ろう。僕はヴァーミリオン。『十二王魔』の一角だ。」
「っ!!ということは、ここは蜥蜴窟ではないのかっ!!」
「左様。ここは今日から竜之宮だ。僕がダンジョンを侵略して支配下においたんだよ。」
「どおりで変だと思ったぜ…」
「それで、君の名は?」
「俺は豆人。大納言小豆人だ。」
「ああ、豆系列か。」
「知ってるのか?」
「ああ、3000年ほど前に原初の豆が姿を現してね。かなり強かったよ。もう彼は2000年前に死んだが、豆は世界に散らばってるんだよ。多分その辺をぶらぶらしてればいつか会うことがあると思うよ。」
「っ…まじか」
「大マジだよ。僕はブロッケンと仲が良かったから死んで残念だったけどね…そうだ、君と僕で友好提携を結ばないか?君も仲間も一緒に」
「ああ、それは願ってもないぜ。よろしくな」
「よろしく。ってことで君の杖の核がほしいんだが」
「えっこれ?けっこうショボいよ」
「ああ。こちらからはアンピプテラの卵2つを送ろう。どうだ?」
「よし、契約成立だ。はい、核」
「ありがとう。それで、このアンピプテラの卵なんだが、あと一週間ほどで孵化するんだ。冷えすぎると死ぬから気をつけて」
「おっけい。じゃっ!!」
「ばいばーい」
「ふんふんふふーん。ただいまー」
豆人は手に何かを抱えている。
「おかえり、乗っ取れた?」
と俺が聞くと
「いや。てかあそこ蜥蜴窟じゃなくなってたよ。」
「どういうことだ?」
「ヴァーミリオンがあの洞窟をのっとって竜之宮ってものを作ってた」
「「「ヴァーミリオン!?」」」
不定期連載やめらんねえ