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ホラー・ホラー風味

埋もれていたラジオ

作者: まい

夏のホラー2022投稿

 これは私が、夏休みにあった親戚の集まりで聞いた話です。





 とある田舎町には、広い空き地が今も有るそうです。


 空き地は何年()っても草が生えない不思議な土地で、それを怖く思って地元の人は近寄らないよう言われているとか。



 それでその空き地には元々軍隊が使う道具を作る工場が建っていたと聞きました。


 でもその工場は空襲に()って焼け落ちたそうで、空き地が何だったのかを覚えているのは田舎町に住んでいる、おじいちゃん達やおばあちゃん達だけだそうです。




 ある日、その田舎町に他所(よそ)の町の人が来たとか。


 その人も私みたいに親戚の集まりで、偶然町にやって来たそうです。


 その人が田舎町で面白いところが無いかな~って歩き回った後、空き地へたどり着いたと。


 で、その人は何かを感じたらしく、この空き地になにかが埋まっていると、ピンと来たみたいです。



 実際、地中から古ぼけたラジオを見付けたんだとか。





 そのラジオを見付けた人は、その場で色々さわってみたそうです。


 電源は最初から入っていて、ずっとスピーカーからは小さくザーザーザリザリした音しか出なかったって。


 受信する周波数を調節するツマミをどれだけいじっても、音の高さが変わるだけでまともに音を出してくれなかったそうです。


 中々に古くてボロボロな電池を見つけて取り外しても、ザーザーザリザリ音が鳴り続けたみたいです。


 ラジオは電気で動くのに、電源を取り除いても動き続けるラジオを怖く感じても不思議じゃありません。


 それでも何か面白い物だと思い、本格的に壊れているなら修理屋に頼めばいいやと、この田舎町まで乗ってきた自分の車のトランクに押し込んで持ち帰ったとか。



 ………………その田舎町にいる間、住人のおじいちゃん達やおばあちゃん達が、ラジオを持ち帰った人を(にら)む様になったのは、この後の事に関係しているのかも知れません。







 さて、場所は変わって別の…………田舎町です。


 ラジオを見付けた所よりはマシ程度ですが、家やお店がそこそこ建っている田舎町です。


 まあ田んぼや畑が沢山ありますが。



 そこに帰って来たラジオの人は、早速とばかりに顔見知りの修理屋へ例のラジオを見せに行ったらしいです。



 そこでラジオの外装(がいそう)をパカッと開けた修理の人は少しの間動きを止めてから、ラジオを急いで元に戻してこう言ったとか。


「悪い事は言わない。 あった場所へ戻してこい」


 今時壊れたものなんて修理するより買い換えた方が良いと言われかねない時代で、折角仕事をくれてやったのに!

 そんな感じでラジオの人は怒りながらラジオを自宅まで持ち帰ったそうです。




 帰宅すると、なんとラジオから出る音に変化が生まれたとか。


 今まではザーザーザリザリとしか言わなかったのに、なんだかブツブツと人が小声で喋っている様な音が加わったみたいです。


 それに気付いたラジオの人は、修理屋が中途半端な修理しか出来なかったから、恥ずかしくてあんな事を言ったんだな。

 なんて思ったそうです。




 それからしばらく。


 ラジオの人はまた何か変化が起きるのに期待して、家にインテリアとして飾っていたとか。




 実際、本当に変化が起きたと聞いています。


 ブツブツ喋っていた小声の代わりに、数字を喋りはじめたそうです。




 2000……1999……1998……1997……。




 1秒ごとに減る数字。


 間違いなく、何かのカウントダウンでした。



 最初の3分位は何かラジオドラマみたいなのを受信して、何かが始まったとワクワクしていましたが、他の声が全然聞こえず。


 聞こえるのはザーザーザリザリする雑音と、それに(まぎ)れて聞こえてくるカウントダウンの声だけ。


 つまり本当に何かのカウントダウンをしているのかも知れない。


 ラジオの人は顔を青ざめさせながら、そう思い至ったそうです。


 日常でカウントダウンなんて、使うときは10から始まるのが大抵で、2000とかまず聞きません。


 となれば、それだけ長く数える必要のあるモノ……例えば宇宙への打ち上げロケットでしょうか? アレもカウントダウンは長いですから。


 そんな、なにか御大層(ごたいそう)なカウントダウンをする必要のあるナニカを受信している。


 となれば、一般人が触れて良いものなのか?


 そう不安になったのかも知れませんね。





 ラジオの人は慌てて例のラジオを車のトランクへ放り込み、とある場所へ急いで向かったそうです。


 まあ、とある場所と言っても、農家を辞める人が増えてほったらかしになっている休耕地が集まった、言ってしまえば空き地みたいな場所ですが。



 カウントダウンが終わるまでにラジオが元々あった場所まで行けませんので、その代わりになりそうな所として思い浮かんだのがそこだとか。


 そこの真ん中に、ラジオを乱暴に投げて置いて逃げたそうです。








 その日。


 丁度カウントダウンが終わった頃。




 ラジオの人の田舎町全体が、とても大きい爆発音とも言える轟音(ごうおん)に包まれたそうです。


 (さいわ)いその音で耳の鼓膜(こまく)が破れたとか難聴になったとか、後遺症を負った人は出なかったそうです。


 それでその音は町中に響きはしたものの、近隣の町や村からは全く聞こえなくて、これで騒いだのはオカルトを信じる人達の一部(いちぶ)だけで、他は(うそ)とか幻覚だと判断されてまともに取り合ってくれなかったと。



 ラジオの人は轟音に思い当たる原因があったので、あとで例のラジオを置いた休耕地まで見に行ったそうです。

 そのラジオを、放置されて固くなった休耕地の土に、半分埋まっている状態で見付けたんだとか。



 休耕地と言えば放置されているので、雑草がぼうぼうに生えているはずなのに、その雑草が消えていた謎と共に。







 それからしばらく。


 轟音は何度か鳴ったけど、それ以降は聞こえなくなったそうです。


 聞こえる(たび)に休耕地へ見に行っていたラジオの人は、古ぼけたラジオが埋まっていって、完全に埋まった後は轟音を聞いていないそうです。







 あの古ぼけたラジオは、一体何だったのでしょうか?


 何がしたかったのでしょうか?


 知りたかったら、当のラジオを掘り出して(たず)ねてみるしか無いのかも知れません。

 ……ホラーになっているのか?


 なんとなくミステリーにも分類出来そうなんだけど。


 でも怪奇現象だし、多分ホラーに分類されるだろうと信じて。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラジオがカウントダウンする爆弾!? 知らないで持っていたら大惨事ですね。 主人公は野原に手放してよかった! 面白かったです。
[一言] すごく不思議な物語でした。 ホラーとしてはもちろん、おっしゃるとおりミステリーとしても楽しめそうですね。
[良い点] その物体、目撃者がラジオだと思っただけで、本当は全く別の装置だったのかも。
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